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3-1

臣護編Ⅱです。

でも主人公はアマリン……になると思う。


「……あ、これいいな」



 咥えていた赤ペンを手に持って、カタログにマルをつける。


 カタログの表紙にはM・(マギ・アース)の文字。


 他にもサイドテーブルにDC(デイジークロー)社やMT(マジシャンズテクノロジー)社、八雲鉄工にテレーズ、RM(リザルトメディシン)社等、SWブランドのカタログが積まれている。


 入院生活中でも、新装備とかのチェックしとかないとね。


 気になる商品にチェックを入れたところで、一旦の満足を得て、私は溜息をついた。


 見上げるのは、白い天井。


 ここは第八異界研の医療棟。一人専用の病室だ。


 ――あの金属生命体の混乱から、そろそろ一月が経つ。


 私を含め、あの事件で生き残った四人はもれなくこの医療棟に入院していた。ここで最新の医療を受けているのだ。


 お陰で、あれだけの重傷が今では完治目前。


 流石は異次元世界の技術を使いまくってるだけの事はあるわよね。


 あ、ちなみに、私とアイ、そして皆見は全治一ヶ月だけど、嶋搗だけは全治二ヶ月。


 まあ……あれだけの怪我だったしね。


 むしろ死んでないのが不思議なレベルだったわよ。うん。


 そんな風に一人で嶋搗の生命力に感心していると、病室のドアがノックされた。



「はーい」



 誰だろ?


 開いたドアの向こうから現れたのは――シシター服に身を包んだ眼鏡の女性。


 通称シスター。医療棟の最高責任者で、マギからの移民でもある。



「どうか、具合は」



 微妙に言葉に変な訛りがあったり、変な使い回しがあるのは仕方のないことだろう。


 なにせ国どころか世界すら違う人間なのだから。日本語を喋れるだけでも凄い。


 私は自慢じゃないけれど英語すら喋れないけれどね。



「ええ、シスターのお陰で絶好調ですよ」

「よろし。君ら四人には相場の二倍もの金を払っていられている。私の全能力にて傷跡一つ残さぬ」



 シスターは魔術師で、治療系の魔術に特化しているらしい。そして彼女に大金を積めば、彼女はかなり丁寧な治療を施してくれる。魔術と科学両面から。


 正直、私は傷の一つや二つ残るのはしょうがないかな、って思っていたんだけど、まさか本気で傷が一つもなくなるとは思わなかった。


 シスター凄すぎる。


 なお、何故シスターがいつもシスター服なのかは誰も知らない。



「もう無事だろうとも、一応念押しで最後の魔術かける」

「お願いします」



 すると、シスターが私の胸の辺りに手を当てた。


 もう片方の手には、三本の棒。


 MT社で販売されている魔力カートリッジだ。なお、嶋搗の持っていた二千万するような馬鹿みたいな代物ではなく、ごくごく一般的なもので単価は四十万前後。しかも再利用可能。


 アースには魔力元素が存在しないので、魔術を使うには自然、カートリッジが必要となるのだ。


 カートリッジが小さく発光したかと思うと、私の身体が緑の光に包まれる。


 治癒魔術だ。


 くすぐったいような感覚が全身を包む。


 そんな時間が一分ほど続いて……、



「よろし、完了」



 魔術の施術が終わる。



「ありがとうございます」

「自信以て断言せる。完治まで僅か三日」



 そっか。あと三日か。


 んー。早く身体動かしたいな。



「あ、そういえばシスター。私に荷物とか届いてませんでした?」

「肯定。大きな荷」

「それです。退院の時に受け取りに行きますね」

「保管しておく」



 言って、シスターは早足で病室を出て言った。次の人の治療に向かったのだろう。


 ……届いたかあ。


 荷物とは他でもない。


 私はあの事件で相棒であったレールガンを失った。その破片は、今は小さなネックレスになって私の首にかかっている。


 届いたのは、新しい相棒だ。


 もちろんレールガン。


 ただし、既にレールガンのシリーズはどこも需要がなくて生産中止になっていたので、M・A社にオーダーメイドで発注した。基本は前のレールガンと同じだけれど、軽量化や反動軽減によるスタンドの排除など、少しばかり魅力的な改良が施されている。


 楽しみだな。


 自然と口元に笑みが浮かんだ。


 一ヶ月もSWしてないと、もう身体がなまって仕方がない。


 嶋搗には悪いけれど、一足先に戻らせてもらうとしますか。


 ……それを言うと、皆見とアイもか。


 皆見は、あの事件で《門》を許可なく使用したとして、ライセンスを一時剥奪。SWの筆記研修を再履修することになっている。なので、私と同時期に退院するのだろうが、SWとして戦線復帰できるのはそのさらに一月後。


