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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第3章 木村和菜
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ティーチングイベント

「和ちゃん、ちょっといい?」

 あまりに呼ばれ慣れない呼ばれ方をされたものだから、誰のことか分からなかった。ああ、私の事ね。キムっちとはよく呼ばれるけど、和菜という名前に由来するあだ名で呼ばれたことはあまり無い。


 芽衣さんが笑顔で手招きしている。近くには小学校中学年くらいの少年がちょこんと座っていた。三平と同じくらいの年頃だろうか。奴と違って、幾分大人しそうである。と、いうか、どこかで見た覚えがあるのだ。ええと、どこだったかしら。


 頭を抱えつつも、芽衣さんからの呼びかけに応答する。

「どうしたんですか、高野さん」

「芽衣って呼んでくれていいってば」

 既知の仲らしい友美はまだしも、初対面の年上の女性をそう簡単に名前呼びはできませんって。


「うちの店はね、初心者向けにカードゲームの講習もやってるんだ。新規顧客開拓というやつね」

「ティーチングイベントだね。コ〇コ〇に載ってたよ。参加するとカードもらえるやつでしょ」

 そんなのもやってるのね。感心していると、ポンと肩を叩かれた。

「それで、この子の相手を和ちゃん、君にお願いしたい」

 何を言っているのかしら。


「あの、私もデュエバは初心者なのですが」

「むしろ、ちょうどいいじゃない。初心者同士なら本気出しても問題ないでしょ。大丈夫、私がセコンドやってあげるから」

 芽衣さんが太鼓判を押す。呆気に取られていると、少年の隣に友美が並び立った。

「じゃあ、君のパートナーはあたしね。えっと、お名前は」

「翔太、です」

「うん、翔ちゃんか。よろしく」

 朗らかに笑いかける友美。そうやってたらしこむのよね、この子は。でも、翔ちゃんか。やっぱり、どこかで聞いた覚えがあるのよね。


 なし崩しにデュエバを初体験することになった。主に三平の遊び相手になっているのは双葉だから、こういうのは彼女の方が適任だと思う。前に友美と小鳥遊さんがプレイしているのを見たし、アニメも付き合わされて視聴したことあるから、なんとなくルールは把握しているつもりだ。


「和ちゃんのデッキは。そうだな、ストラクのワンダラーのデッキなんてどう? ビーストやウォーリア並みに扱いやすいデッキだから、弟君へのプレゼントにも最適だと思う」

 芽衣さんから渡されたのは、フリルの付いたワンピースを着用した少女が描かれたデッキだった。ドリーミー・アリス。多分、このイラストの女の子の名前にもなってるのだろう。


「ワンダラーは童話が元になってるデッキだよね。不思議の国のアリスとか」

 友美に指摘されて気づいたが、確かにあの物語の主人公にそっくりだ。

「そうそう。トークンという、デッキには含まれない特殊なサーバントを駆使して戦うクラスね」

「ト、トーク?」

 聞きなれない用語が飛び出して目を白黒させていると、「まあ、やっていくうちに覚えればいいよ」と、芽衣さんに肩を叩かれた。


「翔ちゃんは使いたいデッキある?」

「えっと、ドラゴンのデッキとか」

「ああ、アルティメシア。やっぱ、男の子はこういうの好きだよね。フュージョニック・ドラグナー。うーん、豪くんが買ってそうだな」

「楯並くんね。彼でなくとも、今回のストラクでは一番人気があるわよ」

 その楯並くんというのが何者か分からなかったが、どうやら知り合いの男子らしい。いや、いつの間に男子と知り合いになってるのよ。しかも、他校というし。


 やきもきしながらも、ティーチングイベントが開始される。頭の中をもやもやさせながらも、デッキをシャッフルする。すると、対戦相手の翔ちゃんが不思議そうに私を覗き込んできた。顔にゴミでも付いていたかしら?

「もしかして、三平のお姉ちゃん?」

「三平のこと知ってるの!?」

「前に家に遊びに行ったことがある」

 それで、ようやく合点がいった。三平が家に招き入れた級友だ。一緒にスプ〇トゥーンをやっていた覚えがある。


 遠回しな知り合いと出会うなんて、世間は狭いのね。なんて、感動している場合では無かった。肝心のバトルは私の先行で開幕する。

カード紹介

皇帝オクタン・ビアヌス

クラス:オーシャン ランク1 コスト4

攻撃力300 体力400

このサーバントが攻撃した時、カードを1枚引く。

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