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間章 自由課題


 Q1.食べ物は何が好きですか。また、その理由は何ですか?

 佳耶(以下、佳)「肉全般。スタミナがつくから」

 佑子(以下、佑)「やっぱりそれか……いやまあ分かってたんだけど」

 春花(以下、春)「いつも佳耶ちゃん、お肉食べてるもんね」



 ある日の夜、携帯電話の着歌が響いた。


 携帯を開くと、どうやら相手は佑子らしい。



「もしもし?」

『おー、佳耶。久しぶり……っても、まだ五日くらいしか経ってないか』



 五日とは、夏休みに入ってからの日数だ。


 そして、佑子と顔を合わせてない日数でもある。


 佑子達とは学校くらいしか顔を合わせる機会、ないしね。


 私はほら、いつもはSW活動頑張ってるから。



「どうかした?」

『んー、いや。佳耶さ、明日暇?』

「明日……?」



 えーっと。


 明日はグループでのSW活動はないから、ソロで異次元世界に出るつもりだったんだけど……まあ、暇と言えば暇か。



「暇よ。なにか用?」

『おーう。夏の自由課題はまだやってないよな?』

「んー、夏休みの宿題なんて最初からやる気ないし」

『駄目人間め』

「SWですから」



 別に学校の成績なんてどうでもいい。とりあえず母さんと父さんを少しくらい安心させられるように、高校卒業だけでも出来れば十分だ。


 ……SWなんてやっておいて、少しでも安心させられるように、なんてなんだかおかしいけれど。


 安心させたいなら、SW止めるのが一番なんだけどね。ごめんね、母さん父さん。それは無理。



『まあ、そんで明日さ、学校近くのファミレスこれる?』



 学校近くのファミレスって言うと……ああ、あそこか。



「なんで?」

『自由課題で私と春花はSWについての合同レポートをあげることにした』

「……じゃ、切るわね?」

『おーい! 待て待て!』

「…………SWについてのレポートってあんた……そんなので評価貰えると思ってるの?」



 SWは異端者だ。


 異端者は嫌われるし、極力近づくことすら避けられる。現代日本じゃ、SWはまるで犯罪者であるかのような目で見られることすらある。


 そのレポートを教師がどう評価するか、佑子は不安はないのだろうか。



「やるなら別のにしておきなさい」

『そう言うなよー。私はさー、嫌なんだよ』

「嫌って、何が?」

『佳耶がさ、SWってだけで皆から嫌われんのが。少しでも皆に佳耶のことが伝わればさ、ちょっとくらい周りの反応も柔らかくなんじゃねえのかな、って』

「……佑子」



 柄にもなく、ちょっとジーンと来た。


 あんた、私のことをそこまで――、



『それに佳耶のことレポートすれば終わりなんて、こんな簡単な課題はないしな』

「あんたそれが本音か!」



 ジーンとして損した!


 単に簡単だからか! そうなのね!



『まあ細かいことはいいじゃん。いいだろ?』

「……まったく、チョコパフェ三つ」

『ん?』

「チョコパフェ三つで手を打つって言ったのよ」

『んー、了解。それでいーよ』



 Q2.最近見て面白かった映画は何ですか? またその理由は何ですか?

 佳「ジェ○ラル・ルージュの凱旋。シリアスと笑いの温度差が好き。あとガリバーいいキャラしてる」

 佑「また微妙なところを……医療関係の映画か」

 春「私、それ見てないからよく分からないな。あ、でもチーム・バ○スタの栄光は見たよ」

 佳「バ○スタも面白かったわね」

 佑「んー、まあとりあえず、SWだからって別にアクションが好きなわけではないらしい、と」



「そんじゃ、早速何か質問するか」



 チョコパフェをのんびり食べる私の向かいで、佑子が腕を組んでそう言い、隣では春花がメモ帳を開く。



「で、なにを聞けばいいんだ?」

「私に聞くな」



 そこきちんと考えてきなさいよ。



「あ……じゃあ佳耶ちゃんの自己紹介からでいいかな?」



 春花はきちんと考えてきていたらしい。


 佑子とは違うのね。佑子とは。



「そうだな。佳耶、よろしく」

「……改めて自己紹介って、なんか恥ずかしいわね」



 こほん、と小さく咳払い。



「名前は、麻述佳耶。高校二年生――」

「なんで高校には通っているんですか?」



 春花が小さく手をあげて質問を挟んできた。


 なんでか敬語だ……記者の形から入っているのだろうか?



