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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第3章 木村和菜
90/120

唯VS芽衣 ストラクの実力

 ゲーム開始時からの芽衣のプレイイングを振り返ってみるが、どうにも手札を増やすことに徹しているのだ。現に、彼女の手札は9枚。意図しないと、こんな枚数に達することはまずない。


 訝しんでいると、芽衣が種明かしをするように、にやりと口角をあげた。

「そろそろ感づいたみたいね。クラス:オーシャンは手札の枚数を参照にして、強力な効果を得る。ボヤボヤしてると、取り返しのつかないことになるわよ」

「そういうこと。なら、暗殺忍者皐月を召喚。突撃とキラーを持っているから、即座に攻撃が可能。加えて、体力400だから、そのタコに一方的に勝てるわ」

「やっぱ、唯ちゃんもオクタンのことタコって略す? この子、名前長いからね」

 呆れの表情を浮かべながらも、カードを墓地に送る。とはいえ、戦況が優勢からの余裕というのは無意識のうちに伝わってくる。


「私のターンね。マーメイド・セレーナを召喚して2枚ドロー。そして、手札枚数が相手よりも多いのなら体力を200回復する。最後に、魔法カードタコツボ・ハンマー。自分の手札枚数×100以下の体力のサーバントを破壊する」

「うわー、すごい。1000ダメージだ」

 友美が棒読みで歓声をあげる。そこまで手札枚数を伸ばされたら、確定除去も同じじゃない。幸いにして、相手の場のカードは弱い。


「私は大英雄タイタロスを召喚して終了」

「そのカード、お気に入り? まあ、でかいスタッツはロマンあるよね。ならば、私はオシリスの天空竜を召喚するぜ!」

「悲しいことに澤井の画力が追いついてねー!」

「何それ」

「気にしないで。このカードを使う時の友ちゃんとのお約束だから。それじゃ、改めて。幾年を経て海より現れし巨神よ! 今こそ怒りの力を解放せよ! 海洋神トリティオン召喚」

 巨大な矛を携えた、上半身裸の巨人。7コストも支払っているから、さぞかし強力な力を持っているに違いない。


「トリティオンの効果。このカードの攻撃力と体力は手札の枚数×100となる。よって、その数値は1000よ」

「いや、高すぎでしょ」

 私が驚愕したのも無理はない。そんなデタラメな能力値、アルティメシア以外に目にしたことがない。


「それだけじゃないんだな。この時の数値が800以上ならデコイと突撃を持つ。と、いうことで、タイタロスを破壊」

 あっけなく、強力なデコイ持ちが突破される。こんな化け物が出てくるなら、キラー持ちの皐月は温存しておくべきだったわね。


「ならば、魔法カード死刑宣告」

「って、来ると思った。エマージェンシーカード、インビジブル・スーツ。このターン、トリティオンは無敵になる」

「うわ、きっつ」

 友美が声を漏らすのも無理はない。実際に対峙している私がそうなのだから。


 除去呪文が空振りに終わり、デコイも持ってない。起死回生を狙い、魔導書の解読のドローを試みる。

「対抗手段が無いみたいね。じゃあ、キルジェット・シャークを召喚。この子は手札枚数が8枚以上なら速攻を持つ。トリティオンと一緒に攻撃」

 合計ダメージは1500。まともに受けたら残り体力は200だ。


「唯ちゃん!」

 悲鳴を上げなくても、対抗策は用意してあるわよ、友美。

「エマージェンシーカード、ゲリラ・トルネード。トリティオンを手札に戻す」

「それを持っていたか。でも、シャークの攻撃は通るわ。それに、手札に戻してくれたのは、むしろありがたい」

 その余裕が不気味だった。このまま、好き勝手はさせない。


「私のターン、エマージェンシーカード、救援兵エルダ。そして、ヴァルキリアスへランクアップ」

「来たね! ヴァルキリアス」

 友美どころか、芽衣まで喜んでいる。私の十八番コンボが決まったところで、この調子で攻撃よ。


「キルジェット・シャークを攻撃。能力により、キラー能力で破壊されない。そして、余剰の300ダメージをプレイヤーに与える」

 ヴァルキリアスを降臨させたことで、反撃の糸口を掴むことができた。それに、私の体力は1300。そう簡単に逆転されないはず。


「ファイナルターン!」

「おお、勝負に出るか」

 唐突に芽衣が叫び出し、友美が便乗する。よく分からないけど、このターンで決着をつけるつもり? PPも9だし、一撃必殺級の能力を持つサーバントを繰り出して来るとは考えにくい。


「エマージェンシーカード、その場しのぎの知恵を発動。カードを2枚引く」

 手札を補強できるエマージェンシーカード。ずっと前に敦美も使っていた気がする。こんな局面で更にカードを引いてどうするつもりか。


 その答えは寸刻後に判明した。

「大海の覇者よ! 荒波けしかけ、すべてを蹂躙せよ! 召喚、アトランティック・リヴァイアサン!」

 巨大なクジラのサーバント。アトランティックと冠しているからサーモンではないの? レジェンダリークラスにもリヴァイアサンという名の海龍のサーバントが存在するが、こちらはより伝説に則った姿の様だ。


 なんて、容姿について考察している場合ではない。攻撃力と体力は500だが、それはさしたる問題じゃないことは明らかだ。芽衣は口角を上げると、ビシリと私を指し示した。

「アトランティック・リヴァイアサンの効果。自分の手札の枚数×100のダメージを相手プレイヤーに与える。私の手札の枚数は13枚」

「13って。まさか、このバトル中にずっとカードを引いていたのって」

「そうそう。これこそ、オーシャンクラスの恐ろしいところだよね。アトランティックによる突然のリーサル」

 友美はお気楽に言うが、危機に直面している私はそれどころではない。


「エマージェンシーのゲリラ・トルネードは温存しておくべきだったね。この効果の解決前に発動できれば延命できたのに」

 芽衣はアドバイスしてくるが、攻撃力1000のサーバントで攻撃されれば、誰だってあのカードを発動したくなる。いや、反省しても遅いか。場に出た時の効果を封じるカードなぞ持ち合わせていない。そして、私の体力は1300。アトランティックの効果を甘んじて受け入れ、勝敗は決するのだった。

マニアックな小ネタ紹介

オシリスの天空竜を召喚するぜ→悲しいことに澤井の画力が追いついてねー!

ボボボーボ・ボーボボにおいて、遊戯王をパロディした時の一幕。

ちなみに、オシリスもまた自分の手札に応じて攻撃力を増す能力を持っている。

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