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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第2章 各務敦美
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ドッペルム〇マージ

 勝負が決し、自然と拍手が巻き起こる。負けはしたものの、不思議と後悔はなかった。潔いまでにミラクル・フュージョンを発動するのに特化したデッキ構成。そして、それを達成するために、一寸の迷いが無いプレイイング。


 これが一歩先を行くカードプレイヤー。私が背もたれに体重を預けていると、豪は破顔して手を差し出してきた。

「君、なかなかやるな! 女子でここまで強い奴と戦ったのは初めてだぜ!」

「お褒めに預かり恐縮だわ。と、いうよりも、敦美とは戦ったことないの? あの子もなかなか強いと思うけど」

「この店でカードのトレードで話したことはあるけど、戦ったことは無いな! それに、学校ではあまり話さないし」

 堂々と言い張るけど、男子と女子ならば不思議では無いだろう。男女関係なく話しまくる友美がむしろ異常なのである。


 なんか、敦美についての情報が得られるか前途多難になってきた。と、言うよりも、勝負を挑む前に確認しておくことだったわね。

「約束したからな! バトルしたら、敦美について知ってることを話すんだろ!」

「そうだよ。あっちゃん、学校だとどんな様子なの?」

「えっと。敦美は」

「ちょい、ちょい、ストップ」

 さっそく語りだそうとする業を私は両腕を広げて制した。


「どうしたのさ。せっかく、話が聞けるのに」

 友美がむくれる。気持ちは分かるわよ。

「そうだけど、ここで話すようなことではないでしょ。場所を変えない?」

「おお! ならばいいところがあるぜ!」

 ニカッと豪が微笑んだ。一体、どこに連れていかれるのか。友美は疑いなく付き従っているし。不審者がうろついているという情報が出回ったら、人一倍警戒しないといけないわね。


 そうして、三人でやってきた場所。どうということはない。右織市内にあるスーパーのフードコートだ。

 これで、星のバックスにでも連れてこられたら違和感があったから、妥当と言うべきか。


「さすがは男子だね。躊躇なくラーメン頼んでるんだもん」

「腹が減ったら戦はできないぜ!」

 そう言いつつ、豪はラーメンをすすっている。そう言う友美もちゃっかりアイスクリームを頼んでいる。これ、ただの食事会になってない?


「唯ちゃんはコーヒーゼリーか。本当にコーヒー好きだね」

「お前、コーヒー飲めるのか? 大人だな!」

 フードコートに来たのに何も頼まないわけにはいかないでしょ。スガキヤで食事したのはいつ以来かしら。


 ちゃっかりと注文しているわけだけど、ちゃっかりしているのはそれだけではなかった。

「あー、レアカードが出たと思ったけど、ウォーリアか!」

 ここに来る途中、店内のおもちゃ屋でパックを購入していたのだ。新パックを狙っていたのだが、あいにく売り切れだった。なので、仕方なしに過去に発売されたパックを1パックずつ買うことにした。


「私もレアカードが入ってるわね。レジェンダリーだけど」

「お! じゃあ、交換しようぜ!」

 提案されるがまま、私は豪にカードを手渡す。まさか、こんなところでレアカードが手に入るなんて。これぞ、棚から牡丹餅ね。


「ずるいぞ。あたしも唯ちゃんとトレードしたい」

「あなたとは前にやったじゃない」

「じゃあ、アイスあげるからゼリーちょうだい」

「どうしてそっちに被弾するのよ。いいけど」

 友美の食べかけだと、よもや間接キス。それはお互い様か。彼女、そういうのは気にし無さそうだし。ああ、ああ、一口だけなのに、その一口が大きすぎるわよ。


 さて、おやつタイムは大概にして、そろそろ本題に入ろう。

「それで、学校での敦美の様子だけど」

「おお、敦美についてだったな! 女子バスケ部に入ってる後輩なんだが、とにかく大人しい印象だな! チームメイトともあまり話しているところは見たことないぜ!」

「うーん、普段の唯ちゃんみたいな感じかな。唯ちゃんももっと話せばいいのに。キムっちとか田中とか」

「私のことは別にいいでしょ」

 それに、亜子辺りが勝手に話しかけてくる。話題は数学の質問についてとかだけど。


「っていうか、やっぱりあっちゃん、バスケ部だったんだね。よかった、ドッペルム〇マージじゃなくて」

「ドッペルゲンガーね。その間違いは苦しいわよ」

「ムウ〇―ジがどうかしたのか? ゴーストなら俺はソ〇ブレイズが好きだぜ!」

「話がややこしくなるから、拾わないでちょうだい!」

 声を張り上げてしまったから、おばさんが振り向いてきた。いらぬ恥をかいたじゃない。どうどうと慰めてるけど、あなたが悪いんだからね、友美。


「いやさ、この前バスケ部の練習試合があったんだけど、そこであっちゃんそっくりの子を見かけたんだよね」

「それで、他人の空似なんじゃないかって気になってたのよ」

「そういうことか! なら、安心していいぜ! 多分、君たちが知ってる敦美と同一人物だ!」

 太鼓判を押されたことで胸をなでおろす。現実にドッペルゲンガーが存在している方が数倍問題ではあるけれど。

マニアックな小ネタ紹介

ム〇マージ、ソ〇ブレイズ

共にゴーストタイプのポケモン。なんということはない、ゲンガーがゴーストタイプということから派生したネタである。

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