表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/179

2-7

「ごめん、二人とも。今日の私はちょっと飛ばすわよ」



 能村姉弟に向けて、私はまずそう告げた。



「……いきなりなんだ?」



 怪訝そうに隼斗が尋ねてくる。



「いや、なんといか……昨日、すごいもの見ちゃって」



 すごいもの、というのは言うまでもない。


 リリーのあの斬撃のことだ。



「私より強い人なんて、初めて見た」



 完膚なきまでの敗北感。


 一夜明けて、私はそれを感じた。


 というよりも……嫉妬、なのかもしれない。


 私もああいうふうに強くなりたい。


 そう思った。



「佳耶よりも強い人……? 一体どこの誰かしら?」



 私は二人に昨日の事を話した。


 ただし、キスとかは伏せて。あんなこと話せるわけがない。


 話を聞き終えた雀芽が、小さく頷いた。



「M・A社の第一位……なるほどね。それは化け物だわ」

「つか……どんだけ人間離れしてんだよ、そいつ。チートじゃねえか」



 二人はどこか呆れたような顔をする。



「それで、佳耶は影響されて、ちょっと頑張りたくなっちゃったのね?」

「うん。二人には悪いけど、今日は私の独壇場で行く予定」

「そりゃいいけど……無茶すんなよ?」

「あんたに心配されるまでもないわ」

「そうですかい」



 ――で。


 やりましたとも。


 ええ。



 巨大な亀の首に槍を突き刺す。そのまま槍をしならせて、反動で空高く舞い上がった。


 槍を分解、再構築。巨大な斧を作り出す。


 そしてそのまま、落下の勢いをのせて亀の甲羅に思いきり斧を叩きつける。鈍い感触と音がして、甲羅が砕ける。


 甲高い悲鳴をあげる亀。


 私は割れた甲羅の中に腕を突っ込む。そして亀の体内で散弾を作成、発射。


 一際大きな絶叫とともに、亀の身体が崩れ落ちる。


 すかさず私が亀から飛び降りると、すれ違いざまに真上から大きな影が墜ちてきた。


 キングコング、という映画を彷彿とさせる。巨大なゴリラによく似た毛むくじゃらの生き物。


 亀から飛び降りた私は、空中で二本のナイフをゴーストで作り、それをゴリラの双眸へと投げつけた。


 真っ黒の瞳に、紅のナイフが飲みこまれる。


 その激痛にゴリラが両腕を振り回す。私はその腕を飛んで回避すると、その腕に着地、そこから駆けだした。


 細長い剣を生み出す。それを、毛に覆われた腕に突き立てた。そのまま走り続ける。


 剣を通して肉を切り裂く感触。


 腕を一直線に斬り、さらに私は肩を越え、咽喉を斬り裂いた。厖大な量の血が溢れだす。


 その血の雨をゴーストで薄い笠を作って防ぐ。


 ゴリラの身体が倒れ、私は空中に投げ出された。


 そこを狙って飛び込んできたのが、私なんて簡単に飲みこめる大きさの口を開けた大蛇。


 空中で身動きの取れない私はそのまま――蛇の口に飛び込んだ。


 視界が暗くなる。


 ゴーストを操作する。


 生みだすのは……巨大な突撃槍。ただし、刀身には螺旋が刻まれ、高速回転している。


 暗闇に槍を突き立て……そのままただひたすらに押し込む。


 貫通。


 私は蛇の後頭部に穴をあけて、そこから外に抜け出した。


 と、衝撃。


 身体が掴まれていた。


 その手の正体は、鳥。ただし、やはりこれも大きさは半端ではない。


 鳥の手が、私の骨を砕かんと強く握られる。



「っ……ぁあああああ!」



 ゴーストで筋力を強化、無理矢理にその手を振りほどく。


 私はそのまま、長い鎖を造りだす。その先端には爪のついた杭。


 思いきり投擲。杭が鳥の胴に突き刺さる。


 一気に鎖をよじ登った。


 空中で鳥が暴れて、振り落とされそうになる。羽を掴んで、それに耐える。


 そうしながら、鎖をチェーンソーに変える。


 翼の根元に、思いきりチェーンソーを突き刺す。


 鳥の苦悶。


 翼をチェーンソーで切断した。片翼の鳥は、そのまま地面へと墜ちていく。


 肩甲骨の辺りから、赤の翼を広げる。鳥のように動かせはしないが、グライダーにして地面に下りる。


 すると、足の裏に振動を感じた。


 咄嗟に後ろに跳ぶ。地面から巨大な針が突き出た。


 さらに連続して二本、三本と突き出てくる針を回避して、思いきり後方に跳んだ。


 地面がひび割れる。


 時の底から現れたのは……ハリネズミ?


 他の生き物にも劣らない巨体のハリネズミだ。ただし普通のハリネズミとは違い、針が背中だけではなく、全身のいたるところに生えている。


 その針は、見ただけでその硬質性が窺えた。


 ……これ、近接戦はさすがに危ないわよね。


 いくら私でもあの針全てをかいくぐる自信はない。


 ――リリーのあの攻撃なら、きっとこんな針、ものでもないんだろうな……。


 やって、みようかな。


 身体を低く構える。


 作るのは、刀。昨日、リリーが持っていたものと同じ形の刀。


 刀身に、ゴーストを圧縮していく。赤の霧が刀へと飲みこまれていく。


 ハリネズミがこちらに近づいてくる。意外と素早い。


 集中を乱すな。


 圧縮、圧縮、圧縮――。


 ――……今っ!



