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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第3章 木村和菜
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変な人が訪ねてきたゾ


 姉ちゃんが買い物に出かけてから、俺は不貞腐れたようにソファに転がった。今日は俺の誕生日。でも、なんだか、あんまり嬉しくなかった。


 多分、姉ちゃんと喧嘩しちゃったせいだと思う。新しい姉ちゃんが欲しいなんて、言いすぎちゃったかな。

 いや、できるなら欲しい。だって、姉ちゃんはいつも口うるさいんだもん。あれはダメ、これはダメって。おまけに、おもちゃも全然買ってくれない。そのせいで、クラスのみんなと遊べない。いっつも我慢してばっかだ。


 その点、前に来てくれた姉ちゃんは良かったな。野菜スープ作ってくれた姉ちゃんは優しかったし。三つ編みの姉ちゃんは一緒に遊んでくれたし。しかも、デュエバ、すっげー強かったな。おまけに、カードをくれたし。


 だから、新しい姉ちゃんが欲しいと思うのは悪いことじゃないはずだ。うん、そうだ。そうに違いない。

「三平、善詩乃と一緒に散歩してくる。ちょっとの間、留守番よろしく」

 テレビとにらめっこしながらそんなことを考えていると、双葉姉ちゃんが声をかけてくる。俺が二つ返事で答えると、玄関でベビーカーを引く音が聞こえる。しばらく、俺一人きりか。


 そう思って、お古のゲーム機のスイッチを入れる。一目で十年以上前と分かるデモ画面が表示される。ちょうどその時だった。ピンポーンと調子が外れたチャイムが鳴らされた。


 宅配便か? 変な人が変なのを売りに来たらどうしよう。単純にゲームをやりたかったのもあるし、なかなか腰が上がらなかった。すると、またもピンポーンとチャイムが鳴らされる。その後も、しつこくピンポーンと鳴り響く。


 まったく、うるさいぞ。わざと足を踏み鳴らしながら、廊下を闊歩していく。そして、乱暴に扉を開ける。そして、後悔した。


 体を水泳の授業で使うバスタオルで隠し、ライダーのお面を被った変な人。そいつが家の前に立っていたのだ。

「だ、誰だ、お前は」

「応答。誰だお前はってか。わたしはアークバトラー」

「変なおじさんじゃないのか!」

「失敬。おじさんではない。と、いうよりも、なんでそれを知っている」

「テレビでやってたぞ」

 おじさんじゃないにせよ、変な人には変わりない。どうしよう。こういう時はおまわりさん。


 いや、俺がこの変な人をやっつけたら、姉ちゃんも見直してくれるかもしれない。そうして、仲直りできたら、少しは良いお姉ちゃんになってくれるかも。そうだ、そうしよう。


「進言。わたしがここに来た目的は一つ」

「ブレイブチャージ!!」

「疑問。なんだ、それは」

「勇気戦隊ブレイブレンジャーのブレイブラスターだぞ! 変な人は俺が退治してやる」

 俺が幼稚園の時にやってた戦隊の武器だ。これならひとたまりもないだろう。


「くらえ、ブレイブバースト!」

「ブレイブバースト!!」

 機械の音と共に、ビビビビという交戦の音が鳴る。

「清聴。まずは話を聞いてほしい」

「くらえ! 悪のヨワッキーめ!」

「否定。わたしは悪の組織の怪人ではない。いや、そうなのか」

 なんか混乱している変な人に、俺は光線を喰らわせる。おお、効いてるかもしれない。これなら、倒せるぞ。


「ようし! 倒れろ、怪人」

 ガッシ。いきなり、ブレイブラスターを掴まれた。恐る恐る顔を上げると、ライダーのお面と目が合った。

「清聴。話を、聞け」

 無言の圧力って、こういうことを言うのかな。


 不審者はコホンと咳払いすると、無駄にかっこいいポーズをとった。

「表明。わたしの名はアークバトラーのアテム」

「敦美姉ちゃんじゃないの?」

 思い切りむせていた。え? 違うの。声がそのまんまじゃん。


「否定。わたしは敦美ではない。アテムだ」

「ねえねえ、また遊びに来てくれたの?」

「話を聞け!」

 グイと迫られる。ライダーのお面が目の前にあると迫力あるな。なんて、感心している場合じゃないか。


「警告。貴様の姉は預かった」

「姉ちゃんが」

 さっき出かけたばかりなのに。

「自慢。アークバトラーに不可能は無い。数秒で人間を拉致することなぞ容易」

 おお、敵ながらすごいぞ。なんて、ワクワクしちゃダメだ。


「姉ちゃんをどこにやったんだ」

「疑問。心配なのか? 新しい姉ちゃんが欲しいと言っていたのに」

「そ、それは。って、なんで知ってるんだよ」

「明白。アークバトラーはすべてお見通し」

 お面のせいでくぐもった声が不気味だった。くそ、こんな変な奴に姉ちゃんが。何故だか、握る拳が熱を帯びている。


「質問。姉ちゃんを返してほしいか」

「もちろん」

 間髪入れずに、そう答えていた。すると、アテムとかいう不審者はバスタオルの内からあるものを取り出した。


 その特徴的なデザインの紙の束は見たことがある。

「挑戦。返して欲しくば、わたしとデュエバで勝負するがいい」

「デュエバだって」

「提議。貴様もデッキを持っているだろう。ならば、答えは一つのはず」

 そこまでお見通しか。確かに、敦美姉ちゃんと一緒に作ったデッキがある。それでどこまで戦えるか。


 ええい、迷っている暇なんて無いじゃないか。それに、こういうのは本当にアニメの主人公みたいでワクワクするぞ。

「ようし、やってやる。バトルだ」

「承諾。さっそく始めよう」

 リビングまで通すのももどかしく、玄関先でバトルが開始された。

カード紹介

チアラビット

クラス:ビースト ランク1 コスト2

攻撃力100 体力100

このカードが場に出た時、他のサーバントを1体選び、その攻撃力と体力を+100する。

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