表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/179

5-3

「臣護って、何者?」



 アイの訝しむような視線に、軽く肩をすくめる。



「俺はただのSWだが?」

「ただのSWがマギの王女様と知り合いだったら私はびっくりだよ?」



 あの後。混乱するアイをどうにか落ち着かせて、未だに状況を理解できてない天利に説明をして、俺達はテーブルに座った。椅子が四つしかなかったので、俺は立ったままだ。


 女を立たせるのは論外。シオンは子供だから優先。ということで俺が立たされている。


 まあルミニアやシオンと一緒の席につくなんて俺としても好ましい状況じゃないし、別にいいんだけどな。



「臣護に聞いてはないか? 臣護の魔術の師は円卓賢人第一席じゃ、と。それ繋がりで知り合ったのだよ」

「……そういえば、いつか言ってました。あれ冗談じゃなかったんだね、臣護」



 ああ……金属生命体の事件での終わりの時か。



「あんな時に冗談言うかよ」

「それもそっか」



 笑い、そしてアイは改めてまじまじとルミニアを見た。



「でも王女様がアースにいるなんてびっくりしたな……こんなことばれたら、大問題じゃないんですか?」

「安心しろ、些事だ」

「大問題です」



 まともな対応をしようとしないルミニアの代わりに答えたのはシオンだった。



「この事が他の者に知られれば、姫の立場は非常に危ういものになりかねません」



 だろうな。


 マギ最高の血族が、マギに認められない世界にお忍びで行っていたなんて。古い魔術師が訊けば激昂しそうな情報だ。



「そこをどうこうするのが貴様の役目だろう、シオン?」

「…………それはそうなのですが……」



 シオンもご愁傷様だな。



「あの、さ。嶋搗」

「ん?」



 ふと、天利が声をかけて来た。



「私、会話についていけない」

「……そりゃそうだな」



 別に天利はマギについて、一般的に知られているようなことしか知らないわけだし。


 マギというのは現時点でひどく閉鎖的だ。


 いわば、昔の日本がそうしていたような鎖国状態。それをさらに酷くしたものと思っていい。


 人、物資、情報。何もかもが基本的に往来することはない。例外的なものもいくつかあるが、それは本当に僅かなもので、一般にまで知られるようなことじゃない。



「ま、マギについての話はもういい。お前だって、そんなこと話に来たんじゃないんだろう?」

「そうだな」



 尋ねると、ルミニアが唇で弧を描かせてうなづく。



「妾がこの世界に来たのは、とりあえずは楽しむ為だ」



 楽しむ、ねえ。



「王族というのはまあとにかく肩が凝ってな。その息抜きに、妾のことなど知られていないアースという世界に足を運んだのだよ」

「傍迷惑なことだな」

「まったくです」



 遺憾なことに、シオンと意見が被ってしまった。



「迷惑ならフェラインだけにかけてくださればいいものを」



 いつまで俺のことをフェラインって呼ぶつもりだこいつ。あの場限りで口にした名前をここまで引っ張られるとは思いもしなかったぞ。


 それと俺に迷惑がかかる分には構わないって口ぶりだな。このガキ。



「フェライン?」



 聞きなれない名前に天利とアイが首を捻る。



「彼に初めて会った時にそう呼べ、と」

「……嶋搗。どんな趣味?」

「違う。なに勘違いしてるんだお前」



 哀れむような目で見てるんじゃねえ。



「単に本名とかを出せない状況だったから、偽名に使ったんだよ」

「ふぅん……フェライン?」

「ふざけるな」



 天利にまでその名前で呼ばれる理由なんてない。


 なんか気色悪いぞ。



「とまあ、とりあえず臣護をからかうのは後回しにして、だ」



 後でからかうつもりかこいつ。



「妾は先に言ったとおり楽しみたい。というわけで貴様らに聞きたいのだが……アースの夏の楽しみ方、とはなんだ?」



 またいきなりな質問だな。



「夏の楽しみ方、ねえ」

「出来れば涼やかなものがいいな。話には聞いていたが、アースの夏というのは茹るようで堪らん」



 マギは寒冷期間と温暖期間の二つの季節しかない。温暖期間もアースでいう春くらいなので、確かにこの暑さはルミニアには堪らないだろう。



「夏の涼しい楽しみ方……って言ったら、やっぱり海じゃない?」



 天利がそう提案した。



「海? 海でなにをするのだ?」

「泳ぐに決まってるでしょ」

「海で泳ぐ……?」



 ピンとしない顔でルミニアが俺を見た。



「何かの隠語か、臣護」

「お前、アースの肝心なところばっかり知らないんだな」



 マギでは、海で泳ぐというレジャーは存在しない。


 理由は簡単。


 マギの海には食肉魚がうじゃうじゃいるのだ。そんなところで泳ごうものなら、どうなるかは目に見えている。



「姫。アースの海は基本的に安全です。泳ぐのは一般的に行われる遊びのようです」

「ほう……」



 小声でシオンがルミニアに告げた。


 シオンは知ってたんだな。


 あんな、ちょっと前まで古い魔術師の筆頭だったガキがよくここまでアースのことを勉強したものだ。


 ……というか、マギの魔術師は頭がいいとか、そういうジンクスがあるのだろうか。アイも短期間でこっちの言葉覚えてたし。



「海……面白そうだ。よし、では行くか」

「ああ、行って来い」



 やっとおさらばか。


 まったく。なんだか疲れたな……。



「うん? 何を言っている」



 ルミニアが、口の端を歪めた。


 背筋を嫌な予感がつたう。



「貴様らも付き合え。かまわんだろう?」



「海……?」

『ああ。我らが姫君のご要望でな』

「……そう」



 ルミニア様、こっちに来ているのね。


 流石、考えること成すこと常識から外れている。まさかアースに来ているだなんて思いもしなかったわ。



「それで、なんで私に連絡を?」

『どうやら姫君は私の娘との親愛を深めたいそうだ』

「……私も?」

『ああ。臣護君も呼ばれたらしい』



 その名前に、軽く思考が停止した。


 臣護さんも……。


 少し心惹かれるものを感じる。


 けれど……今日はこれから佳耶や隼斗、雀芽の四人で異次元世界に出る予定なのだけれど。それを無視して行くわけには――、



『それと、よかったらお前の友人も呼んで構わないそうだよ』



 それが、最後のひと押しだった。


 海。


 つまり水着。


 佳耶の水着姿……。


 瞬間、他のことがなにも考えられなくなる。



「行くわ」

『そうか。それは姫君も喜ぶだろう』

「じゃあ、佳耶達に連絡するから。またね、父さん」

『ああ。海には私も行くから、待ち合わせ場所はまた後で連絡する』



 通話が切れる。


 携帯電話を耳から離す。



「ふふ……」



 思わず笑みがこぼれた。


 佳耶の水着姿。


 きっと、とても可愛らしい。


 楽しみだわ。


 思いながら、私は佳耶の番号を引き出す。


 さて、と……。どうやって佳耶と能村姉弟を海に誘おうかしらね。




なんか展開が無理やりな感じ。

…………やっぱ作者日常パート下手すぎだって!

それと女性陣の水着案がないんだけどどうすればいいかな!?

女物の水着なんて詳しくないし……ググるか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