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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第1章 小鳥遊唯
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唯VS勝 手痛いミス

 なんて、余裕をかましていたけれど、さすがに一筋縄ではいかなかった。

「俺のターン。自爆霊を召喚する」

「コスト0のサーバントですって」

 サーバントに限らず、カードをプレイするためにはコストを支払う必要がある。それが0ということは、タダで出せるということだ。そんなの、インチキの極みじゃない。


 ただ、体力はたったの100。攻撃力に至っては0だ。出したところで役に立つとは思えないのだけれど。

「ターン終了時に勝手に破壊される。こんなのを出すなんて、ヤケになったのかしら」

 煽りを入れるも、勝の横柄な態度は変わらない。それどころか、嘆かわしいと言わんばかりに鼻で笑っている。

「まずいよ、唯ちゃん。そのカードは」

 友美が声を張り上げる。そこで私はハッと気づく。そうだ、失念していた。アンデットデッキにおいて警戒すべきカード。友美が教えてくれたその中に入っていたのは。


「続けて俺は処刑人ハーデュラを召喚。ハーデュラの能力発動。自爆霊を破壊する」

 大きな鎌を担いだ醜悪な男のサーバントを場に出し、入れ替わりに先ほどプレイした幽霊のサーバントを墓地に置く。指摘された通りのカードだ。確か、こいつの効果は。

「俺の場のサーバントが破壊されたことで能力起動。狂戦士とブレーメンズ。どちらかを選んで破壊しな」

 予習通りだ。自分のサーバントを生贄にすることで、相手にサーバントを選んで破壊させる。


 私の場にいるのはどちらも強力なサーバント。正直、どちらも破壊したくない。でも、どちらかを選べと言うなら。

 ゆっくりと、私は一枚のカードを手に取る。

「私は仮面の狂戦士を破壊する」

「悪手。それは」

 敦美が何かを言いかけたが、友美がその口を手で塞いでいた。まずいことでもしたのだろうか。


 不穏な予感は直後に的中することになる。勝が意地汚く大口を開けたのだ。

「まさか、そっちを破壊してくれるなんてありがたいぜ。エマージェンシーカード隼の剣を発動。ハーディスの攻撃力と体力を100ずつ上昇させる。更に、こいつは突撃を得る」

「突撃は場に出した時でもサーバントに攻撃できる能力。まさか」

 隼の剣の効果により、ハーディスの攻撃力と体力は共に500だ。それでブレーメンズを攻撃されたら。


 ようやく、私もミスを悟った。でも、後の祭りだった。ハーディスの攻撃を受け、ブレーメンズは一方的に破壊されてしまう。

「唯ちゃんの気持ちも分からなくはなかったけど、今のは痛いミスね。もし、ブレーメンズをハーディスの効果で破壊していたら、攻撃力500の狂戦士が残っていた。それなら、隼の剣で強化されても相討ちにできたわ。

 それに、狂戦士のクラスはウォーリア。ランク2を召喚するタネにもできたわね」

 芽衣が解説してくれる。勝つためなら切り捨てるべきはブレーメンズ。振り返ってみても、それ以外の選択は無いはずだった。


 でも、あの瞬間。私はどうしてもブレーメンズを選ぶことができなかった。あのカードを前に、二人の顔がよぎったからだ。まったく、私もとんだ甘ちゃんになったものね。


 勝の場にサーバントが残されたままターンが回る。ハーディスを破壊できるカードは2枚。そのうち、アヤメを出すためには別のサーバントを出さなくてはならない。でも、私の手札にあるサーバントの最低コストは3。アヤメを出すには1コスト足りない。

 それに、アヤメを出したところでハーディスとは相討ちにしかならない。彼女をプレイするのはこのタイミングではないはずだ。ここは、

「私は魔法カード死刑宣告を発動。ハーディスを破壊してターンを終了する」

「手札が悪いみたいだな。なら、俺のターン。自爆霊を召喚。そして、魔法カード邪なる祝祭」

 先ほどの幽霊のサーバントを再召喚する。おそらく、2枚目を手札に抱えていたのだろう。


「このカードの効果により自爆例を破壊。そして、カードを2枚引く。続いてスカル・ナースを召喚」

 繰り出してきたのは看護服を着た骸骨のサーバントだ。悪趣味極まりないわね。

「スカル・ナースの効果。山札からカードを2枚墓地に送り、俺の体力を200回復する」

 勝の体力はこれで1500だ。微々たる差とはいえ、長期戦を得意とする相手に回復を許したのは痛い。


「最後にキラーインプを召喚してターンを終了するぜ」

「出たわね、ばいき〇まん」

「は? ばいきんま〇?」

「いや、こっちの話よ」

 友美め、恥をかいたじゃない。「私のせいじゃないよ」と不平をぶつけているのは、ハムスターみたいに膨らんでいるほっぺたで丸わかりだ。


 とはいえ、戦闘すると必ずサーバントを破壊される「キラー」の能力持ちは厄介だ。幸いにして、相手の場のサーバントは軒並み能力が低い。ここは、形勢を立て直そう。

「私のターンね。魔導書の解読でカードを2枚引く。そして、魔法カードショック。ばいきん、キラーインプを破壊してターン終了よ」

 キラーインプの体力は100。体力300以下のサーバントを破壊できる「ショック」で除去できる。


 そして、次のターンには切り札であるヴァルキリアスが召喚可能だ。このまま一気に攻める。そんな算段をつけていたのだけれど、

「スカル・ナースを残すとは。つくづくありがたいぜ」

 勝が不穏なセリフを放つ。最低ランクの能力しか持たないサーバントが残ったところで、何ができる。


 いや、そうか。あいつの狙いを察し、私は地団太を踏みそうになる。勝はずっと温存していたであろう、手札の左端のカードを取り出す。

「獄門より出でし血塗られた将軍、今こそ戦場を駆けよ! スカル・ナースをランクアップ、邪獄将軍ヘクタリオン!」

 遂に出てきたわね。敦美から無理やりトレードしたカード。

カード紹介

自爆霊

クラス:アンデット ランク1 コスト0

攻撃力0 体力100

このサーバントはターン終了時に破壊される。

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