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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第3章 木村和菜
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意外な助っ人

「簡潔。最大の身内といえば姉妹」

「まさか、双葉ちゃん」

 和菜の実の妹である双葉。確かに、彼女は当事者でもある。和菜とそれほど年が離れていないから、あの家の事情について把握しているはずだ。


 それに、家事の手伝いをして身に染みたのだが、彼女は比較的友好な態度を示してくれている。まさしく、最善手ともいえる相手だ。

 ただ、問題が無いわけではない。

「一応、面識はあるみたいだけどさ。真正面から自分の家の事情を話してくれともちかけて、話してくれるかしら」

 芽衣の疑念がすべてを物語っていた。結局はそこに帰着するのよね。第一、中学生が集団で小学生にアポイントを取ろうというのだ。下手を踏めば、良からぬ噂が広がってしまう。


 どうにか、双葉と接触する術はないものか。出てくる案は、家で待ち伏せするだの、学校帰りを付け狙うだの、犯罪の臭いしかしないものばかりだ。第一、小学生への声かけという犯罪スレスレのことをやろうとしているのだから仕方ない。


 暗礁に乗り上げかけた、その時だった。

「あれ、お姉ちゃんじゃん。どうしたの、こんなとこで集まって」

「その声は翔ちゃんか」

 翔ちゃん? 友美ったら、いつの間に知り合いを増やしたのかしら。しかも、男子小学生。


「唯ちゃんとあっちゃんは初めましてだよね。この子、前に高野商店でバイトした時にデュエバを教えたんだ」

「ああ、あの子か。和菜ちゃんとバトルした」

 小学生とバトルするって、どんなバイトしてるのよ。聞けば、初心者向けのティーチングイベントだとか。


「あれからデッキ強化して、強くなったんだ」

「おお、そうか。デュエバリストが増えて嬉しいぞ」

 友美は和気あいあいと翔ちゃんと話し込んでいる。この子、案外小学生の知り合い多いのね。カードショップの常連ならば当然か。


 そこでふと、思いついたことがあった。

「友美。もしかしてだけど、その子ならば双葉と繋がりがあるかもしれないわよ」

「双葉ちゃんと。ああ、そうか」

 呆けた顔をしていたが、どうにか私の意図を察してくれたようだ。柏手を打つと、翔ちゃんに向き直る。


「ねえねえ、同じ小学校に木村双葉って子が通ってたりしない?」

 提案しておいて今更だけど、とんでもなく期待値の低い博打をしている。まず、その子が双葉と同じ学校に通っている保証はない。加えて、学年が違えば知り合いである可能性はグッと低くなる。そもそも、男子と女子とでは交流がある場合の方が珍しい。


 言うなれば、デッキトップで逆転できるカードを引き込もうという無茶ぶりだ。アニメのデュエバなら何度か目にしたことのある局面だけど、現実に再現できるかというと。

「双葉? もしかして、三平の姉ちゃんのこと?」

 予想外の方面から引っ掛かった。


「もしかして、三平君のこと知ってるの?」

「だって、僕と同じクラスだもん。前に、スプラト〇ーンやりたいって言ってたから、スイ〇チ持ってったことあるよ」

 間接的ではあるが、有力な人材と巡り合えた。敦美も「幸運。なんたる偶然」と驚愕している。


「翔ちゃん、お姉ちゃんたちね、双葉ちゃんと話がしたいと思ってるんだ。どこに行けば会えるか分かる?」

 あまりに直接的な尋問だが、小学生相手ならば奇をてらった策よりも効果的かもしれない。翔ちゃんはしばし天を仰いでいたが、おもむろに呟いた。

「ヨロヅヤ、かな」

 随分と無難な場所が飛び出したわね。


「あそこで買い物してるの見たことあるよ。三平に聞いたら、和菜姉ちゃんの手伝いしてるって」

「小学校高学年くらいなら、一人でスーパーで買い物していてもおかしくないわね。それに、この時間帯ならタイムセールやってるはずよ」

「肯定。なおさら、そこにいる可能性が高い」

 芽衣が目撃情報に後押しを加え、敦美が助長する。買い物に出かけるなら絶好のタイミングだ。


「ようし、全裸急げだよ」

「だから、善は急げ。って、この場合は思い立ったが吉日の方がピッタリじゃない」

「唯ちゃん、こまけぇこた、いいんだよ」

「同意。些細な違い」

 いや、善は急げと思い立ったが吉日は似てるけど、微妙に意味合いが違うわよ。敦美の言う通り些細な違いかもしれないけど。


 なんて、国語の先生ばりに指摘する余裕はなさそうだ。超特急よろしく飛び出す友美に、追従する敦美。こうなったら止める術はない。苦笑する芽衣と呆気に取られている翔ちゃんに一礼し、私も彼女たちの後を追うのだった。

カード紹介

怒りの荒波

魔法カード コスト5

相手サーバントを体力の合計が自分の手札枚数×100以下になるように選ぶ。選んだサーバントをすべて破壊する。

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