「――――天地悉く――――」



 刀を振るう。


 リリーの動きをトレースして。


 一閃――!



「――――斬り裂け――――」



 刀の刀身が……爆ぜた。


 圧縮されたゴーストが一気に爆散。しかし、その方向性は一方向。


 高速度で放たれたゴーストの霧が、真横からハリネズミを打つ!



「……っ!」



 けど……駄目だ。


 途中まではよかった。


 だがゴーストの斬撃は空中で威力を減衰させ、ハリネズミに届いた時には既にその巨体を両断するだけの力を蓄えてはいなかった。


 かろうじて、ハリネズミの身体の横に生えていた針が砕ける。バランスを崩したハリネズミが足を止めた。


 その隙に、もう一度私は刀を作り、構える。


 もう一度――今度こそ!



「なんだありゃ……」



 呆然と呟く。


 佳耶の動きは、なんというか……滅茶苦茶だった。


 強いとは分かっていたが、まさかここまでだったなんて……。


 これまで俺達と一緒に行動していた時の佳耶がどれほど力をセーブしていたのかがよく分かった。


 悔しくなる。


 俺達は、佳耶の足手まといでしかなかったのだろうか。



「やれやれ、ね」



 雀芽がぽつりと零す。



「自信がなくなると思わない?」

「完膚なきまでになくなったよ」



 苦笑。



「ま、佳耶に追いつこうと言うのが間違いなんでしょうね。言っちゃなんだけど、私達と佳耶では格が違い過ぎるもの」



 ってもなあ……なんか釈然としない。



「大丈夫よ、そんなに難しく考えなくても。私達は、私達なりに佳耶を助ければいいのだから」



 俺達なりに、か。



「よく分からん」

「そこは自分でよーく考えなさい」



 ……へいへい。


 まあ、それは今は置いておくかな。



「それより、どうするよ?」



 雀芽はいつもと違って、俺と同じように空のサックを背負っている。


 今回は佳耶が暴れるというので、なら俺達二人は収集に専念しよう、ということになったのだが……あの戦闘の中で剥ぎ取りとか出来るわけねえ。



「とりあえず、終わるまで待ちましょう」

「いつ終わんだろうな。なんか、次から次に沸いてくるけど」



 つうかなんだこの世界。岩場が多いだけの荒野なのに、一体どこからこんな巨大な生き物が出てくるんだよ。


 今はちょうど、佳耶が鳥を落としてグライダーで降りてくるところだった。


 で、地面からハリネズミが現れる。



「俺だったら最初の亀で死んでたな」

「私もよ」



 仕方ねえよなあ。


 だって俺達の武器って、機関銃と剣だぜ?


 たかが、普通の武器だ。


 人殺しには十分でも、怪物殺しとしちゃ三等品だ。


 あんな怪物相手じゃ役に立たねえよ。


 かといってそれ以上の武器を扱おうにも、俺と雀芽にゃそんな才能はない。


 努力じゃ越えられない壁があるっていうのも、この歳になればだいたい分かって来る。


 なんつうか……ほんと、桁が違うよなあ。


 その時、佳耶がなにか身構えた。



「うん? なんだあの構え」

「初めてみるわね……刀?」



 佳耶が構えているのは刀。


 その刀にゴーストの霧が集まっていく。


 何をするつもりなんだ……?


 直後――佳耶が刀を抜き放つ。


 ハリネズミの身体が、巨大な槌で殴られたかのように大きくよろめく。



「……は?」



 なんだ、ありゃ。


 今、佳耶はなにをした?


 ただ、一つだけ分かることはあった。



「すげぇ……」



 それなりに長い付き合いだ。


 今の攻撃が、これまでの佳耶のどんな攻撃よりも強力であるのは見て取れた。





「――確かに、凄いわね」





 不意に、声。



「っ、誰だ!?」



 振り返りざまに、傍らを誰かが通り過ぎた。


 気配が――感じられない!?



「人の真似だけれど、真似が出来るだけでも十分。なるほど、ゴーストというのは、随分と便利なものなのね」

「あなた、佳耶のことを知っているの?」

「ええ」



 雀芽の言葉に、その女は背中を向けたまま答えた。



「R・M社の第三位。素性を調べてみて、驚いたわ。まさかそんなに強い子だったなんて……」



 ぞくりとするほどに、綺麗だった。


 何の理由もなしに、直感する。



「あんた……佳耶の言っていた……」

「話は聞いているようね。リリシア、と呼んでくれていいわ。リリーは駄目よ。それは、佳耶だから許してあげたのだから」



 そう言ってそいつ――リリシアは無造作に佳耶の方へと一歩を踏み出した。


 止める暇はなかった。


 次の瞬間、リリシアは佳耶の後ろに立っていた。



「佳耶。ただ圧縮するだけでは駄目。速ければ、鋭ければいいという考えでも、いけないわ」



 唐突に、その囁きが聞こえた。



「え……?」



 リリー?



