友美VS唯 デモンストレーション
友美の先行でバトルスタート。互いにサーバントを繰り出していく、順当な滑り出しだ。
「あたしのターン! 今日のあたしは絶好調だよ! 密林の王者コンジャを召喚」
「ええ。それ、取れないじゃない」
3ターン目にそれを出されたのは痛いわね。仕方ないので、デコイ持ちのメタル・ガーディアンでお茶を濁す。
「森林を潜り抜け、侵略せよ、新緑の覇者!」
「友美!? あなた、いきなりどうしたのよ」
和菜の反応が新鮮だわ。私も慣れつつあるけど、本来なら、これが正常の反応なのよね。
「ミラクル・フュージョン発動! 密林の帝王アジャコンジャ召喚! そして、エマージェンシーカード、ゲリラ・トルネードでメタル・ガーディアンを手札に戻す」
「強気。ヴァルキリアスメタにもなるカードをここで切って来た」
ヴァルキリアスを召喚させるつもりは無いということね。やんちゃなことしてくれるじゃないの。それを裏付けるように、プレイヤーに直接攻撃した効果でジューオを引っ張ってきている。
好き勝手にはやらせないわよ。
「ビッグハンマー・ボウイを召喚。突撃能力を持っているから、サーバントにすぐに攻撃できる」
「でも、それ、攻撃力が100しか無いわよ」
和菜が横槍を入れる。それを指摘してくるとは、案外理解力が高そうだ。
その点、抜かりはない。わざわざ、自滅するような手を選ぶ私じゃないわ。
「ビッグハンマー・ボウイの効果。攻撃力か体力が500以上のサーバントに攻撃する時、このサーバントの攻撃力は800になる。しかも、バトルでは破壊されない」
「むむむ。知らない間に、そんなカードを入れてるなんて」
露骨に嫉妬されると複雑な気分ね。最近。パックを買って当てたのよ。
アジャコンジャを除去できたものの、それで友美の猛攻が収まるわけはない。
「魔法カードビースト・パレードを発動」
「どうして、そう都合よくカードが引けるのよ」
「指摘。ジューオがある状態でそのカードはきつい」
敦美の言う通りだった。6ターン目ジューオという黄金パターンを受け、結局そのまま押し切られてしまった。
「もう。ヴァルキリアスを出そうと思ったのに」
「安眠。手札でずっと眠っていた」
私の手札を覗き込んでいた敦美が呟いた。本当に悔しいわね。ヴァルキリアスを出すまでもないが現実になるなんて。
すると、すっかり蚊帳の外になっていた和菜がおずおずと口を開いた。
「えっと、よく分からなかったけど、とりあえず、小鳥遊さんもカードが強いということ」
「それだけ分かってもらえれば上出来だよ。唯ちゃんもあたしの大切な仲間だからさ」
「そう。仲間、ね」
ちらりと私に視線を寄越して来る。なんだろう。一瞬、心がざわめいたような。
「って、こんなことしている場合じゃなかった」
「ああ、ごめん、ごめん。キムっちは用事があると言っていたね。悪いね、引き止めちゃって」
「構わないわよ。小鳥遊さんのことは遅かれ早かれ解決しておきたかったし。それじゃ、プリントは渡しておいたからね」
それだけ言うと、和菜はそそくさと部屋を出ていく。途中、明美に「あらー、もう帰るの」と声をかけられていたが、一礼だけして退出していった。
なんだか、慌ただしい子だったわね。さて、いつものデュエバ仲間だけが残ったわけである。
「申請。今度はわたしとバトルしてほしい」
「おお! 本気のあっちゃんと戦うのは初めてだからね。聞いたよ、右京のデッキを使ったって」
「誇示。偶数フォーチュラーは自信作。いくら友美でも負けない」
「ようし、さっそく」
「はい、そこまで」
バトル開始。と、いきたいところだったが、扉の前で手を叩く音がした。
見遣ると、朗らかな笑みを浮かべる明美が立っていた。
「母さん、どうしたのさ。せっかく、いいところだったのに」
「病み上がりなのに、いつまでもお友達と一緒にいるわけにはいかないでしょ。移しちゃ悪いからね」
どこか抜けているようで、肝心なところはしっかりしているようだ。友美は不満たらたらだが、母親の言い分に軍配が揚がる。
折しも、つけっぱなしのテレビでは、忍者の卵たちが活躍するアニメが放送されている。お暇するにはいい時間だろう。
「あーあ、バトルしたかったな」
「デュエバなら、週末に高野商店でできるじゃない。それまでに体調を治しておいた方が得策よ」
「むう、唯ちゃんがそういうなら仕方ないな」
「再会。次に会う時がお前の最後」
デュエバのバトルのことを言っているのだろうけど、病人の前だとシャレにならないわよ、敦美。
そうして、まったり、まったりなーという間の抜けたオープニング曲をバッグに、私たちは友美の家を後にするのだった。
カード紹介
ビッグハンマー・ボウイ
クラス:ウォーリア ランク1 コスト3
攻撃力100 体力300
突撃
攻撃力か体力が500以上のサーバントに攻撃する時、このサーバントの攻撃力は+700され、バトルでは破壊されないを得る。