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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第2章 各務敦美
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意外なデッキ


 大会の開始時刻まで数十分と迫っている。けれども、待てど暮らせど、あの子たちは姿を現さない。友ちゃん辺りなら、一時間以上前に現地入りしてバカ騒ぎしていてもおかしくないのに。まったく、何をやっているのかしら。


 大会の主催者として、特定選手に肩入れするのはご法度だと分かっている。でも、昔からの常連とあって、どうしても意識しちゃうのよね。


 おまけに、友ちゃんの代わりに大騒ぎしている注目選手がいるから尚更よ。

「よーし! また勝ったぜ! 今日も絶好調だ!」

「くっそ。おい、豪、少しは手加減しろよ」

「手を抜いたら練習にならないだろ、勝!」

 大会を前に練習試合を繰り返しているのは楯並豪。地域最強の名を欲しいがままにしている強者だ。


 正直、出場選手の名簿を見る限り、彼に勝てない限り優勝は困難だ。まして、今回はトーナメント戦。番狂わせでも起きないと、十中八九彼は決勝まで上がってくるだろう。


 時計の針は、大会開始時刻の一時を指そうとしている。それでも、あの三人が現れる気配はない。どうにか理由をかこつけて、開始時刻を遅らせようか。ご法度を犯すかどうかの瀬戸際に悩まされる。

 後ろ髪を引かれながらも、奥歯を噛みしめる。

「はい、集合! もうすぐデュエバの公式大会を始めます。参加選手はテーブルに」

「停止! 待ってほしい!」

 ドタバタと階段を駆け上がる音と共に、息せく声が響く。


 ようやく来たか。ホッと安堵し、三つ編みツインテールの少女を見つめる。全力疾走してきたというのは一目瞭然だった。いや、単に走って来ただけではないわよね。今すぐタオルを渡したいぐらいに汗だくになっているし。


 それに、大きな違和感がある。

「あれ、友ちゃんと唯ちゃんは一緒じゃないの」

「無念。二人は急用ができた。なので、この大会は棄権するらしい。このわたしが、二人の分まで戦う」

 まっすぐ伸びた背筋からは、ありありと決意が伝わってくる。友ちゃんが大会を棄権なんて、どうにもただ事では無さそうね。それに、唯ちゃんまで。


 その辺りの事情が気になって仕方ないが、何度も自分に言い聞かせているように、私は主催者なのだ。折しも、時計はちょうど一時を指し示した。

「ちょうど、参加者も揃ったことだし、これより公式戦を開始します」

 私は片腕を掲げて宣言した。


 トーナメントの抽選の結果、あっちゃんと豪は別のグループとなった。そうなると、両者が戦うのは決勝戦。途中で最大の強敵とぶつかるという懸念はなくなったものの、逆に言えば、順当に勝ち残るぐらいの実力を発揮できなければ、優勝は難しい。


 そんな難局を理解しているのか、あっちゃんはいつにも増して気合十分だ。さて、注目の初戦。相手はクラス:ビースト。友ちゃんも使っていた「アジャコンジャ」で圧をかけて、フィニッシャーにつなげるデッキだ。


 果たして、あっちゃんは、いかな戦法を見せるのか。と、開始二ターン目で私は驚愕する羽目になった。

「手番。占術師マサラを召喚。効果発動。山札の上から3枚を任意の順番に入れ替える」

「クラス:フォーチュラー。まさか、そのデッキは」

 つい、反応してしまったのも致し方なかった。密かにそのクラスのデッキを作っていたのは知っていた。でも、あくまで観賞用だったはず。それを実戦投入してくるなんて。


 驚きはここで止まらなかった。まるで、幾多の戦いを切り抜けてきたかのよう。迷いなきプレイイングで、対戦相手達をなぎ倒していく。ちょっと待って。あっちゃんって、ここまで強かったの!?


 順当にトーナメントの駒を進めていくあっちゃん。けれども、もう一人の注目株も負けてはいなかった。

「いくぜ! 極炎氷龍アルティメシア! 相手プレイヤーに直接攻撃だ!」

 豪快に1000ダメージを喰らわせ、相手の残り体力を一気に削り切る。さすがに、前評判通りの強さだ。一切の危なげなく、対戦相手達を駆逐していく。


 そして、いよいよ決勝戦。勝ち残ったのは。

「敦美か! まさか、君がここまで来るなんて、思ってもみなかったぜ!」

「宣告。あまりわたしを舐めない方がいい。右京のカードは何としても手に入れる。そのために、楯並君。あなたを倒す」

「おお! 燃えるぜ! 燃えてきたぜ! よーし、俺も全力で相手する! お互い、いい勝負にしようぜ!」

 握手を求められ、あっちゃんは力強くその手を握る。こうして、運命の一戦の幕が上がるのだった。

カード紹介

占術師マサラ

クラス:フォーチュラー ランク1 コスト2

攻撃力100 体力100

このカードが場に出た時、山札の上から3枚を見る。それらを好きな順に入れ替えて山札の上に戻す。

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