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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第3章 木村和菜
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和菜VS翔太 初めてのバトル

「えっと、PPが2溜まっているから、このカードを使えるのよね。語り部翁召喚」

「えー、最初からガチカードじゃん」

 友美に文句を言われるけど、出せるのがコレしか無いから仕方ないじゃない。


「翁はワンダラークラスのカードだけど、効果の都合上ウィザードとかにも出張することがあるのよね。おっと、効果の解決ね。山札の上から3枚をめくって、魔法カードがあれば手札に加えることができるわよ」

「魔法カードというと、この勤労と怠惰の問答かしら」

「そうそう。で、残りは墓地に置く」

「それで、攻撃すればいいのかしら」

「まだね。翁は場に出たばかりだから、次のターンじゃないと攻撃できないわ」

 芽衣さんは懇切丁寧に教えてくれる。なんか、本当にお姉さんができたみたいだ。


「ようし、こっちも負けてられないよ」

「えっと、この魔法カードが使えるよね」

「お、引きが良いね。いっちょ、かましたれ」

「魔法カード龍の宝珠。PPを1増やす」

「レジェンダリーの理想ムーブじゃん。容赦ないな」

 芽衣さんが口を挟む。次に3コストをすっ飛ばして4コストのカードを使えるということよね。インチキじゃん。


 憤慨しつつもカードを引く。

「ようし、和ちゃん。ワンダラーの真価を見せてあげなさい」

「そう言われましても。このカードを使えばいいのかしら。勤労と怠惰の問答」

 語り部翁で引き込んだカードだ。モチーフはアリとキリギリスだろうか。両者が言い合いをしているイラストが描かれている。


「えっと。場を離れるまでどちらかのトークン・サーバントとして扱う。どういうこと?」

「勤労なるアントか怠惰なるキリギリス。どっちか好きなサーバントを召喚できるの」

「じゃあ、アントを召喚」

 もう一方は体力を回復する効果を持っているみたいだけど、ダメージを受けていないのに回復させる意味は無い。


「おお、アントを選ぶのはセンスがいいね」

「友ちゃん、余裕こいていいの? アントは場に出た時、相手に100ダメージを与えるのよ」

 私の代弁をするかのように、芽衣さんはビシリと決めポーズを取る。苦笑しつつも、アントの効果と翁の直接攻撃で合計200ダメージを与える。幸先のいいスタートかしら。


 その後もバトルを進めていき、着実にサーバントを召喚していく。こっちには大量のサーバントが並んでいる。そして、相手の体力も僅か。オリエーテーションとはいえ、あっけなく勝ってしまうと悪い気がするわね。


 なんて、油断をかましていた時だった。

「ようし、こうなったら一発逆転だよ。翔ちゃん、いつものやったげて」

「ええ、分からないよ」

「あ、そっか、ごめん。このエマージェンシーカードを使うんだ」

「えっと、フュージョニック・サインかな」

「おお、やばいぞ」

 芽衣さんが驚愕に顔を歪める。エマージェンシーはPPを支払わずに使えるお助けカードよね。まさか、たった一枚のカードで状況をひっくり返されるなんて。


 そのカードを発動した途端、不安そうにしていた翔太少年の顔が晴れやかになった。どうやら、友美の意図を察したようだ。勢いよくカードを場に叩きつける。

「僕のPPは10! よって、アルティブレイズを召喚し、そのままアルティメシアにミラクル・フュージョンする」

「それ、PPが13必要なカードでしょ。どうして、召喚できるのよ」

「フュージョニック・サインはコストを軽減する効果を持ってるかんね。いわゆるコンボだよ、コンボ」

 翔太に代わって友美が得意げだ。彼が召喚したアルティメシアが強力そうなカードというのは解説されないでも分かる。


「アルティメシアで攻撃! そして効果発動! 体力500以下のサーバントをすべて破壊だ!」

 おどおどしていた態度が嘘のように攻撃宣言してくる。プレイヤーへの直接攻撃を防ぐデコイ持ちがいて助かったけど、こちらのサーバントは全滅だ。


 まさか、本当にたった一枚のカードで逆転されるとは。攻撃力1000なんて、そんなのまともに受けたら敗北必至じゃない。

 正直、今の手札に打開策は無い。意気消沈していると、芽衣さんに肩を叩かれる。

「諦めたらそこで試合終了よ。特に、カードゲームは山札からカードが引けなくなるまで何が起きるか分からない。それが面白いところなんだから」

「でも、あんなのを倒せるカードなんて」

「大丈夫。さあ、信じてカードを引きなさいな」

 ニカリと親指を立ててくる。半信半疑になりつつ、私はデッキの一番上のカードを手札に加える。


 それを一瞥した途端、芽衣さんはウィンクを施す。装丁が豪華で、明らかなレアカードだ。確かに、これならば。

「滅鬼の英雄モモ・タローを召喚」

「ちょ、キムっち。そんな壊れカード出さないでよ」

「壊れ? 別にどこも壊れてないわよ」

「いや、カードゲーム用語だから。このカードの効果を発動する条件、墓地にカードが3枚以上存在するは満たしている。だから、かましてやりなさい」

 芽衣さんが勢いよく腕を伸ばす。苦笑しつつ、墓地のカード3枚を裏向きのまま場に出す。


「これらのカードは場が離れるまで、アタック・ドッグ、ガード・モンキー、マッハ・キッジーとして扱う。本当に桃太郎みたいね」

「それだけじゃないわ。モモ・タローはクラス:ワンダラーのトークン・サーバントにキラー能力を付与させる。そして、突撃持ちは場に出た時に攻撃できる」

「そして、キラーは問答無用で相手を倒せるんですよね。と、いうことは」

 友美が額に手を添える。「ああ、気づいちゃったか」とでも言いたげね。


「アタック・ドッグでアルティメシアを攻撃」

「えー、せっかくアルティメシアを出したのに」

 翔太くんが不満の声をあげる。残念だけど、勝負は勝負。手加減はしないわ。


「くそう、マウンテンドラゴンを召喚」

 返しのターンで体力1000のデコイ持ちという厄介なカードを出してきた。相手の残り体力は600。さっき出したモモ・タローたちを総攻撃させれば勝てるのに。


 そんなことを思いながら山札を引く。3体のサーバントから任意の1体を出せる魔法。そのうちの1体の効果に着目する。もしかして、これなら突破できるんじゃ。

「私は5PP支払い、狂った茶会を発動。眠りネズミを召喚する」

「うわ、そっちを持ってたか」

 友美も効果を把握しているようね。芽衣さんと顔を合わせる。一気にフィニッシュよ。


「眠りネズミは場に出た時にカードを手札に戻せる。対象はマウンテンドラゴン。そして、さっきのターンに出したモモ・タローたちで一斉攻撃」

 一気に残り体力を削り切り、勝敗は決した。

カード紹介

滅鬼の英雄モモ・タロー

クラス:ワンダラー ランク1 コスト8

攻撃力300 体力300

このカードが場に出た時、墓地に3枚以上カードがあるなら、3枚を裏向きのまま場に出す。それらはトークンサーバント、アタック・ドッグ、ガード・モンキー、マッハ・キッジーとして扱う。

場にクラス:ワンダラーのトークンサーバントが出るたび、それはキラーを持つ。


関連カード

アタック・ドッグ

クラス:ワンダラー ランク1 コスト2

攻撃力300 体力100

突撃


ガード・モンキー

クラス:ワンダラー ランク1 コスト2

攻撃力100 体力300

デコイ


マッハ・キッジー

クラス:ワンダラー ランク1 コスト2

攻撃力200 体力200

速攻

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