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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第3章 木村和菜
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和菜VSトゥモーミ 頼れる存在


 ジューオ。明らかに強そうなカードを出してきたわね。

「あたしの場のサーバントは6体。よって、ジューオの攻撃力は900まで跳ね上がる。そして、他のサーバントの攻撃力も100上昇させる」

「一斉攻撃を受けたら、それで終わりということね」

 そのぐらいの足し算はできる。そして、そんなあっさりやられるつもりはなかった。


「バトルだ! ジューオで相手プレイヤーを攻撃」

「エマージェンシーカード、ゲリラ・トルネード! ジューオを手札に戻す」

「むう。ジューオのメタカードの定番を仕組んでいたか」

 しぶしぶといった呈でジューオを手札に戻していく。けれども、強化された他のサーバントたちの攻撃は止まらない。一気に残り体力は400まで削られる。


「どうだ。これこそが、仲間たちとの絆の力だ。例え、1体、1体は弱くとも、力を合わせるとすごいパワーが出せるんだよ」

 トゥモーミのご高説にイラッとするが、発言自体は認めざるを得ない。単体では明らかな雑魚。それが強化して並ばれると、とんでもない脅威となる。


 これが力を合わせるということ。強力ではあるが、でも。

「魔法カード北風と太陽を発動。北風の使者ウィザーネとしてプレイする」

 イラストの半分には、大きく口を膨らませた巨漢が描かれている。おそらく、それがウィザーネなのだろう。


「ウィザーネの効果。体力200以下の相手サーバントをすべて破壊する。あなたの場のサーバントはすべて体力200以下よ」

「AOEね。それが来るのは想定内だよ」

 場が壊滅させられたとしても、余裕は変わらない。ウィザーネの効果で直接200ダメージを受けてもなおだ。


「ジューオは確か、場にサーバントがいないと効果を発揮できないはず。圧倒的に不利なのに、どうして前を向いていられるの」

 私の問いかけに、トゥモーミは鼻を鳴らした。

「デッキの中に眠っている仲間を信じている。どんな状況でも、助けてくれる仲間がいるから切り抜けられるってね。魔法カード、ビーストパレード。コボルト、ドードー鳥、強襲する荒熊を召喚」

 またも大量のサーバントを繰り出してきた。しかも、それだけで終わるわけはなかった。


「ドードー鳥の効果。山札のカードをトークン・サーバント、ドードー鳥として場に出す。そして、荒熊の効果。場に4体のサーバントがいるから、体力400以下のサーバントを破壊する」

 ウィザーネが破壊されたことよりも、ジューオを十全でプレイできる状況を用意されたことの方が痛い。


 ここまで強気でいられるのは、頼れる存在がいると信じ切っているから。

「気づいていないかもしれないけど、キムっちも同じだよ」

 唐突に諭され、私は息を詰まらせる。危うく、手札を取りこぼしそうになった。


「つらかったら、いつでもあたしたちを頼ってもいい。自分だけで解決しようとしないで。いつだって、味方はいるんだから」

「友美」

「わ、わたしはトゥモーミだ! 間違えるな」

 取り繕っても、その声音を間違えるわけはない。劣勢にも関わらず、こみあげる笑いを堪えることはできなかった。


「な、何を笑っている。次のターン、ジューオでリーサルだ。回避できる術はあるかな?」

「そうね。今の手札にそんな手段は無い。でも、引いて来ればいいんでしょ」

 破顔する私。相手にとって不敵にも思えただろう。自分でも傲岸不遜だと思う。でも、根拠のない自信があったのだ。この1枚目に打開手段がある。


「エマージェンシーカード、休み知らずのウサギを召喚」

「サーバントに対してバトルする時に攻撃力が上がるやつ。だけど」

「そう。本当の狙いはそれじゃない。ウサギをワンダートラベラー・アリスにランクアップ!」

 頭に大きなリボンをつけた、フリルのワンピース姿の少女。「不思議の国のアリス」の主人公に瓜二つだ。


 攻撃力と体力はたったの300。PPを7も支払ったにしては心もとない。でも、トゥモーミは仮面をつけていても明らかに動揺を覗かせている。そう、素人目からしても強力な能力を有しているのだ。

「アリスの効果発動! 手札からコスト5以下の魔法カードをコストを支払ずに唱えることができる」

「踏み倒しはカードゲームの中でも強力な能力だからな。それで、どんなカードを使うつもりかな?」

「私が使うのは狂った茶会よ」

 三種類のサーバントの中から任意の一体を出せる魔法。


 マッドハッターの攻撃力は魅力的だけど、相手の体力を削り切るのは至らない。眠りネズミで1体だけサーバントを戻しても焼け石に水。ならば、一か八か。

「三月ウサギを召喚」

「ふ、ふん。それで来たか」

 このカードの能力は把握しているようね。しかも、これで終わりではないわ。


「アリスのもう一つの効果。場にクラス:ワンダラーのサーバントが出た時、それは速攻能力を持つ。三月ウサギで強襲する荒熊を攻撃」

 三月ウサギの体力は400だから、一方的に荒熊を破壊することができる。けれど、私の狙いは別にある。

「三月ウサギの攻撃時能力。相手の手札を1枚捨てさせ、私はカードを1枚引く。その手札を捨てなさい」

 指し示したのはど真ん中。緩慢な仕草で、それを墓地に置く。

カード紹介

ワンダートラベラー・アリス

クラス:ワンダラー ランク2 コスト7

攻撃力300 体力300

このカードが場に出た時、コスト5以下の魔法カードをコストを支払わずに唱えてもよい。

このカードが場に居る限り、場にクラス:ワンダラーのトークンサーバントが出るたび、それらは速攻を持つ。

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