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幕間 FCパニック!・下

「能村さん、大丈夫ですか!?」



 レックスから逃げる俺の隣に、草の向こうから現れた皆川さんが並走する。



「み、皆川さん……」



 しまった。


 ここでレックスを皆川さんに見られてしまうなんて。


 下手に逃げ回るんじゃなかった。



「っ、レックスは俺の獲物ですからね!」



 苦し紛れの一言。


 ここまできて俺の獲物もなにもない。


 それに対して、皆川さんは小さく苦笑し。



「命の危機に、リリシア様を見守る会もRSKも関係ありませんよ。細かいことは、レックスを倒してからしましょう」



 ……皆川さんっ!


 なんということだ。


 俺は、なんて汚い人間だったんだろう。


 てっきり皆川さんが俺を出しぬくものとばかり……。



「皆川さん、武器は?」

「僕の武器はこれです」



 言って、皆川さんが手を軽く振った。


 その手は拳が杭のように尖った手甲がはめられており、それが皆川さんの武器なのだろう。


 火力としては、決して高いものではない。



「厳しいですね……」

「ええ、だから能村さん。僕に考えがあります」

「どんなですか?」

「それは……、」



 にぃ、と。


 皆川さんの口の端が吊りあがった。


 ――へ?



「こういうことだこのクソッタレがぁっ!」



 いきなり変貌する口調と表情。



「リリシア様の素晴らしさを理解できない馬鹿は潰れろっ!」

「ぇえええええええええええええええええええ!?」



 皆川さんが俺の顔面に裏拳を放ってきた。


 いやいやいや、ちょっと待て!


 身体を逸らしてどうにかそれを避ける――が、そのせいで足元の窪みにつまさきを引っ掛けてコケてしまった。


 ああ、俺の運動神経なさが憎い!


 っていうか何しやがるこの野郎!



「はーっはっはっはっ! なーにが、俺の獲物、だ。むしろテメェがレックスの獲物じゃねえか馬鹿が! いい餌になれよぉ!?」



 あ、あの野郎、とんでもねえ本性隠してやがった。



「皆川ぁああああああああああああ!」

「はーっはっはっはっ!」



 高笑いを残して、皆川が草の向こうへ消える。


 あいつ……最初から俺を蹴落とすつもりで現れやがったんだな。


 俺が消えてからレックスをゆっくり仕留める気かよ。


 っていうか、そんなことしたら下手したら俺死ぬんだが!?


 あいつこんな戦いで人を殺すつもりか!


 そんな馬鹿な理由で死ねるかよ!


 俺は立ち上がって、再び駆けだした。


 コケたせいでレックスの鼻先が背中のすぐ後ろにある。


 熱いくらいのレックスの吐く息が、むしろ冷たく感じられた。



「畜生――!」



 走りながら機関銃を撃つ、なんてことは俺のスキルじゃ出来ない。やったらまたコケる。


 今はただ必死に逃げるしかなかった。


 と――、




「うぉおおおおおおおおお!」




 空からなにかが降ってきた。


 あれは……人だ。


 人が空から降ってくる!?


 その事実に驚愕しながらも、俺はその人影が誰なのかを見極めた。


 東条さんだ!


 彼は長剣を構え、一直線にレックス目がけて落ちてきていた。


 それを、レックスが横に跳んで避ける。


 東条さんの身体が地面に落ちる。激しい音がした。


 土煙があがり、その真ん中で彼は地面に膝をついていた。



「……くっ、落下の衝撃で、左肩が」



 東条さんの左腕はぶらりと力なく垂れている。肩の骨がどうにかなってしまったのだろう。


 ……この人、なんかダメだ。


 空からヒーローっぽく現れたかと思ったら、それでダメージって……。



「大丈夫か東条!」



 次いで現れたのは宇木さん。普通に草をかき分けてやってきた。


 手には長い槍。



「宇木……俺はまだいけるぞ!」

「その意気だ! さあ、またいくぞ!」

「応!」



 東条さんの返事に満足げに、宇木さんが槍を振りかぶった。


 それに、東条さんが地面を蹴って宙に飛ぶ。


 槍が振るわれ、空中で東条さんの足の裏へと接触する。


 東条さんはそのまま槍を足場に、槍の振るわれた威力も合わせて前方へと思いきり跳ぶ。


 さっき空から落ちてきたのもああやって上に跳んだのだろう。


 まるで一つの弾丸のように東条さんの身体がレックスへと翔ける!