「んー、やっぱり高校卒業って、義務教育じゃないけど、なんとなく子供の義務みたいな風潮があるじゃない? 両親には迷惑かけてるし、せめて高校くらいは卒業しておきたいな、と。高校も行かないで戦い続ける娘なんて嫌になるでしょ?」

「なるほど……」



 春花がメモにペンを走らせる。



「続き、どうぞ」

「ん……趣味は特になし。強いて言うなら、SW活動が趣味かな。特技は身体を動かすこと全般。SWとしてはR・M社第三位ね」

「R・M社というのはリザルト・メディシン社のことですよね。SW関連企業としてだけでなく医療事業としても有名な。その第三位というのは?」

「SW関連企業はね、異次元世界で回収した資材なんかを優先的に自社に売却してもらえる契約をSWと結ぶの」

「契約、というのは詳しくはどういうものですか?」

「それはまず、異次元世界の物資の流れから説明した方が分かりやすいわね。普通、SWが手に入れた異次元世界の物資っていうのは一度国に売却して、そして国から各企業に転売されるの。転売の差額で国は設けているわけね。けれど企業と契約を結んだSW――専属SWは違う。間に国を挟まずに企業に直にものを売却出来るわけだから、余計なプロセスがなくなった分売却価格は上がるわ。それが専属契約。他にも駆け出しのSWだったらお金を無利子で貸してもらえたりもするわね。それで装備を揃えるの。SWの装備は高いから」

「いいことづくめですね」

「そうでもないわ。専属契約をすると企業側から依頼が入るの。依頼っていうのはつまり、要求する物資を今すぐにとってこい、だとか。それに逆らうと違約金が発生するわ。そういう風に依頼とかを受けたくない人は、フリーのSWで動く場合が多いわね」

「なるほど……企業も、欲しい資材がいつでも手元にあるわけじゃないですもんね。それをSWに取ってこさせるわけですか」

「そういうこと。分かった、佑子?」

「へ……あ、うん。分かったー」



 ……聞いてなかったわね。


 まったく。合同レポートなのに働いてるのは春花ばかりじゃない。



「それで、R・M社は何人くらいのSWが契約しているんですか?」

「確か、一万と四千くらいだったかしら」

「……佳耶ちゃんは、その第三位、なんですか?」



 あ、記者口調が元に戻った。



「そうね」

「……佳耶、あんたって実は、凄い人?」

「そうでもないわ」



 私はほら、身体が普通とは違うから。


 他人より有利な点があるからこその第三位なのだ。


 ある意味、インチキみたいなもの。



「ち、ちなみに第三位だと何か特典とかあるの?」

「各社上位三名には月収があるわよ。そうすれば上位争いで競争意識が活性化して、企業への貢献度が上がるから」

「月収かぁ、何万なんだ?」

「私は千三百万円」

「……へ?」



 佑子と春花が目を丸くした。



「今、なんて言いました?」

「だから、千三百万」

「年収?」

「月収」



 うん。言いたいことは分かる。


 多すぎよね。


 でもね、私この前調べてみたのよ。各社上位SWの給料。


 そしたら……M・A社とか凄い。


 リリー、月収五千万よ。


 五千万……それを見ると、なんだか私の給料もまあまあそこそこなのかな、って思えてしまう。


 金銭感覚が壊れすぎてるという自覚はある。



「いいな! お小遣いをくれ!」



 佑子が金の亡者になった。



「嫌よ。こつこつ貯金してるんだから」

「預金残高は!?」

「……秘密」



 これ以上言ったら、きっと私は佑子にたかられる。それを思うと、口は固く結ばれた。


 なお、十億はこの間越えた。私大富豪。


 ただ大金の使い道が思いつかないところは庶民派。


 毎回思うのだけれど、世界の経済ってどうなってるんだろう。SWがかなり金を持っていってると思うんだけど……悪影響とかないのだろうか?



