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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第2章 各務敦美
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唯VS豪 不自然なプレイ

 私と豪はテーブルで対峙する。途端、自然と観客が集まって来た。豪が名の知れたプレイヤーというのは事前情報通りなのだろう。加えて、自分で言うのも何だけど、デュエバでは珍しい女性プレイヤーとバトルするのだ。話題にならない方がおかしい。


 先手を引き当てたのは豪。しかし、その立ち上がりはゆっくりとしたものだった。

「俺のターン! 魔法カード、龍の宝珠を発動! 手札を1枚捨ててPPを1つ上昇させるぜ!」

 あのカードは見たことがあるわ。確か、クラス:レジェンダリーが十八番としている魔法カード。そう、前に芽衣とバトルした時に使われた物。


 レジェンダリーは高コストのサーバントで圧殺する、典型的な長期戦型のデッキ。ならば、短期決戦型の友美の方が有利だったかもしれない。

 あいにくと、私のデッキもヴァルキリアスを主軸としている以上、どうしても勝負を長丁場に持ち込む必要がある。相手がやりたいことをやる前に決めるのがベストね。


 方針が決まったところでカードを引く。

「爆弾技巧師を召喚し、ターン終了」

「おお! 新パックに入ってるカードだね」

 友美が歓声の声をあげる。破壊された時に、体力300以下のサーバントを道連れにすることができる。多分、友美のデッキにとって天敵となり得るカードだ。


「爆弾技巧師か! 面白いカードが入ってるな! でも、俺は俺のプレイを貫くだけだぜ! 俺のターン、稀代の雛鳥ピピッピ召喚!」

 意気込んで出してきたのは、可愛らしいヒヨコのカードだった。コスト4にも関わらず、攻撃力、体力共に100。正直、拍子抜けするぐらいの性能だ。


「ピピッピ。早速出てきたね」

 でも、友美を加えたギャラリーたちはざわめき出している。このヒヨコが、そんなに脅威なのかしら。


 いや、友美が言っていたではないか。コストに対して不自然なスタッツのサーバントは厄介な能力を持っているって。

 とはいえ、場のサーバントに干渉できる「突撃」能力持ちのサーバントは手札に無い。魔法カードも同様。なら、時期尚早な気もするけど。


「私の番ね。エマージェンシーカード、クイック・ボマーを発動。対象はピピッピ」

 体力300以下のサーバントを破壊できるカードだ。爆弾技巧師で攻撃してもよかったけど、相手の場のカードは一体のみ。技巧師が破壊された能力を誘発させるのはもったいない。


 これでピピッピを除去できる。そう思ったけど、

「させないぜ! こっちもエマージェンシーカード、インビシブル・スーツを発動!」

 なんと、相手もまた早期にエマージェンシーカードを使ってきた。しかも、見たことが無いカードだ。


「あれもまた新カード。対象のサーバントをターン終了まで場に留まらせるやつじゃん」

 友美が声を上げる。それって、つまり。

「そう! 俺のピピッピは無敵になったんだぜ!」

 実質上、私のエマージェンシーを空振りさせられたわけだ。しかも、無敵なら技巧師で攻撃しても一方的に倒されるだけだ。


 それにしても、あんな雛鳥に無敵付与なんて強力なカードを使うなんて。あまりに不自然なプレイに一抹の不安がよぎる。とりあえず、盤面を整えた方が良さそうね。

「コスト3、メタル・ガーディアンを召喚。そして、技工師でプレイヤーを攻撃」

 先制攻撃を成功させて、相手体力は1800。でも、優勢となっている実感は無かった。


「よっし、俺のターンだな! さっそく見せてやるぜ! 灼熱を纏いて顕現せよ! 天翔ける双牙! 来い、極炎龍アルティブレイズ!!」

 繰り出したのは炎を纏った東洋の龍だった。二足歩行するやつじゃなくて、蛇に近い姿のやつね。


 前に話題に挙がったミラクル・フュージョンを持つ、クラス:レジェンダリーの新たな切り札。それだけでも驚愕に値するけど、私は別の意味で驚いていた。

「コスト7のサーバントですって!? あなたのPPは5のはずじゃない。堂々とインチキしてるんじゃないわよ」

「言いがかりはいけないぜ! ピピッピの効果! こいつが場に居る限り、コスト6以上のレジェンダリーのサーバントは2コスト少ないコストで召喚できる!」

 ピピッピを無理やりにでも守ったのは、これを狙っていたからなのね。それに、豪の猛攻は始まったばかりだった。


「アルティブレイズは突撃能力を持っている! メタル・ガーディアンに攻撃! そして攻撃時能力を発動! 体力200以下の相手サーバントをすべて破壊する! 爆弾技巧師も破壊だ!」

 攻撃するたびに低い体力のサーバントを一掃する能力。強力ではあるけど、ただでやられてあげるわけにはいかないわ。


「爆弾技巧師が破壊された時の能力を発動! 体力300以下、ピピッピを破壊する」

 生憎にも、これでコスト軽減能力は使えなくなった。でも、窮地は続いている。アルティブレイズは6コスト支払うことでミラクル・フュージョンを発動できる。放置すると、次のターンには更に強力なサーバントと化して襲い来る。


 とはいえ、体力500のサーバントなんて、そう簡単に倒せるものではない。こっちは、ようやくPP4に到達したところだというのに。

 嘆きつつも、私はカードを引く。なんて、都合がいい。急場しのぎだけど、あなたの力を借りるわよ。


「私のターン。仮面の狂戦士を召喚。このカードも突撃を持っている。おまけに、攻撃力は500よ」

「おお、やるな!」

 相手と相討ちという形にはなるが、最悪の状況は脱した。でも、ペースは完全に相手に握られている。これが最強のプレイヤーの実力。私はごくりと生唾を呑み込んだ。


 そこからの私の作戦は明確だった。とにかく、ヴァルキリアスをいち早く召喚し、波状攻撃で一気にとどめを刺す。そのために、全体除去が来るのを覚悟で小型サーバントを並べていった。

 もちろん、ハーモニー・ブレーメンズでヴァルキリアスを呼び込むのにも抜かりはない。


「へえ、ブレーメンズを入れているのか! 面白いデッキだな!」

「そりゃどうも」

 お世辞を言うぐらいの余裕があるのは当然だった。豪はPPを加速する効果を持ったアイララと手札補充魔法で隙を見せたかと思いきや、ギャラクティカ・ドラゴンで盤面を返して来ると、完全にゲームを掌握している。


 そして、8ターン目。相手の場にはギャラクティカ・ドラゴンが1体。こちらは盾持ち傭兵が2体だ。ギャラクティカ・ドラゴンが持つ、こちらのサーバントを破壊するリミット・バーストは残り1回。とはいえ、攻撃力500の化け物にいつまでも好き勝手させるわけにはいかない。直接攻撃で私の体力は1300まで削られているのだ。


「悪いけど、一気に攻めさせてもらうわよ」

「おお、遂に来るんだね」

 友美が期待をこめて拳を握る。私は微笑むと、エマージェンシーカードに手をかけた。


「エマージェンシーカード、救援兵エルダ。そして、それを戦場の女神ヴァルキリアスへランクアップ!」

「そいつが君の切り札か!」

 こちらが強力なカードを出しても、むしろワクワクしているように見受けられる。そのせいで、追い詰めている気がしない。でも、ここから逆転するわ。

カード紹介

稀代の雛鳥ピピッピ

クラス:レジェンダリー ランク1 コスト4

攻撃力100 体力100

このカードが場にある限り、コスト6以上のクラス:レジェンダリーのサーバントを召喚する時、支払うコストは2少なくなる。

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