勝てばいいじゃない
思い立ったが吉日とはいうが、まさか学校をサボってカードを買いに行くわけにもいくまい。カードショップを下調べしたところ、駅近くの商店街にあるのを発見した。あそこならば、放課後でも十分に訪れることができる。
授業の真っ最中ではあるが、私の頭の中ではそんな考えが巡っていた
「へーい、パスパス!」
とりあえず、今は授業に集中するべきかしら。体育のバスケットボールの授業中。友美はパスを得ようと無駄に跳ね回っていた。
ボールは友美を含む対戦相手のチームに渡っている。とはいえ、数人からマークされているので、パスを出さざるを得ないだろう。
ボールを持っている女生徒は周囲を目配せすると、
「風見さん!」
友美の名を呼び、ボールを投げた。待ってましたとばかりに、友美はボールに飛びつく。ボール遊びしているパピヨンみたいだ。
「よーし、ここからは私のターンだよ」
そんな宣言をし、ドリブルを始める。放置しておいてもよかったが、その物言いが鼻についた。私はゆっくりとした足取りで接近を始める。
「させねーし!」
私と同じチームの梨々花が先んじて友美のマークに出る。体操服の裾を結んでへそを出しており、ゼッケンをつけていても殊更目立っている。
梨々花は運動部で活躍していると聞く。女子バスケ部ではないにせよ、体力は並みの生徒より上だろう。巧みな足さばきで友美を挑発している。
だが、友美はその動きの隙を突き、一気にゴールへと駆け出した。
「ちょ。早くマークしろし」
梨々花の命令を受け、彼女の友人と思しき生徒たちが追いすがっていく。だが、友美は右へ左へと回避していく。そのボールさばきは見事だが、誘導には嵌ってしまったようで、ゴールからは遠ざかってしまう。
「ううむ、ならば。パス!」
やむなく、友美は近くにいたチームメイトへとパスを放つ。ノーマークだった彼女は、ゴール下の絶妙な位置にいる。パスが通れば、高確率で得点されるだろう。
無論、それを読んでいない私ではなかった。むしろ、これを待っていたともいえる。私は勢いよく駆け出すと、ボールが落下してきたタイミングを計って、トンビの如くかっさらった。
呆気に取られている友美を、ざまあみろと一瞥する。
「よっしゃ、パス、パス」
遠方で梨々花が手を挙げている。友美のチームメイトが私へと集結しようとしている。ここでパス返しするのも悪くない一手だ。だが。
私は、その声を無視して、強引にゴールへと突っ切った。そして、ポストよりもはるか遠方でシュートを放った。
きれいな孤を描き、ボールはゴールネットへと吸い込まれる。傍観していたのなら、「まるで教科書のような」とでも形容していたかしら。ともあれ、自分で言うのもなんだけど、見事なスリーポイントシュートだった。
ホイッスルと共に、私のチームに得点が加算される。すると、梨々花がつかつかと歩み寄って来た。
「ちょっと。パスって言ってんじゃん。勝手にゴール決めてんじゃないわよ」
「得点を入れれば良いのだから、誰がやっても同じでしょ。きちんと決めたから、文句を言われる筋合いはないわ」
「そうだけどさ」
外したのならともかく、やるべきことをやったのに、糾弾される意味が分からなかった。未だ言い足りないとばかりに、梨々花は私を睨みつけている。
「ほら、喧嘩しないで。勝負はまだこれからだよ」
終いには、敵チームの友美に仲裁されてしまう。梨々花は舌打ちをすると、元のポジションに戻っていった。
結局、あのスリーポイントが決定打となったようで、試合は私たちの勝利に終わった。梨々花は私に悪態を突いたことを忘れたかのようにはしゃいでいる。それを横目に、さっさと更衣室に戻ろうとすると、後片付けの途中の友美とすれ違った。
「次は負けないからね!」
ウインクを交えて、そう宣言される。どの勝負についてだったのだろうか。確実だったのは、その瞬間だけ、私の胸の内に熱いものがこみあげてきたことだ。
カード紹介
大英雄タイタロス
クラス:ウォーリア コスト6 ランク1
攻撃力700 体力800
デコイ(相手プレイヤーは攻撃対象を選ぶ際、可能であればこのサーバントを選ばなくてはならない)