 これは……いけるのか!?


 ――レックスが身体を退いてまたも東条さんを避けた。



「うぉおおおおおおおおおおおおおお!」



 東条さんは雄叫びを残し、草の中へ消えていった。



「……」

「……」



 沈黙。


 一瞬遅れ、



「よく東条を……!」



 いや、やったのは主に宇木さんですよ?


 っていうか……この人達、もしかして馬鹿なんじゃないかとは思ったが、正真正銘の大馬鹿だぞ!



「くっ、レーさんファンクラブが出てきたんじゃしょうがねえ! 銀、いくぜぇ!」

「よっしゃあ!」



 再び、皆川が現れる。今度は巨大なハンマーを肩にかついだ天地さんも一緒だ。



「必殺、山砕きぃいいいい!」



 技名?


 なんかイタい技名を口にしながら天地さんがハンマーを上段からレックスへと振り下ろす。


 ガシ。


 レックスの手がハンマーを掴み、そのまま天地さんごともちあげた。


 天地さんのからだがハンマーからぶら下がる。


 レックスと天地さんの視線が交わされる。


 数秒して、レックスが口を開き、天地さんをその大きな口の中へ持っていく。



「うぉおおおおおおおおおお!?」

「ぎぃいいいいいいいん!」



 レックスの横っ面を皆川が殴りつけた。


 怯み、レックスの手が天地さんのハンマーを離す。



「ぎゃああああああああああああああ!」



 そして天地さんはそのまま自分のハンマーの下敷きになった!


 阿呆だ!



「銀!? っ、この大トカゲが、よくも銀を!」



 正直レックスはあんまり害を加えてないぞ!?



「皆川、ここは互いの大将の仇打ちの為に協力するのだ!」

「ちっ、仕方ねえ。やってやるよ!」



 宇木さんと皆川が頷き合い、レックスへと飛び出した。



「くらえっ!」

「俺達の力を!」



 宇木さんの槍が、皆川の手甲が――、



「「ぶほっ!」」



 互いを吹き飛ばした!


 ――何が起きたのか俺もよく分からない。


 少し考えて、ようやく理解した。


 宇木さんの槍の柄が皆川の顎を叩き上げ、皆川の手甲が宇木さんの顔面を捉えたのである。


 つまり……あいつら、相討ちしやがった。


 協力とかいいながらあいつらやっぱりお互いのこと狙ってやがったぞ!


 なんて腐った連中なんだ……!


 正直俺はよくこいつらが今の今までSWとして生きてこれたのが信じられない。こんな馬鹿共がよく死ななかったな。


 目の前には崩れ落ちた馬鹿共と、レックス。


 なんかレックスが首をかしげてるぞ。


 ……で、その視線が俺をしっかりとマークする。


 あの……そこらへんに三人くらい気絶してるやつらがいるんですけど?


 なんで俺を見てるんですかね?


 レックスの足が一歩、前に出る。俺のいる方向に。


 え……っと。



「どういうことだぁあああああああああああああああ!?」



 再び、俺とレックスの追いかけっこが始まった。


 どうして俺ばっかり追いかけてくるんだよ!?



 や、やばい!


 息が切れてきた。脚の動きが徐々に鈍くなっていく。


 くっ、このままじゃ……!


 俺の脳裏に死がよぎった、その時だ……。



「能村君、無事か」



 ほふく前進で俺の隣に移動する影があった。


 武市さん……!



