表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第1章 小鳥遊唯
3/109

唯VS友美 あたしの切り札

「フフフ、大ピンチだね? サレンダーする?」

「ふざけないで。まだ勝負はついてないわよ。4コストで魔法カード死刑宣告を発動。ジャガー・パラディンを破壊」

「おお、魔法カードをいきなり使いこなすとは」

 サーバントカード以外にも、バトルの局面を有利に運ぶための魔法カードというものがあるみたいだ。ウノのドローとかスキップみたいなものね。


「でも、盤面を空のまま返してくれたのはありがたいよ。こっちも魔法カードビースト・パレードを発動。コスト1、2、3のビーストクラスのサーバントを山札から場に出す。これにより、群れ長、隠密ネズミ、コボルトを召喚。群れ長の効果発動。隠密ネズミをもう1枚場に出す」

 魔法カードの効果で一気に4体のサーバントを出されてしまった。それらの攻撃力の合計は700。次のターンに一斉攻撃されたら、一気に逆転されてしまう。


「伝令兵でプレイヤーを攻撃。残りライフは1800か」

 余裕がありそうなのに、考え込む仕草をしている。友美のライフは未だ1400。私の手札にあるのは攻撃力の低いカードばかり。決定打となるようなカードが無ければ、このまま物量差で押される。


 私は祈るような気持ちで山札の一番上のカードを掴む。後になって考えると、どうしてこうも必死になっていたのか分からない。たかが、暇つぶしのゲームではないか。けれども、初詣の時以上の熱心さで願いながら、私はカードをめくったのだ。

「コスト6。大英雄タイタロス召喚」

「な、なんだってー!?」

 友美が大仰にのけぞる。まあ、無理もなかろう。山のような巨躯を誇る、甲冑姿の大男。敵に強制攻撃を強いる「デコイ」の能力持ちでありながら、その体力は800。ライフの半分近い打点を一気に出さないと突破することはできない。


 同じクラスのサーバント同士であれば、連携して、攻撃力を合算して攻撃することができる。それでも、すべてのカードが束になって、ようやく突破できるほどだ。加えて、攻撃力も700もある。もし、タイタロスに連携攻撃を仕掛けてきたなら、このカードを代償に相手の場を壊滅させることができる。

仮に、攻撃をためらうようなら、こっちから仕掛けて一気に勝負を決める。やはり、くだらないゲームだったわね。さっさと終わらせて、勉強を再開するとしよう。


 そんな算段をしていると、友美は不敵な笑みを浮かべていた。どういうこと? 状況は私の方が有利のはず。

「どうやら、あたしの切り札を出す時が来たようだね」

 もったいぶるように、ゆっくりと手札から一枚のカードを抜きだす。遂には、口で「ククク」という笑い声を発する始末だ。


「仲間の絆を一身に受け、吼えよ、昂れ、獣の王者!」

「いきなり何を言い出すの」

「ちょっと、邪魔しないでよ! カードゲームではお決まりじゃん。切り札を出すときの口上だよ。んじゃ、気を取り直して。仲間の絆を一身に受け」

「やり直さなくていいから、さっさと出しなさい」

「もう、しょうがないな。召喚! 誉れの王者ジューオ!」

 それは、先ほど私に見せつけてきたライオン男のカードだった。ランク2ということは、速攻攻撃可能なサーバントか。


 伝令兵からランクアップしたそいつは、攻撃力300、体力600と一見大したことはない。と、いうよりも、タイタロスを突破するには至らない。単なる見掛け倒しか。

「ジューオの第一の能力発動! このターン中、自分の他のサーバントすべての攻撃力を100ポイントアップする」

「なんですって!?」

 4体のサーバントにバフがかかり、合計攻撃力は1100。束でかかられたら、タイタロスを破壊されてしまう。だが、友美の策はここからが本番だった。


「続いて第二の能力発動。ジューオが攻撃する時、その攻撃力は場にあるサーバントの数だけ上昇する。あたしの場に居るサーバントは5体。よって、500ポイントアップして、攻撃力は800になる」

 ジューオ単体でもタイタロスと相討ちできるようになる。バフのかかったサーバントたちで集中攻撃されたら、残りライフは700だ。劣勢には変わらないけど、首の皮一枚繋がる。


 しかし、友美はゲーム開始時に3枚伏せたカードのうち、1枚に手をかけた。

「エマージェンシーカード発動。ゲリラ・トルネード。場のカード1枚を手札に戻す。対象はタイタロス」

「ちょっと、インチキじゃない!」

「ちゃんとしたルールだよ。エマージェンシーカードはいつでも使うことのできるお助けカードさ。3ターン目以降に、1ターン中に1枚しか使えないって制限はあるけど。これで、壁役のサーバントはおさらばだよ」

 守りの要だったタイタロスが手札に戻されたことで、私の場はがら空きになる。こうなると、話は変わってくる。相手の一斉攻撃を一身に受けたとしたら。


「誉れの王者ジューオ。そして、その同志たちよ。プレイヤーに直接攻撃!」

 ジューオの攻撃力800。その他大勢の攻撃力1100。合計1900ダメージを一気に受け、私のライフは0に尽きた。

カード紹介

誉れの王者ジューオ

クラス:ビースト コスト6 ランク2

攻撃力300 体力600

このカードが場に出た時、ターン終了時まで自分の他ビーストクラスのサーバントの攻撃力を+100する。

このカードが攻撃する時、場のサーバントの数×100だけ攻撃力を+する。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
どうも! Xからやって来ました。 カードバトルの描写が緻密で臨場感がありますね。 唯も頑張ったが、相手は熟練者。 でもこれで挫けないで欲しい。 リベンジ戦に期待します。 面白かったので、ブクマさせて頂…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