表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第3章 木村和菜
87/119

友美に相談しよう

 和菜と遭遇した翌日の事。いつものごとく、私は図書室を訪れる。そして、さも当然のように友美が隣に並ぶ。そうなるのは必然だった。

 なにせ、授業の合間にこっそりと、「相談したいことがある」と友美を呼び出しておいたのだ。無下にされるかと思ったけど、尻尾を振るみたいに食いついてきたのは上々だったわ。


「唯ちゃんから誘ってくるなんて、珍しいね。デュエバで欲しいカードでもあるの?」

 ガッタガッタと椅子を揺らしている。床が傷つくから止めなさい。

「いや、デュエバじゃなくて、別の用件で相談があると言うか」

「言っとくけど、勉強を教えてほしいってのは無駄だかんね」

「それなら、最初から当てにしていないわよ」

「ひっど!」

 むくれるけど、事実だから仕方ないじゃない。むしろ、あなたの方が相談しに来るんじゃないの。


 なんて、友美のおふざけに付き合っていては、いつまでも話が進まない。単刀直入に用件をぶつけよう。

「実は、木村さんの妹から相談を受けてね」

「異議あり!」

 いきなり机を叩く。急にどうしたのよ。


「いやあ、あのゲームの真似やってみたくて。って、それはいいんだよ。いつの間に、キムっちの妹と知り合ってるのさ」

 ああ、それは疑問にして当然よね。隠すことでもないので、私は昨日の帰りの出来事を打ち明ける。


 しばし、黙って聞いていた友美だけど、話し終えると、「ほへー」と感心したような吐息を漏らした。

「唯ちゃん、キムっちとそこまで距離を詰めるなんて、隅に置けないな」

「たまたまよ、たまたま。それで、本題だけど、どうにかして木村さんを助けることはできないかしら」

「うーん、難しいな。要するに、キムっちの手伝いができればいいんでしょ。キムっちのパパと再婚するとか」

「法律的にも道徳的にも無理でしょ」

 そもそも、私たちは結婚できる年齢に達していない。達していたとしても、娘と同年代の女性と再婚したとなったら、父親を社会的に抹殺してしまう。


「単純に、家事の手伝いとかをすればいいとは思うのだけれど」

「前に、キムっちにお手伝いしよっかって言ったんだよ。でも、間に合ってるって突っぱねられたんだ」

 既に、試していたということね。でも、お手伝いでやれることと言えば、それくらいしかない。


「どうにか説得できないかしら」

「それは、前から思ってたんだよね。家のことに余裕を持てれば、デュエバに沼らせることもできるし」

 クフフと悪い笑みを浮かべる。むしろ、そっちが目的では。いや、私も似たようなこと考えていたわね。


「作戦としては、こうなるかしら。まず、無理やりにでも木村さんを外に連れ出す。そして、家事を忘れて、思い切り遊んでもらう。その間に、家事をこなす。自分が居なくてもやるべきことができると分かれば、余裕も生まれるんじゃない」

「唯ちゃん」

「な、なによ」

 いきなり肩を掴まれる。まずいことでも言ったかしら?

「天才かよ!」

 そりゃどうも。


「っていうか、相談するまでもないじゃん。その計画でいけば、キムっちを楽させてあげられるよ」

「いくら良い案を思いついたとしても、他人の意見を聞かないと確証が持てないでしょ。でも、友美が太鼓判を押すなら間違いないわね」

「そうそう。あたし、太鼓叩くゲーム得意だかんね。自信を持っていいよ」

「むしろ、無くなったわ」

 無遠慮に背中を叩いてくる友美。ともあれ、方向性は定まったわね。


「それで、どうやって木村さんを連れ出すか、だけど」

「単純に遊びに誘っても、キムっちはなかなか参加しないからな」

 友美は渋面を作る。家の手伝いという大義名分を掲げられたら無理強いはできない。


「家の手伝いよりも優先したくなる用事があればいいのだけれど。例えば、木村さんが好きそうな遊びに誘うとか」

「キムっちは、基本的に体を動かすことが好きなんだよね。でも、前にラウンドワン行った時も乗ってこなかったし」

 体を動かす権化みたいな施設でも無理だというの。ヴァルキリアス級の切り札を出したものの、あっさり除去された気分だ。


「他に、木村さんが確実に反応しそうなこと。うーん、思い当たらないわね」

 どれだけ考えても机上の空論にしかならないのだ。それもそうだろう。和菜当人の趣味嗜好を把握しているわけではない。そうなると、

「とりあえず、彼女について探ることから始めるか」

「おー、探偵っぽい」

 友美が腕時計をしているわけでもないのに、手首を持ち上げて何かを打ち込む仕草をしている。

「何やってんのよ」

「麻酔銃撃つ真似」

 まあ、予想はついていたけど、見た目は子供の名探偵の真似事ね。


「キムっちのことなら任せてよ。ノリスケ構った船さんだからさ。バッチリ調査してみせるよ」

「乗り掛かった舟ね。ノリスケに構うのは波平の方よ」

 サムズアップをする友美に訂正を入れる。あのおじさんが磯野家の奥方と絡んでいるシーンが思い浮かばない。

 ともあれ、友美が「任せてほしい」と豪語しているのだ。若干の不安は残るが、この手の案件は彼女に分があるのは確か。大人しく一任するとしよう。

カード紹介

デブリ・ロッカー

クラス:フォーチュラー ランク1 コスト2

攻撃力100 体力100

託宣(デッキの上から1枚を墓地に送る。そのカードのコストが偶数なら、次の能力を得る)

このカードの攻撃力と体力を+200する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