「無事だったんですね!」

「ああ。なんとかな……しかし、思った以上に厄介な相手だな、レックスは」

「ですね」



 堅いし、素早いし、知能もそれなりにあるっぽい。


 ただ、佳耶やリリシアならレックスなんて一瞬で倒せてしまうんだろうな、という思いが沸いた。


 今は卑屈になってる場合じゃない。



「能村君……私が突撃する。君は支援してくれ」

「武市さん、いけるんですか?」



 さっきあっさりやられていたけど。



「ふ、さっきは少しばかり油断グホァ!」



 ああっ!


 何気なく踏み出されたレックスの足が武市さんを踏みつぶした!


 そのせいでレックスも俺達がここにいることに気付いてしまった。



「や、やべぇ!」



 すぐに起き上がって、レックスの身体の下をくぐって、その巨大の背後に出る。



「た、武市さんは……!」



 武市さんは地面にめりこんで沈黙していた。多分死んじゃいないだろう。



「くっ。なんて使えない人なんだ!」



 思わず本音が口から出てしまった。


 こうなったら……やってやる!



「いくぜ!」



 俺は機関銃を構えると、レックスの背中に弾丸を放った。


 が、やはり弾かれてしまう。


 こうなったら……!


 俺は一度、唾をのんでからレックスに飛びかかった。


 レックスがこっちに手を振って来る。


 佳耶なら、この攻撃をどうやって避けるか。


 自然とその光景がイメージされた。


 俺だって、やってやる!


 足の裏をレックスの手に向ける。このままレックスの手を踏んで、さらに跳ぶんだ――!


 スカッ。


 と、俺の足の裏はレックスの手に触れることなく空を掻いた。



 ……あ。



 そのままレックスの手は俺の腹を思いきり殴りつけた。



「ぐ……っ」



 俺には、佳耶の真似事も出来ないのか……!


 いや、そうじゃない。


 真似事は出来ないかもしれない。


 けれど、出来るように努力してみせなけりゃ、何も始まらないんだ……。


 諦めたままじゃいられない。


 俺は、腹を殴りつけたレックスの手に抱きついた。


 レックスが俺を落とそうと手を振るう。


 だが俺はしがみついたまま、機関銃を構えた。


 狙うのは……目。



「くらえっ!」



 弾丸がレックスの顔面の皮に弾かれる。


 だが、その中に一発が……レックスの目を貫いた。


 悲鳴。


 レックスが身体を大きく揺らした。


 その体の動きに耐えきれず、俺は地面に落ちる。


 っ……今が、チャンス!


 レックスが身もだえている今以外に、俺が勝利を手にするタイミングは有り得ない。


 俺は潰れた目の方に回り込んだ。レックスは俺を見失う。


 その隙に、レックスの膝に近づいた。


 膝の裏はどうやら皮が薄いらしい。


 俺はそこに銃口をくっつけると、トリガーを引いた。


 血が噴き出す。


 レックスは大声をあげながら横に倒れた。


 よし。


 俺はそのままレックスのもう片方の目を潰してしまおうと考えて……レックスの尻尾に脇腹を叩かれて吹きとんだ。



「が……っ」



 吹き飛ばされて――しかし俺は、しっかりと着地してみせた。


 ここで崩れ落ちられるわけねえだろうが!


