これは嘘をついている空気だ
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友美。それに唯。まさか、あなたたちがこんな所にいるなんて。渡りに船と思ったものの、わたしは苦虫を噛み潰したような顔をしてしまった。
「ねー、敦美。その子たち、あんたの友達?」
山田先輩が不機嫌を隠そうともせず問いかける。「そうだ」と胸を張っても構わない状況。でも、そんなことをしたら。
「そうだ」
「違う!」
友美が肯定しそうになるのを全力で否定する。友美が半口を開けているのも無理はないだろう。
「違うってさ」
「そんなことないよ! ねえ、あっちゃん」
「違う」
「ほら、違うって言ってるじゃん。部外者は黙ってなよ」
「もう、言いたい放題言ってくれるな! よく見たら、あんたじゃん! バスケの練習試合であたしに負けた人!」
友美がズバリと地雷を踏みぬいてくる。先輩に青筋が浮かんでいるのがありありと分かる。
「友美、やっぱり、あなたの知り合いなの?」
「うん。正面から確認してはっきりしたよ。なーんか、感じ悪そうだったから印象に残っているんだよね」
堂々と遠回りに宣戦布告してしまう友美。山田先輩は「ほぉ」と腕組みをしている。わたしはただ、右往左往するしかできなかった。
「ねえ、そこで何やってるのさ。あっちゃん、困ってるじゃん」
「別に。バスケ部のトレーニングしてただけじゃん。ねえ、敦美」
「うん」
力なく首肯するしか無かった。そう、これはトレーニングだ。だから、友美が介入すべき事象ではない。
「嘘だね」
しかし、友美ははっきりと断言する。わたしのみならず、先輩たちも瞠目している。
「ちょっと、友美。本人もトレーニングと言ってるじゃない」
唯が取り繕うとする。そう、その調子だ。どうにか、はぐらかしてほしい。
「いいや、嘘だね」
それでも、友美は否定を続ける。そして、奇妙なポーズを披露する。
「あたしレベルになると、嘘をついている空気が見破れるんだ」
ブチャ〇ティじゃあるまいし、そんな能力を発揮しないでほしい。そういうふざけた態度を取るものだから、山田先輩は爆発寸前になっている。
しかし、ここで素直に感情を発露しないのが、この先輩の厄介なところだ。噴火寸前だったのが嘘のような穏やかさで、ゆっくりと歩み寄ってくる。
「なーんか、勘違いしてるみたいだから言っておくけど、別にイジメとか、そんなんじゃないから。それに、あんた、他校の子よね。あまり、うちの学校の問題に首突っ込まない方がいいわよ」
優しい口調だけど、密かにとげの付いた鞭を振るっているのは明白だ。少しでも踏み込もうものなら、容赦なく突き刺さってくる。
でも、友美は危険なエマージェンシーカードが伏せられていようと、強引にジューオで突撃してくるような女だ。テヘヘと表情を崩す。
「ああ、そうか、ごめん、ごめん。ちょっと、探りを入れただけだよ。そうだよねー。デュエバリストに悪い人はいないもんねー」
「デュエバリスト? 何訳わかんないこと言ってるの?」
山田先輩は嘲笑する。途端、友美は口角を上げた。
「ダウト-!」
本当に何を言い出すのだ、この子は。
「友美、いきなりどうしたのよ」
唯もまた困惑している。と、いうよりも、混乱していない人物なぞ、友美一人だけだろう。皆が状況を掴めていない中、ビシリと一点を指し示した。
「そこの先輩が持ってるの、デュエバのカードだよね。なのに、デュエバリストという言葉を知らないなんて、モグリだよ」
そうか。デュエバリストは、デュエバをやっていれば自然と耳にする単語。本気で知らない素振りをしているのなら、違和感がある。
いや、無理なこじつけだ。唯みたいに、始めたばかりで知らないという人もいるじゃないか。当の唯も異議を申し立てたそうにしているし。
しかし、山田先輩はデュエバについては本当に無知。そのことが優位に働いたようだ。
「あー、このカードのこと? 別に気にすんなし。トレーニングの邪魔になるかと思って、没収しただけだし」
「とか言って、無理やり取ったんじゃないの」
あまりに核心を突いた一言に、ついに先輩は爆発した。
マニアックな小ネタ紹介
ブチャ〇ティ
ジョジョの奇〇な冒険の登場人物。頬を舐めて「これは嘘をついている味だ」と言うセリフで有名。




