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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第2章 各務敦美
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太鼓の稽古

今回はちょっと短めで、なおかつ私の趣味が丸出しな回であります。


「ねえ、ちょっと、休憩、しない」

 息絶え絶えになるのも当然だった。本当にこの子は、どんだけ体力あるのよ。

「もう、郊外のショッピングモールに来るだけで、どうしてバテテるのさ」

「ここって、普通は電車で来るような場所じゃないの?」

 友美に連れられて自転車で一時間近くは走っただろうか。ここらでは有数の大型ショッピングモールにやってきた。


 目当ては言うまでもない。デュエバのカードだ。大会前にデッキを強化しておきたい。なら、少しでも新弾のパックを手に入れておこう。そして、大型商店なら在庫があるだろうという短絡的思考である。


「もう、唯ちゃんは体力無いんだから」

 自分で言うのも何だけど、そこそこ体育には自信があるつもりよ。全力で自転車漕いで、なお駆け足ができるあなたが異常なのよ。


 暴走列車を止める術はなく、半ば引きずられるようにおもちゃ売り場へと直行する。おしくらまんじゅうとまではいかないけど、店内は気を抜くとぶつかりそうなほど多くの買い物客でにぎわっている。こんな状況でカードは買えるのかしら。


 結論から言おう。

「なんとか買えたね」

 転売ヤー対策で購入制限が施されていたおかげだろう。二人仲良く新弾のパックを購入することができた。さて、さっそく開封。そう思った矢先、友美がスキップしながら、ある施設を指差した。


「ねえねえ、あれ、やってかない」

 フードコートで落ち着こうと思っていたのに、どうしたのよ。友美が浮足立っている先は、これでもかと機械音が鳴り響き、入り口はファンシーな意匠で彩られていた。


 ショッピングモールでこんな愉快な場所は一つしかない。

「ゲームセンターって、友美、あなた目的を見失ってない?」

「別におかしくないじゃん。唯ちゃんと遊びに来たんだよ」

 それを言われると、本末転倒どころか忠実に目的を果たしていることになる。そもそも、ゲームセンターなんて友美と一緒じゃなきゃ縁がない場所だわ。


 物見遊山の気分でゆっくり進んでいると、

「よーし、まずはこれだ!」

 友美がいきなり駆け出した。そして、その先にあった筐体。


「バカじゃないの」

 思わず罵声が飛び出す。別にゲーム機を貶すつもりは毛頭ない。でも、冷静に考えてほしい。あれだけ体力を使い果たしたのに、何が悲しくて太鼓の稽古をしなくてはならないのか。


「えー、いいじゃん、やろうよ」

「嫌よ、疲れるから」

「あー、ひょっとして、やったことないから、自信ない?」

 そう言われるとカチンと来るわね。音符が枠に重なったら太鼓を叩くだけでしょ。そこまで言うなら、鼻を明かしてやろうじゃない。


 選曲したのは、喜んでギリギリでダンスする流行曲。私でも聞いたことあるから、流行しているのは間違いないわね。それで、結果だけど。

「やったー、勝ったー!」

「いや、勝てるわけないじゃない!」

 なんで隠しステージでフルコンボしてるのよ! こっちは一回もやったことないのに。


「でもさ、初めてでむずかしいをそれだけ叩けるのは才能あると思うよ」

「ゲームオーバーしてるけど」

「もう、拗ねないでよ。次は唯ちゃんが好きな曲選んでいいからさ」

 なんか悔しいから、オッフェンバックの「天国と地獄 序曲」という普通に遊んでいたら絶対に選ばれないであろう曲を選曲してやった。


 一回太鼓を叩いただけで、もうクタクタだわ。ゾンビみたいにふらついていると、

「あー、プリ撮ろう、プリ」

 と、友美は私を引っ張る。いや、本当にどこにそんな体力あるのよ。

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