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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第1章 小鳥遊唯
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唯VS芽衣 この子みたいな盟友を得られるかな?

「母なる不死鳥―マザー・フェニックス-を召喚」

「体力700のデコイ。ジャスミンでは倒せないカードを出してきたわね」

「それだけじゃないわ。マザー・フェニックスが場にいる限り、対象を選択する能力を使用する際に、このカードを選ばないといけなくなる。死刑宣告でギャラクティカを倒そうという心つもりでしょうけど、強制的に標的を変更させられるってわけ」

 魔法での対処さえも封じてくるなんて。私は爪を噛む。ふざけてはいるけど、この人、強い。


「まだ私のターンは終了してないわよ。普通に攻撃してもジャスミンは倒せるけど、ここは強気に行こうかな。ギャラクティカ・ドラゴンのリミットバースト発動。ジャスミンを破壊する。フフフ、あわよくば、ランク2の召喚でも狙っていたんじゃない」

「読心術でも習得してるんですか?」

「ペ〇サス・J・ク〇フォードじゃあるまいし、そんな大層なもんは持ってないわよ。ただ、長年カードゲームをしてると、相手がやりたいプレイは大体想像がつくってわけ。ギャラクティカでプレイヤーを攻撃してターン終了っと」

 私の体力はまだ1500だが、芽衣の場には強力なサーバントが2体もいる。突破口はリミットバーストを使えるのが残り1回ということか。


 でも、悠長なことは言っていられない。次にフェニックスと同時攻撃されたら800ダメージ。あの牙城を崩さないと、逆転を許してしまう。


「どう、強いでしょ、フェニックス。大型ファッティの中には強力な効果を持つけど、除去耐性が脆いという子がわんさか居てね。そういう子と大抵組み合わせられるのよ。まるで、あの子に似てない」

「あの子?」

「察しが悪いね。ほら、あの子だよ、あの子」

 いや、思い至らない。そう一蹴するところであった。寸前で脳裏をよぎったのは、クラスメイトのあの少女。屈託のない笑顔でデュエバを勧めてきた、騒々しい台風娘だ。


「唯ちゃんも、このギャラクティカみたいに盟友を得られるかな? まあ、そのためには私に勝たなくちゃだけど。ジャスミンで補充しても、残り手札3枚。それでどうにかできるかしら?」

 私の思考を代弁してくる。悔しいが、指摘通りだ。しかも、その内の1枚の死刑宣告は完全に持て余している。


 打開できるとしたら、このカードだ。どうにか、召喚に必要なPPは溜まった。だが、召喚に必要なサーバントが不在。いや、もしかすると、あのコンボはここが使い時なのでは。私は場に伏せてあるカードを一瞥した後、カードをドローする。


「エマージェンシーカード発動」

「いきなり、それを使うか。忘れてないと思うけど、除去効果はフェニックスに集中するわよ」

「分かってるわよ。私は救援兵エルダを召喚」

「んな、そっち!?」

 芽衣が露骨に驚愕する。救護鞄らしき、大きな荷物を抱えた小柄な少女だ。攻撃力、体力共に100。芽衣のサーバントの前では焼け石に水だ。しかし、このサーバントのクラスはウォーリア。おそらく、芽衣も私の意図を察しているはず。


「救護兵エルダを戦場の女神ヴァルキリアスにランクアップ!」

「ああ、それを出されたか」

 二度、芽衣は驚愕する。しかも、後悔も混じっているようだった。額に手を当ててのけぞっている。


「ヴァルキリアスの攻撃力は800。体力700のフェニックスは突破できるわ。攻撃を仕掛け、同時に能力を発動。攻撃力と体力の差分、100ダメージをプレイヤーに与える」

 マザー・フェニックスは撃破され、芽衣の体力も残り600となった。ギャラクティカ・ドラゴンはデコイを持っていないから、次のターンで決着をつけることもできる。


 絶望的な窮地だというのに、芽衣の表情に陰りはなかった。むしろ、愉悦さえ浮かべている。

「いやあ、ミスったわね。ランク2が出てきたタイミングで葬り去ろうと思ったけど。その子が来るなら、エルダの時点でリミットバースト使っておくべきだった」

「別に使えばいいじゃないですか」

「あれ? もしかして、ヴァルキリアスの持つ能力を分からずに使ってた?」

 状況的には不利なのに、こちらを挑発できるなんて、思ったよりも豪傑な人だ。加えて、図星なのが悔しい。


「ヴァルキリアスは能力によって破壊されない能力も持ってるの。要するに、ギャラクティカのリミットバーストでは倒せないってわけ。うーん、困ったな。とりあえず、私は魔法カードリミット・チャージを発動。リミットバーストを持つサーバントのカードの下に1枚カードを追加する」

「その能力を使える回数を増やしたわけですね」

「そういうこと。更に、体力400のアイアンタートル、体力300の屈強なるリザードマンを召喚。どちらもデコイを持ってるわ」

 複数体の盾役を並べてくる。その手付きに迷いはない。そして、ギャラクティカ・ドラゴンで直接攻撃してきて、私の体力は1000まで減らされる。


 現状、どうにか芽衣の体力を削り切れそうではある。だが、2体のデコイ持ちが邪魔している。このままでは、逆に芽衣の大型サーバントに押し切られる。一見だと、そんな局面だろう。


 でも、私のこの手札なら。自然と口角が上がっていたらしく、芽衣の眉根が寄る。

「今まで手札で持て余していたけど、ちょうどこのカードを使う機会が来たわね。私のターン、魔法カード死刑宣告発動」

「うっわー。本当に手札で腐らせていたか」

 芽衣は頭を抱える。選択対象は当然、

「ギャラクティカ・ドラゴンを指定。墓地に送る」

 これで、芽衣の切り札は撃破できた。それに、私のPPはまだ余っている。ここで決めるわ。


「仮面の狂戦士を召喚。このカードは突撃能力を持っている」

「場に出たターンでも、サーバントに対してのみ速攻攻撃できるってやつね。って、まさか」

 悠長に解説していた芽衣だが、私の意図を察したのだろう。そう、これで終わりだ。


「仮面の狂戦士でリザードマンを攻撃。この時、ヴァルキリアスの能力発動。このカードが場にいる時、自身の能力を味方サーバントにも付与する。狂戦士の攻撃力は500。その差の200ダメージをプレイヤーに与える」

 口惜しそうに芽衣はリザードマンのカードを墓地に置く。彼女ほどのプレイヤーなら、末路を悟ったのだろう。墓地ゾーンから手を離した時、その顔は綻んでいた。


「これで終わりよ。ヴァルキリアスでアイアンタートルを攻撃。攻撃力と体力の差は400。よって、プレイヤーに400ダメージ」

 私のターン開始時に芽衣の体力は600だった。よって、ライフは尽き、私の勝利が確定する。

カード紹介

母なる不死鳥ーマザー・フェニックスー

クラス:レジェンダリー ランク1 コスト7

攻撃力300 体力700

デコイ

相手プレイヤーは能力によって対象を選択する際、可能であればこのサーバントを選択しなければならない。

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