「それよりもほら、レポート続けるわよ」

「あ、うん」



 春花が気を取り直してペンを握り直す。



「レポートなんかより今は佳耶の――!」



 何かわめいている佑子は無視だ。



「どこまで話したっけ?」

「R・M社の第三位というところまでです」

「そっか……うーん。私は特に話すことこれ以上思いつかないんだけど、聞きたいことある?」

「それじゃあ……普段のSWの活動はどんなものですか?」

「うーん、そうねえ……」



 SWとしてのこれまでの活動などを語っていく。


 春花はときどき驚きながらも、それをメモ帳に小奇麗な文字でメモしていった。


 どれだけ話したろう。


 チョコパフェ三つはとっくに食べ終わった。



「――と、まあこんなところかしら」

「はい。ありがとうございました。これだけ話してもらえれば十分です」



 にこりと笑んで、春花がメモ帳を閉じる。



「ありがとう佳耶ちゃん。これで課題はきちんとやれるよ」



 記者口調が終わる。



「それはよかったわ……で、」



 ちらり、と。


 テーブルの一角を見る。


 そこに、幸せそうな寝息をたてる馬鹿一名。


 ……はぁ。



「まったく。頑張ったのは春花一人ね」

「レポートに纏める時は佑子ちゃんにも手伝ってもらうから」



 春花はいい子ね。



「あ、そうだ。それと……佳耶ちゃん。佑子ちゃんがさ、あのこと書きたがってるんだけど……いいかな?」



 控えめな声で、おずおずと春花がそう尋ねてきた。


 あのこと……って、ああ。私の生まれのこと。



「別にいいわよ」

「え、いいの?」



 私があっさり快諾したことに拍子抜けしたのか。春花が驚いた様子を見せる。



「ええ。別に隠してるわけじゃないし……あ、でも余計な脚色とかしないでね。別に悲劇でもないんだし、憐みナシで、事実だけを軽く書いてよ?」



 悲劇のヒロインなんて、冗談でも笑えないもの。


 どうせやるなら、私は英雄譚の主人公になりたいわ。そういうものの方が、肌に合う。



「うん。分かった」

「よろしくね」



 Q3.好きな言葉を教えてください。

 佳「死闘」

 佑「……」

 春「……」

 佳「え……え? なんで沈黙?」



 後日。



「…………あれー?」



 学校の廊下に張り出された学級新聞。


 そこに生徒達が群がっていた。


 見出しは『SWの実態! 現代の英雄!』とかなんとか。


 新聞の横には長机が置いてあり、そこに小冊子が山積みにされていた。



「春花ぁ、なにあれ?」

「……あれぇ?」



 横にいる春花に尋ねると、彼女は僅かに汗をかきながら首を傾げていた。


 おかしいわね。


 私の目の錯覚かしら。


 新聞の見出しのところとか、小冊子の表紙とかに……私の写真印刷されてない?



「おー、大人気だな」



 と、そこに佑子が通りがかった。


 ……待ちなさい。佑子。その手に持ってる小冊子はなに?



「え、ああこれ? なんかあの課題でやったレポート見て先生がいたく感動したらしくてさー、生徒にもこれを是非とも読んでほしい、って私に小冊子にしていいか聞いてきたんだよ。だからオーケーした」



 ……へえ。



「そんなこと……私、聞いてないわよ?」

「あれ、言ってなかったっけ? まあいいじゃん」



 まあいいじゃん、って……こ、こいつは……。


 私は別にこんな目立ちたいわけじゃないのに……!


 というか肖像権とかの侵害でしょ、これ!?



「佑子ぉ、覚悟は出来てるわよね?」

「あ、麻述先輩ですよね!?」



 とりあえず佑子を体育館の裏に連れて行って泣かそう。


 拳を握り締めた……その時。見慣れない女子生徒数名が私を囲んできた。



「へ……え、ええ。そうだけど……」



 誰……?



「あの、これ読みました!」

「かっこいいです!」

「あの、サインいいですか!?」



 口々に女子達がそんなことを言って迫ってくる。


 その手には、例の小冊子。



「あ……あの、えっと……ええ……!?」



 なにか言い知れない迫力に、思わず一歩後ずさる。


 っていうか、今まで腫れもの扱いだったのに……この変わり身の早さって……。



「よかったな、佳耶。もてもてだぞ。っと、私先に教室行ってるなー」

「なっ……ま、待ちなさい、佑子!」



 私の制止を無視して、佑子は軽い足取りで階段をのぼっていってしまった。


 ……春花を見る。



「か、佳耶ちゃーん!」



 私に押し寄せてくる女子達によって私からどんどん遠くへとはじかれていた。



 ……っていうか、さ。



 もみくちゃにされながら、私は力が身体じゅうから抜けていくのを感じた。



「なんで……女子ばっか私に群がってくるのよー!」





 なんであんなに人気が出るのかなぁ。


 気になって、小冊子を呼んでみた。



 自分で読んで、恥ずかしさで死にたくなった。


 私こんな格好よくないわよ……。


 春花……私、脚色しないでって言ったじゃない……。



 Q4.貴方が最も大切にしているものを教えてください。

 佳「友達」


うーあー。

すみませんすみませんすみません。

日常パートがへたくそでスミマセン!

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