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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第3章 木村和菜
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和菜VSトゥモーミ 蜃気楼コンボ

「よく分かったね。このカードの正体を」

「大事なものは大抵真ん中に隠す。伊達に幼馴染やってるんじゃないわよ」

 墓地に捨てられたカード。それは、誉れの王者ジューオだ。場に出されたらどうしようもないのなら、出される前に対処してしまえばいい。うまいこと作戦が決まったわね。更に、アリスでドードー鳥を攻撃してダメ押しする。これで形勢を立て直した。ここから攻め立てていくわよ。


 そう息巻いた直後だった。

「エマージェンシーカード、クイックボマー。アリスを破壊」

 トゥモーミが開幕で除去の呪文を放ってきた。せっかく出したアリスがあっけなく墓地に送られる。そのうえ、追撃は止まらない。


「ミラクル・フュージョン、密林の帝王アジャコンジャ召喚!」

「攻撃力500。それで三月ウサギを破壊するつもり」

「甘いね。魔法カード邪悪なる牙」

 悪魔が大きく口を広げている、使っているデッキには似つかわしくないカードだ。思わずたじろぐ私に構わず、トゥモーミは畳みかける。


「邪悪なる牙は対象のサーバントにキラー能力を持たせることができる。ドードー鳥をキラー持ちにして三月ウサギを攻撃」

 キラーは攻撃力や体力の数値に関係なく、相手と相討ちできる能力だったはず。最低の攻撃力しか持たないドードー鳥でも、三月ウサギを道連れにする。


「そして、アジャコンジャでプレイヤーを攻撃。そして、能力発動。墓地からジューオを手札に戻す」

「あくまで、そのカードで勝負を決めるつもり」

 返答は無かったが、わざわざ確かめるまでもない。よほど、そのカードを信頼しているのだろう。


 私にも、そんな存在がいれば。そんなことを思いつつ、珍妙な仮面の対戦相手を見遣る。きっと気のせいだろう。その仮面の奥で微笑んだ気がしたのだ。

 敵に塩を送られているようで癪だけど、なんとなく、言いたいことは察せられる。正直、今の手札で打開策は見いだせない。でも、山札に眠るカードならば。


 私は思い切ってカードを引く。加えたのは魔法カード。既に手札にあるものと同一だ。これの真価を発揮するためには、墓地にあるカードが置かれていないといけない。ずっと手札で持て余していたけど、もしかして、組み合わせることができれば。


「私のターン! 魔法カード山崩しを発動! 山札から2枚を墓地に送る」

「な!? そんなのを入れていたのか」

 またも、相手の素が出ていた気がするが、指摘する余裕はない。送られるカードは山札の上から2枚。完全にランダムだ。これで、あのカードが送られれば。祈るようにカードをめくる。


 一枚目。違う。まだだ。さあ、来い。二枚目。表にした途端、私は目を輝かせた。この攻撃が通らなければ、次のターンの友美の攻めを受けきる手段は無い。なにせ、手札が尽きるからだ。さあ、捨て身の特攻を仕掛けさせてもらうわよ!


「魔法カード、蜃気楼の魔導を発動! 墓地からサーバントをコストに関係なく場に出す」

「でも、それで出したサーバントは攻撃できないし、ターン終了時にゲームから除外されるんだよね」

 指摘通りだ。でも、場に出た時に発動する効果は使うことができる。そして、出すにふさわしいカードは、先ほど墓地に送られた。


「私は、滅鬼の英雄モモ・タローを召喚する」

「山崩しはそのためか」

 私の意図を察したようね。モモ・タロー自身は攻撃できない。でも、場に出た時の効果で3体のトークン・サーバントを出すことができる。


 しかも、すべてにキラー能力が付与されるので、アジャコンジャを相討ちにすることも可能だ。でも、私の狙いはその先にある。

「更に、二枚目の蜃気楼の魔導を発動! これにより、モモ・タローをアリスへとランクアップ」

「蜃気楼コンボ。まさか、そのデッキをそこまで使いこなすとは」

 説明書で解説されていたコンボだ。もちろん、アリス自身は攻撃することができない。けれど、アリスが場に居る時の能力は発動できる。


「アリスの効果で、モモ・タローによって召喚した3体のサーバントは速攻を持つ」

「合計攻撃力は600か。でも、あたしの体力は1300。残り700の打点をどうするつもりかな?」

「余裕をかましていられるのは今の内よ。アリスの場に出た時の能力。コスト5以下の魔法カードをコストを支払わずに使うことができる。これにより、手札の最後の一枚、狂った茶会を発動! 選択するサーバントはマッドハッター」

 珍妙なポーズを取る、帽子を深く被った怪しげな男。破壊されると、こちらに400ダメージを与えるデメリットを持つ、非常に使いにくいサーバントだ。


 しかし、それを上回る強みをこのカードは持っている。

「攻撃力、700」

 察したようね。ワンダラーのトークン・サーバントなので、アリスの恩恵を受けることができる。さっき召喚したモモ・タローのお供と合わせれば。


「これで最後よ! 速攻能力を得た4体のトークン・サーバントで相手プレイヤーを直接攻撃!」

 相手に対抗策があったかどうか定かではない。けれども、仮面の少女は大手を広げ、私の最終攻撃を甘んじて受け入れた。

カード紹介

蜃気楼の魔導

魔法カード コスト4

墓地からサーバント1体を場に出す。それは攻撃することができず、ターン終了時にゲームから除外する。(場に出た時の効果は使用することができる)

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