表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第3章 木村和菜
116/122

三平VSアテナ 姉ちゃんはいつだって助けてくれる

「いやあ、予想以上だよ。まさか、ここまでそのデッキを使いこなすなんて。もしかしなくとも、才能あるんじゃない」

「誉め言葉は素直に受け取っておくわ、友美」

 トゥモーミはびくりと体を震わせる。わざとらしいっての。


「友美? 誰の事かな? 我が名はトゥモーミ」

「友美でしょ」

「いや、違うって。アークバトラーの。あ、こら、何をする」

 喚く彼女にお構いなしに、私は仮面をはぎとる。その下から見知った顔が出てきた。


「おいこら、仮面の戦士の仮面を無理やりはぎとるなんて、ご法度だぞ」

「知らないわよ、そんなお約束。ねえ、友美、そんな不審者みたいな恰好して、双葉を攫ったなんて、冗談きついわよ」

「フフフ。アークバトラーにそんな口を利いて、アイテテテ! こら、キムっち、みさえじゃないんだから、それはやめろ!」

 あくまでもふざけ通すつもりらしいから、グリグリ攻撃を仕掛けておいた。


 思う存分お仕置きを喰らわせると、友美は息絶え絶えになっていた。恨みがましく睨んできたけど、先にふざけたことを仕掛けたあなたが悪い。

「で、そろそろ聞かせてもらいましょうか。双葉はどこにいるの?」

「ふん、教えると思った、あ、やめて、本当に」

 なおもふざけるつもりだったので、追撃しておいた。本当に懲りないわね。


「分かった、分かった、教えるから。双葉ちゃんがいるのはね」

 そうして白状したのは意外な場所だった。ともあれ、本当にそこにいるのなら、居てもたってもいられない。私は自転車にまたがると、脇目も振らずペダルを踏み込むのだった。



 バニラ城を繰り出し、順調に条件を満たそうとしている。けれども、相手も反撃の準備は万端のようだった。

「召喚。海洋神トリティオン。わたしの手札は10枚。よって、攻撃力と体力は共に1000。加えて、突撃とデコイを持つ。チョモランマ・ゴリラを攻撃」

 俺の場で最大スタッツを持つゴリラがやられてしまった。おまけに、アルティメシア並みの能力値を持つサーバントを相手にしないといけないなんて。


「宣告。トリティオンを止める術がないのなら、次のターンで決める」

 アテムは堂々と人差し指を伸ばした。トリティオン単体で攻撃されても、かろうじて体力は200残る。それでも、そんなことを言うということは、速攻能力を持つサーバントを隠し持っているのだろう。


 くそう、こんな時、どうしたら。頭を抱えるが、今の手札では打開策を見いだせない。

「嘲笑。大したことは無いな。ここで諦めるのなら、それまでということ。お前も、お前の姉も」

 俺はピクリと耳を動かした。

「姉ちゃんが、大したことないだって」


「合意。そうだろう。簡単に諦めきれるなら、そこまでの存在だということ。口やかましいだけの姉は、むしろ要らないんじゃないのか」

「姉ちゃんをバカにするな!」

 俺は自然と大声を出していた。アテムは自然と後ずさっていた。


「姉ちゃんはすごいんだぞ! 勉強とか部活とかで疲れている時だって、きちんと家のことをやってくれる。おまけに、困ったときには、文句言いながらも最後は手伝ってくれる。だから、お前なんかが悪く言える資格はないんだ」

 まくしたてると同時に、俺は山札からカードを引く。そうだ、和菜姉ちゃんはいつだって助けてくれた。今、この状況をどうにかしてくれる、このカードみたいに。


「邪な書道家 悪道鉄扇を召喚!」

「意外。アンデットのサーバント」

 巨大な筆を持った、悪人面したおじさんのサーバントだ。ずっと前に姉ちゃんとカードを買いに行って引き当てたものの、ずっと使いどころに悩んでいたカードでもある。


「苦笑。今更、攻撃力300のサーバントを出したところで、トリティオンを倒せない」

「甘いぞ! 鉄扇の能力! 能力を持たないサーバントにキラー能力を与える」

「驚愕! バニラ城でバニラのサーバントは突撃とデコイを持つようになっている」

「その通り。3PPでムキムキクラゲを召喚! トリティオンを攻撃だ」

 クラス:オーシャンのバニラのサーバント。普通なら一方的にやられるだけだけど、トリティオンを道連れにすることができる。


 これで、相手の切り札を倒した。と、安心するのはまだ早かった。

「召喚。キルジェット・シャーク。手札が8枚以上だから速攻能力を持つ」

 おそらく、トリティオンと一緒に使おうとしていたサーバントだ。もし、トリティオンを倒せていなかったら、こいつとの連続攻撃で負けていた。なにせ、攻撃を受けて、残り体力は800だからだ。


 そのうえ、アテムの追撃の手が緩むことは無い。

「発動。魔法カードショック。体力300以下、邪悪なる書道家 悪道鉄扇を破壊」

 これで、俺の場のサーバントは攻撃力200のインプだけ。相手の残り体力は1400だ。


 そんな状況を把握してか、アテムは自分の手札の1枚を指ではじく。

「予告。わたしの手札にはリヴァイアサンが眠っている。更に、エマージェンシーのその場しのぎの知恵も健在。この意味が分かるか?」

「次のターンで決めるってことだろ」

 アトランティック・リヴァイアサンは手札の数だけ直接ダメージを与えられるカードのはず。今の相手の手札は8枚だけど、その場しのぎの知恵を使えば10枚、1000ダメージを叩き出せる。俺に直接ダメージを放ってきたら、それで終わりだ。


 くそう、せっかく反撃のチャンスだったのに。どうにか、どうにか切り抜ける手は無いのか。俺は場のカードを見渡す。

 そこで、ふと、姉ちゃんが言っていたことを思い出した。


 それは、俺が教科書を無くして大慌てしていた時のことだ。昨日も宿題を忘れていったから、またやっていかなかったら、雷を落とされるどころじゃ済まない。でも、宿題をやるには教科書が必要だ。


 あたふたしていると、姉ちゃんはため息をつきながら、放りっぱなしになっていた鞄の中身を整理し始めたのだ。

「やりっぱなしだと、見つかるものも見つからないわよ。きちんと、整理しておかなきゃ」

 その時はうっさいなって思ったけど、結局、整理していくうちに自然と教科書を見つけることができた。「ほら、あったじゃん」と頭をなでてくれたことが、妙に心地よかった。


 なんて、思い出に浸っている場合じゃないけど、しっかり観察すれば、どうにか道が見つかるはず。俺の墓地にあるバニラのカードは九枚。バニラ城の真の力を使うには、後一枚足りない。せめて、墓地にあるこれをもう一度使えれば。


 そこで、俺は手札を見直す。本当なら、8PP使って、お気に入りのこいつをすぐに大暴れさせたい。でも、それだと相手プレイヤーにダメージを与えることができない。けれども、あのカードを引き込むことができれば。

カード紹介

雲中白廓!バニラ城

ビルドカード(特定カードでないと破壊できない。場にある限り効果を発揮し続ける)

コスト2

自分の場に能力を持たないバニラサーバントが出るたび、以下の能力を付与する。

墓地にあるバニラサーバントが3枚以上なら突撃、5枚以上ならデコイ、10枚以上なら速攻

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