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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第1章 小鳥遊唯
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運命の抽選

 そして、迎えた運命の日。限定のプロモカードがもらえる公式大会というだけあり、高野商店はすし詰め状態となっていた。

 競技人口からして当たり前かもしれないが、参加者はほとんどが男子。女子はそれこそ、私と友美。そして、敦美くらいのものだった。


「あっちゃんも大会出るんだ」

「無論。参加賞のプロモカードを逃すわけにはいかない」

 ふんすと息巻いている。それまで網羅しようなんて感服するばかりだ。


「機会。もしかしたら、わたしが勝と戦うかもしれない。その時は、勝つ」

 どうやら、鼻息荒くしているのはカードのためばかりではないようだ。私も、彼女の視線の先に顔を向ける。


 芽衣の予測通り、勝もまた取り巻きの少年たちと共に参加するようだった。参加賞のカードを弄び、バカみたいに笑い飛ばしている。彼とは実質初対面である。なるほど、話に聞く通りの悪ガキといったところね。うちのクラスにも似たようなのがいるわ。煩わしくて、関わろうとすら思わなかったけど。


「はい、デュエバの大会に出る子は集合!」

 芽衣が召集の合図をかける。カウンターにはホワイトボードが設置されており、自然とその近辺に集結することとなる。


「事前に知ってるとは思うけど、今回の大会はトーナメント戦で行います。AとBの2つのグループに分かれ、それぞれ勝ち残った者同士で決勝戦ってわけね」

 第一関門として、勝と同じグループに入る必要がある。そうでなければ、決勝まで戦う機会はない。


 私は、受付時にもらった参加カードに視線を落とす。「対戦相手を決めるのに必要だから、当日忘れないように」と、芽衣に言いつけられたものだ。そこには「7」の数字が記載されている。

「みんな、参加カードは持ってきているわよね。今から、トーナメント表にランダムに数字を書き込んでいきます。その数字の者同士が最初の対戦相手です」

 単純に、6か8のカードを持っている人と当たるわけではないのね。友美が1で敦美は13のカードを持っている。と、いうことは、初戦でどちらかと戦う可能性もあるわけだ。


 できれば、同士討ちは避けたい。こんなところで運を使うのは癪だけど、私は自然と手を合わせる。

 芽衣は1から順に、ランダムに表に数字を書き込んでいく。友美はAグループに入ったようだ。


「お、俺はBグループか」

 どこからともなく、そんな声がする。件の少年、勝のものだった。と、いうことは、友美が彼と再戦する機会は決勝まで失われたということになる。

「残念。リベンジのためには勝つしかない」

「問題ないよ。勝てばよかろう、なのだ」

 敦美も奴の声を聞きつけたのか悔しがる。彼女もまたAグループのようだ。そして、どこまでもポジティブな友美である。


 そして、私の番号である7が書き込まれる。そのグループは、

「B」

「頼んだよ、唯ちゃん」

 友美がサムズアップする。私はつばを飲み込んだ。


 しかし、前途多難であることはすぐさま示された。完成したトーナメント表でシミュレートしてみたのだが、勝と戦うためには準決勝まで残る必要があるのだ。彼に勝るとも劣らない実力者に連勝しないと土俵に上がることができない。なかなかどうして、艱難辛苦を味合わせようとしてくれるじゃない。


 そして、最初の試練はすぐに訪れた。私の初戦の相手は、

「なんだ、女子が相手かよ」

 勝の取り巻きの少年の一人だった。露骨に舌打ちをしてくるヒョロ長の少年に、私は睨みを利かせる。


 相手は舐めてかかっているというのは、ふてぶてしい態度から明らかだった。所作が手慣れていることから、大会にも幾度となく出場経験があるのだろう。

 一方の私は、初戦と言うこともあり、おっかなびっくりだった。それが、相手の態度を助長していたのかもしれない。


 とはいえ、ここで躓いてはいけない。こいつに負けるようでは、本願を討つことなど夢のまた夢なのだ。

「準備が整ったようね。では、バトル開始!」

 他の席では、とっくの昔に対戦準備が完了していたようだ。私はデッキを所定位置にセットする。そして、

「よろしくお願いします!」

 挨拶とともに、開戦の狼煙が揚がるのだった。


 相手が使うデッキはウィザード。初めて戦うデッキタイプだったが、どうやら魔法カードを多用するコントロールデッキのようである。あまりサーバントを展開して来ず、ひたすらこちらの行動を妨害してくる。

 ただ、その系統のデッキとは散々特訓してきたのだ。戦い方は熟知している。


 7ターン目。相手の場にはサーバントが1体残っている。一気に攻めてもいいが、相手のライフは1000。勝負を決めきれず、逆に強力なサーバントを出されたら厄介ね。なら、

「魔法カード死刑宣告発動」

「はあ? そんなの持ってたのかよ」

 予想通り、ランク2サーバントの召喚を狙っていたようだ。これで相手の計算を狂わせたのが大きかった。


 その後、エマージェンシーカードのエルダからランクアップするコンボでヴァルキリアスの召喚に成功。壁となるサーバントを貫通し、能力によるダメージで勝利をもぎ取るのだった。

「嘘だろ、女子に負けるなんて」

「女子だからって、あまり舐めない方がいいわよ」

 頭を抱えるヒョロ長の取り巻きに、私は冷笑を浴びせる。

カード紹介

盾持ち傭兵

クラス:ウォーリア ランク1 コスト2

攻撃力200 体力200

デコイ

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