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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第2章 各務敦美
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再戦の約束

 そんな私たちの様子を確認して、豪は話を続ける。

「敦美と話すとしたら、放課後だな! すげーレアカード持ってるから、よく交換してもらってるぜ!」

 それも、おもちゃのマーチでという話だ。ここがおそらく正念場だろう。できるだけ情報を引き出しておきたいところ。


「と、いうか、名前呼びしてるけど、仲は良いわけ?」

「まあ、トレ専の腐れ縁ってやつだ! トレセンといっても、ウ〇娘じゃないぜ」

「いや、競馬に関係ないのは分かってるわよ」

 ただ、トレ専というのがよく分からなかったら友美に確認したら、「トレード専門の仲間だよ」と耳打ちしてくれた。


 ひょんなきっかけから彼女と知り合い、おもちゃのマーチで度々会っているらしい。敦美の男友達といったところかしら。大人しそうな顔して案外やるじゃない。

 ただ、本当に知りたいのは学校内での様子だ。できれば、もう一押しが欲しい。


「そういえば、バスケ部の女子の先輩と一緒にいるのをよく見るぜ!」

 コーヒーゼリーの残りを口にしようとした矢先に、そんな話題を振られるものだから、あやうく吐き出しそうになった。そうよ、それが一番聞きたいのよ。


「一体、どんな様子なの?」

「うーん、そうだな。話していいものか」

 豪快な話しぶりとは一転して歯切れが悪そうだ。すると、友美が机に体重をかけて前のめりになった。

「そこが一番知りたいんだよ。お願い、話して」

 お茶らけていた態度からの豹変ぶりに、私までも圧倒される。遅れじと私も、

「そう、そこが肝心なのよ」

 と、前のめりになった。


「お前ら、落ち着けって!」

 窘められ、二人そろって姿勢を正す。巡回してきたおじさんに変な目で見られた。

「そうだな。お前らなら話してもいいかもしれないし、むしろ話すべきかもな」

 自分に納得させるような口ぶりだった。そうして意を決したか、彼もまた背筋を伸ばす。


「なんていうか、嫌な感じなんだ」

「嫌な感じ?」

「ああ、いびってる、というか。言いなりになってるというか」

 口ごもっていることからも、愉快な事態でないことは確実だ。友美から練習試合の様子を聞いた時も、そんな感じだったわね。


 その友美に意見を求めようとしたけど、彼女には不釣り合いな難しい顔をして黙り込んでいた。

「やっぱり、そうか」

 そんな独り言まで漏らしている。おそらく、考えていることは同じだろう。


 だとしたら、このまま放っては置けない。でも、私たちにできることはあるのだろうか。想像通りなら、これは完全に敦美当人の問題。おまけに、他校の事情だ。おいそれと首を突っ込んで話をややこしくしては、逆に敦美を更に苦しめるかもしれない。


「明確に君たちが思っているようなことと断定できないのが悩ましいぜ。捉え方では、後輩に注意してるだけにも見えるからな。でも、なんとなく、嫌な感じはするんだぜ!」

 護身に走った物言いだけど、フィーリングに頼るしかないと言うのは分からないでもない。相手側も、それとはっきりしないよう、姑息にやっているということだろう。


「学校での敦美の様子について話せることは、正直、俺からはあまり無いな! と、いうよりも、これ以上は敦美に迷惑がかかる」

「ええ、十分よ」

 本当ならもっと情報が欲しかったのだが、このことがきっかけで敦美が嫌な思いをしては目覚めが悪い。ここらが引き上げ時だろう。


 とりあえず、敦美とバスケ部の間で軒並みならぬ確執がある。それが分かっただけでも収穫だ。空になったゼリーの容器に、私はそっとスプーンを添える。


「時に君たち! 今度の休みに高野商店で開かれる大会には出るのか?」

 いきなり豪から尋ねられた。

「もちろんだよ!」

「ええ、そのつもりよ」

 間髪入れずに友美が応じるものだから、私も数拍遅れて続ける。すると、豪はニカリと破顔した。


「そうか! そっちの唯って子、けっこう強かったからまたやりたいって思ってたんだ! 強いライバルが増えるなんて、今度の大会は楽しみだぜ!」

「お褒めに預かったのは光栄だけど、ライバルは少ない方がいいんじゃないの?」

「何言ってんだ! 強い奴は多ければ多いほどワクワクする! それがデュエバリストってものだろ!」

「ああ、分かる、分かるよ。うわー、戦いたかったな」

 なぜか友美が悔しそうにしている。なんなの、この子たち? 体からシュオン、シュオンと音を立てている戦闘民族かしら。さすがに私でも、鳥山明のあのバトル漫画くらい知ってるわよ。


「よっしゃ! 今度の大会でまた会おうぜ!」

「うん、約束だよ!」

 友美と豪は握手を交わしている。もう、このノリについていけない。


 すると、友美が唐突にウィンクした。えっと、私も握れということかしら。当惑しながらも、豪から差し出された手を握る。伝わってくる体温が、私に自然と熱を帯びさせ、知らぬ間に武者震いするのだった。

カード紹介

炎槍兵マルガリータ

クラス:ウォーリア ランク1 コスト7

攻撃力600 体力600

このカードが場に出た時、バトルゾーンのコスト最大のサーバントをすべて破壊する。

補足

敵味方関係なく、最大コストのサーバントを破壊する。複数体存在する場合、それらすべてを破壊できるため、グレイメシアのような選択不可能力を無視できる。

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