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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第2章 各務敦美
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ミラクル・フュージョン発動!

 成り行きで始まってしまった、友美と敦美との決戦。そして、流れのまま、私は勝と一緒に観戦する羽目になる。

「いいよな、友美のやつ。ミラクル・フュージョンのカードを手に入れたんだろ。アンデットはフュージョンのカードすら実装されなかったんだぜ」

 愚痴をこぼす勝に、私は親指を立てておいた。

「なんだよ、文句あるのかよ」

「別に。似た者同士として、同情してあげるわ」

「ふん、そうか」

 つまらなそうに、勝は腕組みをする。


 さて、肝心の両者のバトルだ。敦美は先行を得たものの、一向にサーバントを出す気配はない。それどころか、初めて動きを見せたのは3ターン目の魔法カード「魔導書の解読」だった。


 一方で、友美はコボルト、隠密ネズミと順調にサーバントを繰り出していく。先制攻撃も決め、敦美の体力は1900。圧倒的に有利を保ちつつ、返しのターンを迎える。

「フフフ。さっそくだけど、行かせてもらうよ」

「おお、ここで使うのか。本当に強気ね」

 芽衣は友美がやろうとしていることを予想できているのだろう。ほくほく顔で見守っている。まあ、私にもなんとなく察しが付く。


「森林を潜り抜け、侵略せよ、新緑の覇者! 密林の王者コンジャ召喚!」

 友美の新しいカード。凶暴そうな目つきの白蛇だ。堂々たる名乗りのわりに、攻撃力200、体力300と特筆すべきところが無いように思える。


「セオリー通り、コンジャから出してきたわね。コンジャは攻撃力500以下のサーバントから攻撃されない能力を持っている」

「攻撃力500って、ランク2でも出さないと倒せないじゃないですか」

 あるいは、魔法カードでも使うか。敦美は口を真一文字に結んでいる。どうやら、除去する手法を見いだせないようだ。


 友美は容赦なく、先に出した2体のサーバントで計300ダメージを与える。そして、敦美のターン。

「防御。機械仕掛けの守衛召喚。ターンエンド」

 体力は高いが、攻撃できないデコイ持ちだ。随分、消極的なプレイ。加えて、

「クラス、ディーラー」

 私は思わずつぶやく。そのクラスは、私と初めて戦った時に使っていたもの。そして、右京とはクラスが違う。


「ふーん、そのデッキを使うんだ」

 冷淡な声音。友美が発したとは思えなかった。敦美は肩を震わせる。現状の盤面だと、友美の3体のサーバントでちょうど攻撃力500。守衛を突破すること自体はできる。


 でも、友美の苛烈さは私の想像を超えていた。

「密林の王者コンジャのミラクル・フュージョンを発動! コスト3を支払い、山札から密林の王者アンジャを召喚」

 アンジャは攻撃力300の突撃持ちのサーバント。だが、それで終わるわけはなかった。


「そして、2体を融合! 出でよ、密林の帝王アジャコンジャ!」

 黒と白。二色の大蛇が混じり合い、双頭の大蛇が顕現する。その姿は神話上の怪物ヒュドラを連想させた。


 ミラクル・フュージョン後のサーバントはランク2と同じく速攻攻撃できる。おまけに、アジャコンジャの攻撃力は500。単体でも守衛を突破できる。けれども、友美の猛攻は留まることを知らない。

「エマージェンシーカード、ゲリラ・トルネード発動! 機械仕掛けの守衛を手札に戻す」

「こんな序盤に実質確定除去のエマージェンシーだと!?」

 勝が驚くのも無理はない。エマージェンシーカードは3ターン目から解禁されるから、使うこと自体はできる。でも、問答無用でサーバントを場から退散させられる、エマージェンシーの中でも強力無比な一枚をこんなタイミングで使うなんて。いくらなんでも、時期尚早じゃないかしら。


「友ちゃん、大きく勝負に出たわね。まあ、アジャコンジャは、こんなプレイをする価値があるだけの能力を持っているけど」

 芽衣が誇張しているのではないことは、直後に発覚した。場ががら空きになった敦美に、容赦ない波状攻撃が襲う。


「まずはアジャコンジャでプレイヤーに攻撃! そして能力発動。プレイヤーに直接攻撃した時、山札、もしくは墓地からビーストクラスのサーバントをサーチできる」

「そうか。友美はこれを狙っていたのね」

 無理やりにでもプレイヤーを攻撃したのは、アジャコンジャの能力のためだったのだ。任意のカードを手札に加える。ならば当然、加えるべきは。

「あたしは、誉れの王者ジューオを山札から手札に加える」

 確認のために提示しただけでも、敦美に対する死刑宣告と等しかった。それに、まだ攻撃は終わっていない。


「コボルトと隠密ネズミでプレイヤーを攻撃」

 アジャコンジャと合わせると800ダメージ。敦美の体力は一気に800まで削られてしまう。


 もはや、趨勢は決したも同然だった。

「アジャコンジャは、コンジャの時の攻撃力500以下に攻撃されない能力も引き継いでいる。倒すのに苦労するけど、もたついたりしたら」

「発動。魔法カード死刑宣告」

 芽衣の言葉を遮るように、敦美は相手サーバントを確定で破壊できる魔法を使用する。対象はもちろん、アジャコンジャ。友美の場には弱小サーバントが二体と、首の皮一枚繋がった。


 しかし、そんな甘いプレイで勢いを止められるわけはなかった。

「魔法カード、ビースト・パレード」

 お得意の狼の群れ長を絡めた4体展開。おまけに、手札にジューオがあるのは明確。追撃されて残り体力は500。敦美に対抗手段があるとは思えない。


「抵抗。トランプクルセイダー・スペード、ハートを召喚」

 苦し紛れのプレイ。もはや、サレンダーも同然だった。


 結局、ジューオによる直接攻撃を許し、勝負は友美の圧勝で終わった。

カード紹介

密林の王者アンジャ

クラス:ビースト ランク1 コスト3

攻撃力300 体力200

相手プレイヤーにダメージを与えた時、カードを1枚引く。

ミラクル・フュージョン3(このカードが場にある時、PPを3支払い、手札、山札、墓地のいずれかから密林の王者コンジャを出す。密林の王者コンジャが場にある時、これらのカードは密林の帝王アジャコンジャとして扱う)


関連カード

密林の王者コンジャ

クラス:ビースト ランク1 コスト3

攻撃力200 体力300

このカードは攻撃力500以下のサーバントからの攻撃を受けない。


密林の帝王アジャコンジャ

クラス:ビースト ランク2 コスト6

攻撃力500 体力500

このカードが相手プレイヤーにダメージを与えた時、山札または墓地からクラス:ビーストのサーバントを1枚選び、相手プレイヤーに見せてから手札に加える。

このカードは攻撃力500以下のサーバントから攻撃されない。

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