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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第2章 各務敦美
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静香VSエリザベス こまけぇこた、いいんだよ!

 DVDが再生されるや、やたらと熱いOP映像が流れる。「ガンガン」という単語が永遠と頭の中でポリリズムしているわ。


 そして、本編が始まる。友美の解説通り、「運命のカード」とやらを求めて伝説の山へ行こうとしているところに、いかにもな悪女が立ちふさがる。

「観念しなさい。運命のカードは、わたくしたちアークバトラーがいただくわ」

「エリザベス、お前の好きにはさせないぜ」

 主人公であるショウマがデッキを片手に勝負を挑もうとする。しかし、片腕を伸ばして、それを制止する人物がいた。


 青色の長髪をなびかせる、背が高い少女。彼女が登場するや、友美と敦美は「おぉ」と感嘆の声をあげる。

「助力。ここは私に任せてほしい」

「無茶だ、静。アークバトラーに君だけで挑むなんて」

 眼鏡をかけた少年が呼び掛ける。ショウマの仲間で、チームのブレインといったところだろう。


「懇願。あなたたちには救われた恩がある。今度はこちらの番。それに、彼女なら、私でも足止めできる」

「あーら、小娘が。随分と生意気な口を利いてくれるじゃない。いいわ、苛めてあげる」

 エリザベスがデッキを出すのに合わせ、静香もデッキを掲示する。


「ショウマ、ここは彼女に任せよう。僕たちはジャミラを追うんだ」

「くそう。死ぬんじゃないぞ、静香」

「無論。早く行って」

「あの、何で生死の心配してるの?」

 さすがに口を挟まずにはいられなかった。


「バトルに負けると死ぬから」

「いや、おかしいでしょ。どうして、カードバトルで人間の生死が左右されるのよ」

「あー、真面目に考察すると難しいわね。体力0になった瞬間に、脳に強力な電流が流されて、とか。まあ、それはナーヴギアだけど」

「肯定。むしろ、そういう線かもしれない」

「だとしたら、どの瞬間に、そんな装置を仕掛けるのよ」

「こまけぇことはいいんだよ!」

 考察合戦は友美の鶴の一声で終息した。このアニメのコミカライズの掲載誌には、宿題忘れただけで巨大ハンマーで撲殺されるギャグ漫画があるから、真面目に考えるだけ無駄ということね。


 命がけなのを覚悟の上で、女同士の熾烈なバトルが始まる。

「手番。カーバンクルを召喚。能力託宣発動。デッキの一番上を公開」

「コストは4」

「確認。偶数なので、攻撃力を100上昇させ、突撃を得る」

「カーバンクルは今でも使われる、フォーチュラーのサーバントだよね」

「託宣ってのは、どんな能力なの?」

 友美が口を挟んだのに合わせ、私は質問をぶつける。


「託宣はクラスフォーチュラーを象徴する能力よ。山札の一番上のカードを公開して、そのコストによって異なる効果が発動するの。カーバンクルのもう一方の能力は、体力をプラス100してデコイを得る。どちらを発動しても強力だから、昔のカードだけども現役ってわけ」

 芽衣が代わって解説してくれる。つまり、運任せの能力ということね。

「追伸。デッキのコストを絞って、狙った効果を出すデッキもある」

「コストが奇数のサーバントをそのまま踏み倒して召喚できるやつね」

「あれ、楽しそうだから、一度使ってみたいんだよね。ガチ〇ンコガチロボみたいで」

 どんなカードか見当がつかないけど、なかなかに奥深そうね。


「フォーチュラー。運任せのデッキでわたくしに勝とうなんて、百年早いですわ。わたくしのターン、タンカー・センチビートを召喚。このカードは突撃を持っておりますの。センチビートでカーバンクルを破壊」

「相打ち。カーバンクルの体力も200」

「残念でしたわね。体力を増加させる能力が発動できていれば、生き残れていましたのに。そう、残念。あなたもまた、生き残れませんの」

「戯言。あなたに生殺与奪は握らせない」

「強がりはここまででしてよ。センチビートの効果。あなたにポイズンカウンターを1個乗せますの」

「ああ、ヴェノムの得意技が来ちゃったよ」

 友美が頭を抱える。ポイズンカウンター。字面からして平穏じゃないわね。


「手番。わざわざ体力を払う必要はない。花巫女カリンを召喚。カードをドローし、更に託宣効果発動」

「また偶数」

「追加。カードをもう1枚引く。ターン終了」

「ああ、ここ、プレミなんだよな」

「同意。カリンで回復できるから、カウンターを取るべきだった」

「まあ、販促のために、こういうこともあるわよ」

 え? どういうこと? ポイズンカウンターは自分のターン開始時に体力を100支払うことで1個除去できるらしい。でも、静香の言う通り、わざわざ自ら体力を削る必要性は無いじゃない。


 胸にもやもやを抱えながら視聴を続けるが、その答えは直後のターンで明らかになった。

「ありがたいわね。ポイズンカウンターを放置してくれるなんて。今こそ、あたくしのヴェノムデッキの神髄をお見せしますわ。猛毒蟲キルキルムシを召喚!」

「出た! キルキルムシ!」

 二人が画面の前で興奮する。カミキリムシのような気色悪いサーバントが、それほどまでに強力なのだろうか。心なしか、画面の中の静香の表情も歪んでいる。


「キルキルムシの蟲毒能力発動。攻撃力と体力を200上昇させ、キラーを得る」

「蟲毒?」

 私が疑問を挟むと、すかさず芽衣が咳払いをする。

「蟲毒はクラスヴェノムの特徴的な能力ね。相手にポイズンカウンターが乗っている時に、召喚するサーバントを強化できるの」

「補足。その中でもキルキルムシは強力な一体。4コストで攻撃力と体力500は破格」

 おまけに、バトルで確実に相討ちできるキラーの能力も持っている。え? 強すぎないかしら。


「そして、キルキルムシは突撃能力を持っていますの。カリンを攻撃なさい」

 直前のターンに静香が召喚したサーバントがあっけなく倒されてしまう。そこからはエリザベスのペースだった。


 蟲毒能力発動を嫌った静香は、うってかわって積極的にカウンターを取り除こうとする。しかし、執拗にカウンターを乗せられ、知らぬ間に体力は危険水域へと追い詰められていく。


 そして、ポインズンカウンターが3個という絶望的な状況でエリザベスのターンを迎える。

「ここまで追いすがったことは褒めて差し上げます。ですが、あなたの僅かな希望はここでついえる。そのことを、あたくしの切り札で教えて差し上げますわ。

 淀みの渦から永久に這い出よ! 邪智暴虐の魔獣! ダークネス・クロウラー召喚」

 ヘドロにまみれ、大口を広げた怪物。目覚めるのが早すぎた巨神兵みたいなのが出てきた。

カード紹介

カーバンクル

クラス:フォーチュラー ランク1 コスト3

攻撃力200 体力200

託宣(このカードが場に出た時、山札の一番上のカードを公開し、墓地に送る。そのカードのコストが偶数ならA、奇数ならBの効果が発動する)

A:攻撃力を+100し、突撃を得る。

B:体力を+100し、デコイを得る。

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