 アイも、というのは……これは、最初聞いた時は本気で驚いた。


 彼女は、政務魔術師を辞めた。あの事件の直後に。そしてあろうことか、SWになると言い出したのである。


 魔術師がSWになる。それはつまり、マギを捨ててアースの戸籍を得る……移民になるということだ。


 そうなると、故郷であるマギには易々と戻れなくなってしまう。


 それを覚悟の上で、アイはSWになると言うのだ。


 理由は、一番はお金。


 SWになって、政務魔術師の時よりも稼いで実家への仕送りを増やしたいのだとか。なんでも、妹が今度魔術の学校に入るから、その負担を少しでも軽くしようという考えらしい。


 なんていうか……本当に孝行者よね。


 いい意味で親の顔が見てみたいわ。いつか会えるかしら。


 そしてアイは、SWになる理由をもう一つあげた。


 楽しそうだから、と。


 私達を見ていて少し羨ましかった。アイはそう言った。


 そんな理由で、なんて私達は口が裂けても言えなかった。


 何故か。


 簡単だ。


 私達は、全員が同じように、他人から見れば「そんな」と言われるような理由でSWになった人間だったから。それでアイのことだけを否定できるわけない。


 むしろ私的には大歓迎、かな。


 仲間が増えるのは喜ばしい事よね。


 ……そういうわけで、アイはやはり私と同時期に退院予定だが、その後すぐに皆見と一緒にSWの筆記研修、そしてそれに合格した後は実地研修。皆見はこれは免除されている。


 なので、アイがSWとして本格活動を始めるのは二ヶ月後になる。


 ――のだけれど、なんか嶋搗がコネを使ってアイの実地研修の審査官に私が当たるようにしたらしい。


 あいつ、一体どんなコネを使ったんだろう。というか、どうしてそんなもの持ってるんだろう。


 魔術が使える理由が判明した今でも、未だに謎の多い奴である。


 あ――そういえば嶋搗が魔術を使えると知っているのはあの時いた私達だけ。嶋搗曰く、バレたら嘘の説明考えるのがダルい、だそうだ。


 ま、正直に話したらライセンス剥奪ものだしね。


 閑話休題。


 そういうことで、SWとして本格活動は二ヶ月後だが、また私達と一緒に異次元世界に出られるのは一ヵ月後になる。アイならば私も簡単に審査に満点をつけられるだろう。


 つまり……私以外は皆SWとして活動しだすのが一ヵ月後なのよね。


 微妙につまらない。


 まあ、あの三人以外にもSWの知り合いは沢山いるから一緒に異次元世界に出る分には困らないけれど……それは、仲間じゃない。友達レベルだ。


 やっぱり死地を共にくぐり抜けた仲って、堅いわけよ。


 ――あ。死地と言えばあれね。


 あれから私達の認知度は爆発的に上昇している。


 理由なんて、あの状況から生きて帰ったからに決まっている。


 悪妙名高い金属生命体の蔓延る世界をたった四人で生き抜いたのだから当然と言えば当然。正直私自身もちょっと自慢してもいいかなって思ってるくらい。


 そして認知度が上がると同時に、うんざりすることがあった。


 グループ――SWが作る小さな集団のこと――に入ってくれだとか、SW関連企業から契約SWになってくれだとか……そんなお誘いが一時期嵐のように押し寄せてきたのだ。


 全部断って、今は少し落ち着いているけど。


 つか、私がグループ作るとしたら嶋搗達とだし。企業と契約なんてしたら面倒な仕事とか出来ちゃうし。


 そりゃ企業のバックアップを受けられるのは大きいけれど……ぶっちゃけ、私達の強さになるとそんなの無くてもやっていけるし。金銭的にも問題などない。誘いを受ける理由が皆無なのだ。


 あ、でもアイは少し企業契約について迷ってたかな。契約SWは給料とかもあるから収入が少し上がるわけだし。


 でも、それよりも今はまず自由に活動したいって契約は流していた。


 なかなかアイもSW根性が芽生えだしたな、と思ったわね。それも、私達みたいな自由を好むって方向性。


 いい傾向なのか悪い傾向なのかは、今後のアイ次第。


 ……っと。


 欠伸をする。


 なんか眠くなってきた。


 ……寝よっかな


 シーツを被る。


 そういえば……もうすぐ夏か。


 夏は、なんか楽しい事、あるかしらね。


え、夏?

ごめん適当に書いた。今回はサマーの話じゃないです。


そして、ちょっとずつではあるけれどSWの評価が上がってきて作者のテンションも上がり気味。


これからもよろしくお願いします。


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