 痛む身体を無視して、レックスの顔面の前に立つ。


 レックスの大きな瞳が俺を睨みつけた。


 そこに、俺は銃弾を放つ。


 鼓膜が破けるほどの絶叫。


 滅茶苦茶にレックスが首を振るう、鋭い牙の並んだ口を開閉させる。


 ……ここから先は、俺の銃じゃ火力不足だ。


 こつ、と。ふと足になにかが触れた。


 見ると、そこに気絶した武市さんと、その武器である大剣が転がっていた。


 これだ。


 俺は迷うことなくその大剣を手にした。


 他人の武器を使うのはマナー違反だが、今はそんなことを言っている場合じゃない。


 慣れない重みを、全身で支える。


 そしてそれを真っ直ぐに構えると……そのままレックスに向かって突き出す。


 狙いは――口。


 違わずに、大剣の切っ先がレックスの口に潜り込み、咽喉の奥を突き刺した。


 血が溢てくる。


 レックスは激しく暴れていたが……次第にその動きが緩慢になり……止まる。


 ……あ。



「やった、のか……?」



 レックスに歩み寄る。


 完全に生命活動を停止していた。呼吸も、血の脈動も感じられない。



「……能村君」



 声に振り返る。


 いつのまにか復活していた武市さんがそこに立っていた。



「我々の……勝ちだ」

「……」



 その言葉に、実感する。


 俺がレックスを倒したのだ、と。


 そして一つだけ、どうしても言いたいことがあった。


 それは……、



「武市さん達、弱くないですか?」



 っていうか、何の役にもたってないし。


 すると武市さんは苦笑して、



「いやいや、君が強いだけだよ」



 んなわけない。



「これは、君に持っていてほしい」



 あの後、レックスの体内から金珠石を取り出した俺達は勝者となり、敗者である他の二つの組織は解体されることとなった。


 その一部はRSKに組み込まれることになったのだが、それは俺にはあまり関係のないことだ。


 そのまま異界研に帰ってきて、武市さんが金珠石を俺に差し出してきた。


 琥珀に似たその石は、しかし琥珀よりみ黄色が強く、さらにその内側には星空のように無数の金色の煌きが篭められてういる。



「え……」



 掌に簡単に収まってしまうほどの大きさの宝石を手に、俺は思わず呆けた声を出してしまった。


 てっきりこれは佳耶やリリシアにプレゼントされるものと思っていたのだ。



「なんで俺に?」

「まず、レックスを倒したのは君であるということ」



 指を一本、武市さんが立てる。



「そして君の強さを称えるため」



 二本目の指。



「最後に三つ目の理由だが……君が彼女達に近しい人だからだよ。いつか彼女達へこれを贈るべきと君が感じた時に、君の手で二人にこれを渡してくれ」

「武市さん……」



 それは、きっとRSKから見れば、とても重大な役目だ。


 俺がそんなものを任されてしまっていいのだろうか。


 そんな俺の疑問を感じ取ったか、武市さんが豪快に笑う。



「忘れてはいないか? 君はRSKの名誉顧問なのだ。君以外にこの役目に相応しい人間などいるものか!」

「そう、ですか?」

「ああ」



 ……なら。


 金珠石を握り締める。



「その役目、まかされました」

「ああ、任せたぞ、名誉顧問!」



 こうして。


 俺はこの日、RSKの、正真正銘の名誉顧問になった。



「レーさん、俺は、俺たちは……それでもレーさんを……!」

「リリシア様。我々の力が足りぬばかりに、申し訳ありませんっ!」



 なんか聖台嬢から帰ってきたら、食堂で変な人たちがそんな言葉を口にしていた。


 雰囲気がとんでもなく怪しい。

 

 というか、ぶっちゃけ引く。


 一体なんでそこで私やリリシアの名前が出てくるのかはしらないけれど……。



「……かえろ」



 私は何も見なかった。そうすることにした。

ちょっとコメディやってみようかなと思った。

……笑えた? だったら嬉しいけど、まあ無理か。作者の表現力じゃ。


実は、これは感想で送られたアイディアを丸パクりするという暴挙をして生み出した作品です。

まあ、本来ならそういうのは止めたほうがいいんでしょうがね……。

でもいいの! 作者は駄目人間だから! ごめんなさい!


これに懲りずに皆も送ってみてネ。

実行するかどうかは作者の気分と実力と運しだいだけど。


最後駆け足気味になっちゃったなあ……。

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