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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第1章 小鳥遊唯
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唯VS勝 逆転のコンボ

「私のターン。ワイルド・カウボーイを召喚」

 出したのはテンガロンハットを被ったカウボーイのカード。二丁拳銃をクルクルと回しているような仕草をしている。

「そいつは」

 さすがに、このカードの効果を知っているのだろう。勝の表情に陰りが生じる。


「カウボーイの効果。ランダムにエマージェンシーカードを破壊する」

 勝が伏せているエマージェンシーカードは2枚。どちらかが、ヴァルキリアスにとって大敵となるカードのはずだ。右か、左か。瞑目した後、すっと指を伸ばす。


「私は右のカードを指定する」

 柑橘類を口に押し込まれたかのような反応をする勝。案外、ポーカーフェイスが苦手なのね。私は口角をあげる。撃ちぬいたカード。それは、危惧していたゲリラ・トルネードだった。


「ヴァルキリアスは能力によって破壊されない。でも、手札に戻す能力を防ぐことはできない。おそらく、それによるカウンターを狙っていたのでしょう。手札のヴァルキリアスを捨てさせたお返しよ」

「それがどうした。俺の場にはギルティー・デーモンがいる。ヴァルキリアスを出される前に決めてやるぜ」

「それはどうかしら?」

 ヴァルキリアスのコストは8。普通にプレイしたのなら、このターンは出すことはできない。でも、私の手札にはもう一つの切り札が残っている。このコンボを使ったら手札はゼロ。一瞬、迷いが生じるが、私は場のカードに手を伸ばす。


「エマージェンシーカード、救援兵エルダ」

「体力を100回復しても、無駄なあがきだぜ」

 現在の体力は1100。確かに無駄なあがきでしょうね。でも、これでもまだ、そんなことが言えるかしら。

「そして、魔法カード使命決闘を発動する」

 絶句する勝。ひときわ大きな歓声が上がった。流石に、私の意図に気づいたのだろう。


 使命決闘は互いに手札を公開し、相手の手札からサーバントを選び、それを召喚させるカード。普通なら、どのサーバントが選ばれるかは相手任せになる。

 でも、私の残りの手札は1枚。よって、勝が選ぶのは。

「てめぇ、そんなコンボを。ヴァルキリアスを指定する」

 場には先ほど召喚したエルダがいる。ランクアップ条件は満たしている。それに、まだ終わりじゃない。

「なら、私はアスタロトを指定するわ」

 場に出た時にすべてのサーバントを破壊する能力を持つカード。悪手だって? いや、違う。使命決闘により指定されたカードは場に出た時に発動する能力を働かせることはできない。


「これは、あまりにも見事なプレイね。ヴァルキリアスを踏み倒したうえに、アスタロトの全体破壊をも封じた。勝にとっては相当苦しい状況よ」

 芽衣が感心したように腕組みする。歯噛みしている勝に追い打ちをかけるように、私は攻撃を宣言する。

「ヴァルキリアスでギルティー・デーモンを攻撃。能力発動、プレイヤーに200ダメージ」

 勝の体力は1300。けれども、こちらにはヴァルキリアスがいる。一気に決めるわよ。


「俺のターン。魔導書の解読でドロー。そして、死刑宣告を発動。カウボーイを破壊だ」

 本来なら、ヴァルキリアスを破壊したかったのでしょう。でも、このカードは能力では破壊されない。死刑宣告を放ったところで無効化されてしまう。

「どうやら、手札が悪いようね」

 意趣返しすると、勝は反吐を吐くような仕草をする。

「だが、てめぇの手札もゼロ。俺の体力を削り切るには至らない。それに、予告しておいてやる。俺はさっきのドローで魔法カード異界追放を引き込んだ」

「異界追放! そんなのまで入ってるの」

 友美が声をあげる。そんなに強いカードなの?


「異界追放は場のカードをゲームから除外する魔法よ。破壊するわけじゃないから、ヴァルキリアスも対象にできる。おまけに、墓地に置かれないから、再生させることもできない」

「そういうことだ。直接攻撃を受けたら俺の体力は500になる。でも、ヴァルキリアスがいないお前のデッキなんざ、そのくらいの体力でも余裕で耐えられるぜ」

 悔しいけど、指摘通りだ。ランク2のカードは、もう山札に残っていない。速攻能力を持つカードも入っていないし。


 ならば、逆転の手は一つ。次のドローであのカードを引くしかない。当然、友美と敦美は分かっているはずだ。二人と相談してデッキを組んだ際に組み込んだものだから。


 私は深呼吸して山札の1枚目をめくる。そして、一瞥するや、ゆっくりと公開した。

 半口を開ける勝に対し、私は笑みを浮かべていた。本当に、こんな奇跡があるのね。感謝するわよ、敦美。そして、友美。

「魔法カード奮起のシンフォニー。攻撃済みのサーバントをもう一度攻撃できるようにする」

 ヴァルキリアスの攻撃力は800。それが実質二回攻撃できるようになる。そのカードを前に唖然とする勝。どうやら、趨勢は決したようね。

対抗手段の無い勝に、ヴァルキリアスの操る二枚刃が炸裂した。

カード紹介

ギルティー・デーモン

クラス:アンデット ランク1 コスト8

攻撃力600 体力600

場のサーバントを1体破壊する。そのサーバントの攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える。


補足

自分の場のサーバントも効果の対象にできるため、自壊して相手に600ダメージを与えるというプレイイングも可能。

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