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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第1章 小鳥遊唯
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押し売りとうざい父親

「えっと、ジューオだったかしら。ライオンの頭をした男のカードを使っていたわ」

「推察。Tier1のアグロビースト」

「そのTierは何なのよ」

「カードゲームの用語よ。ゲーム環境のデッキの強さの指標で、Tier1はいわば最強のデッキってわけ。ブン回ったら、6ターンでジューオでリーサル決めてくるから性質が悪いわ」

「納得。芽衣ねぇの使うランプレジェンダリーとは相性が悪い」

「っと、ごめんね、脱線しちゃって。そうか、ビーストね」

 呟きつつ、ショーケースを眺めている。そうして、1枚のカードを取り出した。


「なら、このカードとか活躍するんじゃない」

 それは「薙刀の覇者アヤメ」という、薙刀を振るっている赤袴の大和撫子のカードだった。ウォーリアのランク2。確かに、私のデッキなら活躍できそうではある。

「ありがとう。もらっておく」

 最後まで言い終わる前に、芽衣は右の掌を広げた。

「小計700円になります」

「きちんとお金は取るのね」

「誰もタダであげるとは言ってないわよ。っていうか、ショーケースのレアカードをタダであげたなんて知れたら、私が父さんに叱られるっての」

 考えなくとも、相手はこの店の店員だ。無料で入手できるなんて虫のいい話は無い。それに、2000円近いカードを買おうとしていたのだから、このくらいは安い買い物だ。


「おっと。せっかくだから、ストレージからも、いいカードを見繕ってあげなくちゃね」

「同意。ミッドレンジのウォーリアなら、これとかいい」

「あっちゃん、お目が高いじゃん。なら、これとか」

「称賛。デコイ持ちは重要」

 この人たち、テンションがファッションショップで服を吟味する女子みたいなテンションになっているのだけれど。ここ、カードショップよね。


 結局、二人の勢いに逆らうことはできず、大量のノーマルカードを買うことになってしまった。勝負には勝ったけど、負けた気分なのはなぜかしら。ともあれ、友美に勝つためのデッキはどうにか組むことはできそうだ。

 その帰路で、私は無意識のうちにスキップを踏むのであった。


 帰宅した私は、さっそくデッキをいじっていた。「ヴァルキリアス」と「アヤメ」はデッキに組み込むのは必須。そうとして、入れたいカードをすべて入れると、デッキ上限枚数の40枚を超過してしまう。なので、外すカードを選ばなくてはならないのだが、どれを選べばいいのか分からない。


 勉強で分からないことがあるなら、教科書を読めば解決できる。だが、カードゲームの教科書など存在するのだろうか。一応、ミッドレンジウォーリアのお手本となるデッキはネットに転がっているのだが、未所持のカードが多く、完全には再現できない。

 なので、これに近しいものを組もうとしているのだが、代替とすべきカードがいまいち決まらないのだ。

「まさか、こんなのに悩む羽目になるなんて」

 これなら、数学の連立方程式とか証明問題の方がよほど易しい。と、いうか、この問いに正解などあるのだろうか。まるで、最後の一ピースを隠されたジグソーパズルをやっているみたいだ。


「唯、入るぞ」

 カードを凝視していると、部屋のドアがノックされた。重低音の威厳を感じさせる声。張り手をかまされた感覚に陥り、私は慌てて机の上のカードを隠す。

「ちょっと待って」

「どうした。見られてまずいことでもやっているのではないだろうな」

 抵抗もむなしく、強引にドアノブが回される。まさに図星だったから、反論しているのに。でも、この男の前では無意味だった。


 侵入してきたのは、スーツ姿で厳格な顔つきをした中年男性である。髪を七三分けにしており、いわゆるエリートサラリーマンというレッテルを張るにふさわしいだろう。実際にそうというか、それ以上の立場だから性質が悪い。

「ほう、きちんと勉強しているな」

 開口一番がコレだ。どうにか、教科書や参考書を広げてカモフラージュしてある。その下敷きになっているカードが気がかりだ


「当たり前でしょ。用でもあるの」

「きちんと勉学に励んでいるか、確認しに来ただけだ。それに、もうすぐ寝る時間だろう。夜更かしして遅刻などという体たらくは許さんぞ」

「分かってる。もう少しで予習が終わるところよ」

「そうか。まあ、頑張れ」

 それだけ言い残すと、そいつは無遠慮に退出していく。一分足らずの間にドッと疲れたわ。まったく、あの男は。


 小鳥遊無我。私の父であると同時に、小鳥遊商事の代表取締役である。いわば、私は社長令嬢という立場になるらしいのだが、正直、そんなにいいものではない。私を後継にしたいと考えているらしく、あらゆることに干渉してくるのだ。

 この前も、テストの学年順位が3位だったというだけで、こっぴどく叱責されたものだ。正直、うっとうしいけど、言うことさえ聞いていれば、それ以上小言を言われることはない。いわば、小学生のころから身に着けた処世術のようなものであった。


 なので、仮にゲームのカードなんて見つかったら、どんな目に遭っていたか。さて、デッキ作成の続きもやりたいが、勉強もおろそかにはできない。両天秤に悩んだこともあり、結局、寝る時間はいつもより一時間も遅くなってしまった。

カード紹介

魔導書の解読

魔法カード コスト3

カードを2枚引く

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― 新着の感想 ―
女の子同士のデュエバが良い感じです。 徐々に持ちカードが強くなる過程も良いです。 後、親父さんも後々デュエバに関わりそうな予感。
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