和菜VS翔太 初めてのバトル
「えっと、PPが2溜まっているから、このカードを使えるのよね。語り部翁召喚」
「えー、最初からガチカードじゃん」
友美に文句を言われるけど、出せるのがコレしか無いから仕方ないじゃない。
「翁はワンダラークラスのカードだけど、効果の都合上ウィザードとかにも出張することがあるのよね。おっと、効果の解決ね。山札の上から3枚をめくって、魔法カードがあれば手札に加えることができるわよ」
「魔法カードというと、この勤労と怠惰の問答かしら」
「そうそう。で、残りは墓地に置く」
「それで、攻撃すればいいのかしら」
「まだね。翁は場に出たばかりだから、次のターンじゃないと攻撃できないわ」
芽衣さんは懇切丁寧に教えてくれる。なんか、本当にお姉さんができたみたいだ。
「ようし、こっちも負けてられないよ」
「えっと、この魔法カードが使えるよね」
「お、引きが良いね。いっちょ、かましたれ」
「魔法カード龍の宝珠。PPを1増やす」
「レジェンダリーの理想ムーブじゃん。容赦ないな」
芽衣さんが口を挟む。次に3コストをすっ飛ばして4コストのカードを使えるということよね。インチキじゃん。
憤慨しつつもカードを引く。
「ようし、和ちゃん。ワンダラーの真価を見せてあげなさい」
「そう言われましても。このカードを使えばいいのかしら。勤労と怠惰の問答」
語り部翁で引き込んだカードだ。モチーフはアリとキリギリスだろうか。両者が言い合いをしているイラストが描かれている。
「えっと。場を離れるまでどちらかのトークン・サーバントとして扱う。どういうこと?」
「勤労なるアントか怠惰なるキリギリス。どっちか好きなサーバントを召喚できるの」
「じゃあ、アントを召喚」
もう一方は体力を回復する効果を持っているみたいだけど、ダメージを受けていないのに回復させる意味は無い。
「おお、アントを選ぶのはセンスがいいね」
「友ちゃん、余裕こいていいの? アントは場に出た時、相手に100ダメージを与えるのよ」
私の代弁をするかのように、芽衣さんはビシリと決めポーズを取る。苦笑しつつも、アントの効果と翁の直接攻撃で合計200ダメージを与える。幸先のいいスタートかしら。
その後もバトルを進めていき、着実にサーバントを召喚していく。こっちには大量のサーバントが並んでいる。そして、相手の体力も僅か。オリエーテーションとはいえ、あっけなく勝ってしまうと悪い気がするわね。
なんて、油断をかましていた時だった。
「ようし、こうなったら一発逆転だよ。翔ちゃん、いつものやったげて」
「ええ、分からないよ」
「あ、そっか、ごめん。このエマージェンシーカードを使うんだ」
「えっと、フュージョニック・サインかな」
「おお、やばいぞ」
芽衣さんが驚愕に顔を歪める。エマージェンシーはPPを支払わずに使えるお助けカードよね。まさか、たった一枚のカードで状況をひっくり返されるなんて。
そのカードを発動した途端、不安そうにしていた翔太少年の顔が晴れやかになった。どうやら、友美の意図を察したようだ。勢いよくカードを場に叩きつける。
「僕のPPは10! よって、アルティブレイズを召喚し、そのままアルティメシアにミラクル・フュージョンする」
「それ、PPが13必要なカードでしょ。どうして、召喚できるのよ」
「フュージョニック・サインはコストを軽減する効果を持ってるかんね。いわゆるコンボだよ、コンボ」
翔太に代わって友美が得意げだ。彼が召喚したアルティメシアが強力そうなカードというのは解説されないでも分かる。
「アルティメシアで攻撃! そして効果発動! 体力500以下のサーバントをすべて破壊だ!」
おどおどしていた態度が嘘のように攻撃宣言してくる。プレイヤーへの直接攻撃を防ぐデコイ持ちがいて助かったけど、こちらのサーバントは全滅だ。
まさか、本当にたった一枚のカードで逆転されるとは。攻撃力1000なんて、そんなのまともに受けたら敗北必至じゃない。
正直、今の手札に打開策は無い。意気消沈していると、芽衣さんに肩を叩かれる。
「諦めたらそこで試合終了よ。特に、カードゲームは山札からカードが引けなくなるまで何が起きるか分からない。それが面白いところなんだから」
「でも、あんなのを倒せるカードなんて」
「大丈夫。さあ、信じてカードを引きなさいな」
ニカリと親指を立ててくる。半信半疑になりつつ、私はデッキの一番上のカードを手札に加える。
それを一瞥した途端、芽衣さんはウィンクを施す。装丁が豪華で、明らかなレアカードだ。確かに、これならば。
「滅鬼の英雄モモ・タローを召喚」
「ちょ、キムっち。そんな壊れカード出さないでよ」
「壊れ? 別にどこも壊れてないわよ」
「いや、カードゲーム用語だから。このカードの効果を発動する条件、墓地にカードが3枚以上存在するは満たしている。だから、かましてやりなさい」
芽衣さんが勢いよく腕を伸ばす。苦笑しつつ、墓地のカード3枚を裏向きのまま場に出す。
「これらのカードは場が離れるまで、アタック・ドッグ、ガード・モンキー、マッハ・キッジーとして扱う。本当に桃太郎みたいね」
「それだけじゃないわ。モモ・タローはクラス:ワンダラーのトークン・サーバントにキラー能力を付与させる。そして、突撃持ちは場に出た時に攻撃できる」
「そして、キラーは問答無用で相手を倒せるんですよね。と、いうことは」
友美が額に手を添える。「ああ、気づいちゃったか」とでも言いたげね。
「アタック・ドッグでアルティメシアを攻撃」
「えー、せっかくアルティメシアを出したのに」
翔太くんが不満の声をあげる。残念だけど、勝負は勝負。手加減はしないわ。
「くそう、マウンテンドラゴンを召喚」
返しのターンで体力1000のデコイ持ちという厄介なカードを出してきた。相手の残り体力は600。さっき出したモモ・タローたちを総攻撃させれば勝てるのに。
そんなことを思いながら山札を引く。3体のサーバントから任意の1体を出せる魔法。そのうちの1体の効果に着目する。もしかして、これなら突破できるんじゃ。
「私は5PP支払い、狂った茶会を発動。眠りネズミを召喚する」
「うわ、そっちを持ってたか」
友美も効果を把握しているようね。芽衣さんと顔を合わせる。一気にフィニッシュよ。
「眠りネズミは場に出た時にカードを手札に戻せる。対象はマウンテンドラゴン。そして、さっきのターンに出したモモ・タローたちで一斉攻撃」
一気に残り体力を削り切り、勝敗は決した。
カード紹介
滅鬼の英雄モモ・タロー
クラス:ワンダラー ランク1 コスト8
攻撃力300 体力300
このカードが場に出た時、墓地に3枚以上カードがあるなら、3枚を裏向きのまま場に出す。それらはトークンサーバント、アタック・ドッグ、ガード・モンキー、マッハ・キッジーとして扱う。
場にクラス:ワンダラーのトークンサーバントが出るたび、それはキラーを持つ。
関連カード
アタック・ドッグ
クラス:ワンダラー ランク1 コスト2
攻撃力300 体力100
突撃
ガード・モンキー
クラス:ワンダラー ランク1 コスト2
攻撃力100 体力300
デコイ
マッハ・キッジー
クラス:ワンダラー ランク1 コスト2
攻撃力200 体力200
速攻