唯VS友美 すべてのサーバントを破壊する
♢
アヤメにタイタロス。確かに強いサーバントだ。けれども、あたしのデッキだって強化されてるんだからね。あっちゃんからもらったカード、試させてもらうよ。
「力任せの大猿を召喚」
「やはり持っていたのね」
「分かってるんでしょ。あたしがあっちゃんから、このカードを手に入れたこと」
ムキムキの筋肉を披露するチンパンジーのカード。イラストに似つかわしくなく、攻撃力と体力は100だけど、この子の真価はそこじゃないんだな。
「大猿の効果。デコイを持っているサーバントを破壊する。よって、タイタロスを破壊! まだまだ行くよ、大猿をジャガー・パラディンにランクアップ。ジャガーでアヤメと相討ち、そして、強化されたムササビで唯ちゃんに200ダメージだ!」
「おおー」という声があがる。まさか、あの盤面を返せるだなんて、思ってもみなかったんだろうな。あたしを舐めちゃ困るんだよ。
「さすがね、友美。全滅させられるとは思わなかったわ」
「どんなもんよ」
「やっぱり、楽しいわね、あなたとやると」
「そ、そう」
予想外の言葉に、あたしは言い淀んでしまう。楽しい、か。うん、楽しいよ。デュエバのバトルはいつだって楽しい。けど、唯ちゃんとやってる時が一番楽しい。
「さあ、唯ちゃんのターンだよ」
あたしは意気揚々と手を差し出した。
♢
まったく、余裕をかましてくれるんだから。ああ、こんな気持ちになったのはいつぶりかしら。胸の内が沸き立って仕方ない。
とはいえ、楽観してばかりもいられない。次のターンには危惧していたあのカードがプレイ可能になる。幸い、強化されているとはいえ、友美の場にはムササビの伝令兵1体のみ。仕掛けるならこのタイミングね。
「私のターン。魔法カード使命決闘を発動」
「うーわ、ここで使う!?」
友美が頭を抱える。想像通り、手札にあのカードも温存していたようね。
互いに手札を公開する。そして、私が指名したのは、ずっと警戒していたカードだ。
「アマゾネス・クイーンを指定。使命決闘の効果により、サーバントを追加で出す能力は使えないわよ」
「っていうか、これを狙ってたでしょ」
冷たい視線を向けられるが、口笛でごまかす。「へたくそ」って、口笛なんて普段吹かないから仕方ないじゃない。
「じゃあ、あたしはキットを指定」
手札の中で最弱のカードが選ばれるのも想定の内だった。
「最後に盾持ち傭兵を召喚してターン終了」
友美の作戦を潰せたものの、私の場は心もとない。そして、友美がそんな隙を許すはずは無かった。
「悪いけど、ここで行かせてもらうよ。エマージェンシーカード、レスキューフォックス。更に、アーチャー・キャットでキットを破壊。そして、召喚! 仲間の絆を一身に受け、吼えよ、昂れ、獣の王者!」
遂に来たわね。実際に怪物が顕現するわけではないけど、私は身構える。友美はニカッと犬歯を覗かせた。
「レスキューフォックスをランクアップ! 誉れの王者ジューオ!」
友美の場のカードは4体。よって、ジューオは攻撃力700まで上昇する。それだけじゃない。
「他のサーバントの攻撃力も100上昇させる。アマゾネスは500、ムササビは300だよ」
合計攻撃力は1500。ムササビで盾持ちを攻撃してくるだろうけど、それを差し引いても致命傷だ。
でも、私がジューオ対策を怠っているわけはないでしょ。
「エマージェンシーカード、ゲリラ・トルネード。ジューオを手札に戻す」
「それを伏せていたか。ムササビで盾持ちを攻撃。そして、アマゾネスで直接攻撃」
被弾は500ダメージで済んだ。でも、残り体力は700。友美のデッキ相手なら、一瞬で削られてもおかしくない。おまけに、時間稼ぎをしただけなので、ジューオは健在だ。
強化されたサーバントの他に、アーチャー・キャットまでいる。次のターンにジューオで襲撃されたら、今度こそ防ぐ手立てはない。逆転の一手を引き込まなくては。
「残念だな。もうすぐ楽しい時間が終わっちゃうなんて」
そうつぶやいた友美の表情からは寂寞が覗いた。どうして、そんな顔をするの? 私の胸がうずく。彼女にそんな顔はしてほしくない。何より、まだこの時間は終わらせない。
デッキトップから引いたカード。それは、
「魔法カードハルマゲドン! すべてのサーバントを破壊する」
カード紹介
ハルマゲドン
魔法カード コスト7
バトルゾーンのすべてのサーバントを破壊する。