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5-6

 水着、かぁ……。


 バッグに詰め込まれていた多種多様な水着がバスの後部座席に広げられていた。



「水着。ふむ……どんなものが一般的なのだ?」

「私も海とかで遊んだことないから分からないけど、セパレートとかビキニとかじゃないかな?」

「セパレート……これか?」

「うん。それで、こっちがビキニ。これは胸の大きい人じゃないとつけられないね」



 隣では……えっと、ルミニア、だっけ? 確かそんな名前の人と……あと確かイェスって人が興味深そうに水着を次々と手にとっては眺めている。


 ……ビキニか。


 ビキニは、どちらかといえば胸の大きい人向けの水着だ。


 胸が小さい人がつけると、ちょっと可哀そうなことになる。


 私には縁遠い水着だ。


 ――分かってはいるけれど、なんだか自分で考えててダメージが入る。


 だってしょうがないじゃない!


 身体が成長しないんだから! 食べても運動しても牛乳飲んでもマッサージしても!


 私だってもっと大きくなりたいわよ、いろいろと!


 誰にでもなく、内心で憤りながら、私は自分の好みに合いそうな水着を探すことにした。


 まあ、普通にセパレートでいいかな。


 そう思って、セパレート水着を一通り見て行く。


 あ……これいいな。


 そう思って、一つの水着に手を伸ばそうとして、ふと声がかけられた。



「佳耶」



 誰か、なんてもう分かっている。


 声だけ聞けば、一瞬でその顔は脳裏に浮かんでくるから。


 ……で、少しだけ、ほんの少しだけ苛立ちがよぎった。自分でもなんでこんな苛立つのかは分からないけれど、とにかくこう、むかっ、ときたのだ。



「……リリー」

「佳耶。これはどう?」



 そちらに視線を向ければ、リリーの手にする水着が視界に飛び込んできた。


 淡い黄色の、ワンピースタイプの水着だった。ついでに腰のところにフリルがついている。


 ……うわー。お子様仕様。


 こう、市民プールで遊ぶ女の子が着てそうな水着だね!


