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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第4章 仙道亜子
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勉強は大丈夫かい?

 その後、幾度か和菜とバトルしたのだが、先ほどまでの快勝が嘘のように、見事なまでの連戦連敗だった。

「デッキのカードが二、三枚変わるだけでも、こんなに違う結果になるの。せめて、敦美には勝てると思ったのに」

「不服。侮られては困る」

 むくれる敦美はさておき、和菜の呆然ぶりには同調する。サイ〇リヤの間違い探しレベルの誤差のはずなのに、ここまで結果に差が出るなんて。


「それまで環境外だったデッキが、たった一枚のパワーカードを得たことによって環境トップに躍り出るなんて、よくあることよ」

「竜人を得た武装ドラとか」

「補足。あれは、レーヴァテインのやけくそ強化の影響もある」

 後から聞いた話、アニメの主人公のデッキを無理やり環境入りさせた別のカードゲームのことのようだ。


 デッキを見直すと対戦台から退く和菜。ならばと、私と友美でバトルを開始する。そんな矢先だった。

「ところで、最近デュエバにかかりきりだけど、勉強の方は大丈夫なのかな?」

 芽衣が唐突にそんなことを言い出す。


 途端、一斉に時が静止した。どういうこと、これ。問いかけた芽衣自身も、

「ザ・ワールドなんて使った覚えないわよ」

 と、困惑している。


 ようやく、拘束が解けたのは時計の秒針が一周しようかという時だった。

「もう、びっくりするな、芽衣姉ちゃん。いきなり、心臓に悪いこと言いださないでよ」

「心臓に悪いのはこっちよ。いきなり固まるから、心配したのよ」

「必然。あんなことを聞かれたら、固まる」

 さも、当然と言わんばかりに敦美は胸を張る。張る局面ではないと思うけど。


「テストかぁ。聞きたくなかったわ」

 和菜が耳をふさぐ。

「キムっち、昔から勉強が苦手だったもんね」

「あんたも人の事言えないじゃない」

 白い眼を向けられ、友美はへたくそな口笛を鳴らす。と、いうか、鳴らせていない。


「まさか、あなたたち、テスト勉強を全然やっていないとか」

 私が指摘すると、再び沈黙が訪れる。まあ、そんな予感はしていたわよ。

「だって、仕方ないじゃん。デュエバの練習しなくちゃだし、部活の応援にも呼ばれてるんだもん」

 友美が不平を訴える。それでなくとも、この子は成績が優秀なイメージが無い。


「私だって、色々と忙しいのよ。双葉や三平、善詩乃の面倒を見なくちゃだし」

 和菜は、まあ、仕方ないわね。あの状況で成績が良かったら、逆に化け物だと思うわ。


「耳線。勉強については聞きたくない」

 この子については仕方ないと言うか、意外ですらあったわ。

「あなた、そこそこ勉強できそうなイメージあったけど」

「あっちゃん、基本的に勉強は好きじゃないんだよね。と、いうか、好きな教科と苦手な教科の差が激しいんじゃなかったっけ」

「提案。すべての授業を国語と歴史にすべき」

 要するに、典型的な文系人間と言うことね。


「唯ちゃんはいいよね。いつもテストで満点取ってるんだもん。ねえ、テストでいい点取れる道具とか持ってないの」

「のび太みたいなこと言い出さないでよ。そんなのあるわけないでしょ。普段から、しっかりと予習、復習をする。それに勝る勉強法なんて無いわよ」

「それができたら苦労しないんだよ!」

 胸を張って主張することじゃないわよ。


 とはいえ、そろそろ定期テストの時期か。デュエバをやりたいのもやまやまだけど、勉強に集中しなくちゃね。

「そろそろ時間だから、お暇しようかしら」

「あ、一人だけ抜け駆けで勉強しようとしてるぞ」

「確保。そうはさせない」

 帰宅しようとすると、がっつりと両腕を掴まれた。


「離しなさいよ。いつ帰ろうと、私の勝手でしょ」

「フフフ、お姉さん、もうちょっと遊んでいかない」

「誘惑。楽しいこといっぱいあるよ」

「あんたら、怪しいお店の店員みたいになってない」

 ここ、カードゲームのお店よね。ロイヤルストレートフラッシュとか言い合ってないよね。


「和菜、あなたもどうにか言って」

「逃がさないわよ」

「あなたも!? と、いうか、家事は平気なの」

「お手伝いさんがいるからね!」

 そうだからって、頼りきりはどうかと思うわよ。勉強したくないゾンビに囲まれ、私はにっちもさっちもいかなくなる。


「はいはい、唯ちゃんが困ってるでしょ」

 助け舟を出したのは芽衣だった。三人にそれぞれチョップを入れたことで、ようやく大人しくなる。

「芽衣姉ちゃん、暴力反対」

「直訴。出るとこに出る」

「お姉さまの愛の鞭」

 一人、反応がおかしい奴がいたけど、主に不平を訴える。芽衣も負けじと、腰に手を添えてため息をつく。


「学生の本分は勉強よ。あの時、もっと勉強しておけばって、後悔する前に、さっさとやるべきことをやっちゃいなさい」

「芽衣さん、実体験交えてません」

「あらぁ、せっかく助けてあげたのに、妙なことを言うのはこの口かしら」

「いえ、何でもありません」

 自ら地雷を踏みぬくのは愚か者がやることだ。未だ不満たらたらの者も含め、本日はこれでお開きとなった。

マニアックな小ネタ紹介

竜人を得た武装ドラ

アニメの主人公も使っていたシャ〇バの武装ドラゴンのこと。

流麗なる竜人というカードが追加されたことで、これまで環境外だったのに、一気に一線級に躍り出た。

加えて、切り札のレーヴァテインドラゴン等の上方修正により、アンリミフォーマットでも環境上位に食い込むと、露骨な好待遇を受けている。

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