 あはは。



「って、虐めてんの!?」



 その水着を掴んで、明後日の方向に思いっきり投擲する。



「あら、気に入らなかった? とてもよく似合うと思うのに」

「それは私が子供体型って言いたいの? そうなの? そうなんだよね!? 悪かったわね子供体型で!」



 ふい、と。顔をリリーから逸らす。


 ふん。どうせ私は子供よ。リリーだってこんな私よりも、何だかしらない男と話してる方が楽しい癖に……。


 今更そんな笑顔で話しかけてきてさ……なんだかズルい。卑怯だ。



「……? 佳耶、なにか怒っている?」



 リリーが首を傾げて尋ねてきた。


 怒っている? なんで私が怒ってるなんて思ったんだろう。



「私は! 全然! 怒ってなんか! いないけど!」

「そうは見えないのだけれど……」

「本当だし。怒ってなんかないし?」

「……そう」



 少し小さな声で頷くと、リリーはそれ以上何も言わずに私から離れて行った。


 その背中が少しさびしそうに見えて、ちょっと悪い事したかな、なんて思ってしまう。


 ……でもリリーだって悪いんだ。


 私は本当は海なんて行きたくなかったのに、無理矢理に連れて来てさ。それでバスに乗ってみれば私なんてほっぽり出して違う人にべったりで。


 しかも、なにあの人に話しかけていた時のあの赤い顔。私の時は抱きつき時ですら平然としてる癖に。



「リリシアも大変ねえ」



 今度は、雀芽が近づいてきた。



「……どういう意味?」

「んー。ま、それは自分で考えなさい」

「分からないから聞いてるんじゃない」



 なんなんだろう、いきなり変なこと言いだして。


 ……ま、いいか。



「そんなことより、雀芽がもう決めたの?」

「ええ。私はこれにしようかと思ってるわ」



 そう言って雀芽が見せたのは……うげ。


 白に、おまけ程度に簡単な花を模した柄が描かれたビキニ。


 ……おおぅ。



「……雀芽は、私の敵だったのね」

「え?」

「…………ううん。なんでもない」



 そういえば、雀芽って着痩せするもんなあ。


 隠れ巨乳だもんなあ。


 やっぱり雀芽は私の敵かもしれない。



「それで、佳耶はどれにするの?」

「私は、これにしようかなって思ってる」



 そう言って手に取るのは、セパレートタイプの水着。


 上は胸をあんまり強調しない感じの、背中の後ろで結ぶタイプ。それで下がトランクスタイプのだ。


 まあ、これなら……活動的ってイメージを前面に押し出して、胸の小ささとか誤魔化せるんじゃないかと思う。うん、きっと大丈夫な筈。



「とりあえず試着してみない?」

「あー。うん、いいけど」



 私はバスの真ん中にかかった白い布のカーテンを見る。


 あの向こうに男性陣がいるんだよなあ……。


 ちょっと抵抗感がある。


 実際、なんかさっき誰か覗こうとしてたし。確か、皆見とかいったっけ。


 うん。もちろんボコったけど。ボコボコにしたけど。


 ……まあ、流石にあれに懲りて誰も覗こうだなんて思わないわよね。



「手早く着てみれば大丈夫よ」

「そう、だね」



 ちなみに。


 雀芽の水着姿は凶器だった。



「えっと、王女様は……それ、ですか?」

「別にアースではマギの王族なぞ何の地位も持たんのだ。ルミニアと普通に呼んでいいぞ。と、それはともかく……なにかおかしなところがあるか?」

「いえ……そういうわけではないですけど……」



 アイがそう尋ねるのも無理はない。


 ルミニアの選んだ水着。それは……布面積がかなり少ない鮮やかなオレンジのビキニ。


 流石にトップのみを隠すとか、そこまでデタラメではないけれど……なんというか、大胆だ。


 ルミニアの胸はそれなりに大きいので、そのせいで大胆さが一層に強調されている。



「ならば問題ないな。これでいいだろう」

「お姫様、恥じらいとかってないの?」



 そう苦笑するのは、あの嶋搗のことを「お兄ちゃん」と呼ぶ少女。イェス。


 そのイェスは、背中の開いたワンピースの水着。まあ、背中から見ると少し大胆だけどルミニアほどじゃない。



「それよりもアイ。貴様は随分と地味だな」

「ルミニアさんが大胆なだけです」



 あ、アイにしては珍しくさん付け。嶋搗とか皆見とか私とか、普通に下の名前を呼び捨てなのに。流石に本人に言われても王女様を呼び捨ては気が引けるのだろう。それと言葉遣いも丁寧だし。


 で、そのアイの水着は普通のビキニ。下はパレオを巻いている。


 色は自分の髪の色に合わせたらしく、赤だ。



「それより、悠希はまだ選んでないの?」

「あー。なんとなく決まらなくて」



 さっきからいろいろ見てるんだけれどね。


 なんとなく、これだ、っていうのがない。



「大方、臣護がどんな水着が好みか分からずに手間取っているのだろう」

「はぁ!?」



 ルミニアの言葉に、思わず大きな声が出た。



「な、何を……!」



 いやまあ少しは考えたけどね!


 でもそれは……、



「あくまでほんのちょっとした知的好奇心と言うかまあそんな感じのものであって別に私は嶋搗の興味を引きたいからとかじゃなくとりあえず別に意識してるとかじゃなくていや本当にマジでルミニアなに言ってるんの私はただ自分の趣味に合う水着が見つからなくて迷ってるだけで嶋搗はそこに少しも関わってないわよまったく何を言っているんだか本当に冗談じゃないわよ!」



 言うと、三人がそれぞれ別の反応を見せる。



「とんでもなく動揺しているな」



 ルミニアはにやにやとした笑みを浮かべ。



「お兄ちゃん愛されてるね」



 イェスは肩をすくめ。



「悠希……今のを一息で言うなんて凄いね」



 アイはまるで「ちゃんと分かっているから」みたいな優しい表情で私を見ていた。



「っていうか、本当にそういうのじゃないからっ!」

「「「分かってる分かってる」」」

「絶対に分かってない!」



「そういえばヴェスカーさん。俺達の水着は?」

「そこにある袋の中」



 そこに……って言われても。


 ああ。これか?


 床に転がっていた大きめの巾着袋みたいなのを拾い上げる。


 広げて見れば、中にはトランクスの水着が五着。


 俺、皆見、シオン、能村、ヴェスカーさん。


 ……どうやら男には選択の幅を与えるつもりはないらしい。


 いやまあいいけど。


 それに、一応五着全部色違いだ。



「私は余りでいいので、先に選んでいてくれ」



 ヴェスカーさんの言葉に頷き、俺は適当に一つを手に取る。


 黒だ。



「それじゃあ僕はこれを」



 シオンが青をとる。



「俺はこれだな」



 能村が緑。



「オレはもち、これだ」



 いつのまにか復活していた皆見が赤い派手なの。


 ということは、ヴェスカーさんはこの黄色いやつか。


 男の水着選びなんてこんなもんだ。



異常に書くのに時間がかかった。


そしてやっぱり海が遠い。

ついでにリリーとアマリンの水着はまだ未公開。


なんだかかけた時間の割には微妙な出来。

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