「今は前を見て」

「あ、うん」



 言われて、構えを直す。



「ゆっくりでいいわ……丁寧に、力を押し留めて」



 言われたとおりに、刀身をゆっくりと圧縮していく。



「そして、イメージするの。力の爆発ではないわ……ただの解放ではなく、圧縮の延長線上。力を、放った上で刃の形に圧縮する。解放と圧縮の二律背反……あなたには、それが出来る?」



 まるで、それは質問ではなかった。


 確認だ。


 私がそれを出来ると信じている。そんな声。



「……ん」



 大丈夫。


 私なら、出来る。


 刀に限界まで力を込めた。


 あとは……放つのみ!



「さあ、行きましょう。心を寂静に、刃を雄々しく」



 心を寂静に……。


 刃を雄々しく……。


 万象全てに対して、この一撃を抜き放つ!



「「――――天地悉く――――」」



 私とリリーの声が重なる。


 深紅の刃が空を駆ける。


 刀身は溶けるように霧へと姿を変え、そのまま爆発するかのように威力を開放させる。


 だけど――それを私は抑えつけた。


 爆発を、一つの型に押し込める。


 それは巨大な刃。天地の悉くに届く、巨大な刃。


 私の制御を離れて暴走しようとするゴーストの首根っこを掴んで従わせる感覚。


 私の、根性舐めるな――!


 ゴーストの霧が、おぼろげながら一つの形をとる。


 行ける!


 そして巨大な刃はそのまま、ハリネズミの胴体に触れ……、



「「――――切り裂け――――」」



 ハリネズミはそのまま、倒れた。


 だが……その身体は両断されていない。


 私の刃はハリネズミの身体を、半分ほどまで切断したが、そこで威力は霧散してしまった。


 ……あー。なんていうか、こう言いたい気分。



「ちくしょう」



 と、首に優しい腕が巻かれた。



「駄目よ、佳耶。そんな言葉遣いをしては。大丈夫、そんなに悔しがらなくても。これから貴方はもっと強くなれる」



 ……って、あんた何くっついてるの!?


 リリーの腕を解いて向き直る。



「……そういえば、リリーがどうしてここに?」

「決まっているでしょう。追いかけてきたのよ。佳耶に会いたかったから」

「……」



 決まってるんだ。


 いやいや。


 そのストーカー行為をさも当然のように言い放たないでほしい。


 そして何で私は「会いたかった」の下りで微妙に嬉しくなっちゃったんだろう。意味不明。



「リリーって、暇人なの?」

「一応、高校には通っているわ。(せい)(だい)(じょう)女子高等学校、という学校なのだけれど」



 ……聖台嬢女子。


 …………。


 ………………めっちゃお嬢様学校やんけ!



「そ、そんなとこ通ってるのにSWしてるの? 勉強とか、風評とか気にしなくていいの?」



 あそこ、偏差値凄い高かったって記憶があるんだけれど……リリーはこんなことしてて差し支えないのだろうか。



「ええ。勉強は授業を聞いていれば問題はないし、風評なんて、それこそSWにとっては気にするものでもないと思うけれど?」



 授業聞いてれば問題ないって……分かります、リリーは頭がいいんですね。羨ましすぎる。


 風評については、そうね。聞くまでもなかった。私だってそんなのあんまり気にしてないし。


 SWは基本的に自分がよければあとはどうでもいい、って人間ばっかりだ。



「まあ、そんな下らないことはいいでしょう。佳耶、今日は少し話したいことがあって来たの」



 話したいこと?



「そう……ねえ、佳耶。貴方は私の事を、どう思っている?」

「……え」



 あの……リリーさん?


 私達は出会って間もないわけでして、それでどう思うもなにもないと思うのですが?


 あと、その質問にはなにか嫌な予感がします。



「……私はね、佳耶」



 気付けば、リリーの瞳が目の前にあった。



「貴方のことを愛しているわ」



 嫌な予感的中したー!?


 う、うわっ、うわぁああああ!?


 愛の告白ぅ!?


 っていうか人生初の告白が同性からってどうなんだ私!


 なにが起きてるんだぁあああああああああ!?



「佳耶。貴方の隣にいたいの。それは、駄目かしら?」



 真剣な目で、リリーが私に言う。



「と、隣って……それどういう意味?」

「今は、SWとして、仲間や友人としてでも構わない……」



 気になる。その「今は」って部分が非常に気になるよ。


 その瞳を真正面から見ることが出来ずに、私は視線をさまよわせた。



「あ……いや……あの、ね?」



 どどど、どうしよう?


 とにかく、何か言い訳、言い訳を!



「私の隣と言いましても、あれですよ。私はいつも能村姉弟と行動しているわけで、残念ながらあの二人の許可がないとリリーとは一緒にいれないかなー、なんて」

「そう……それって、あの二人のことよね?」



 リリーが振り返る。


 そこに――能村姉弟がいた。



「……佳耶。そこで私達に振らないでほしいわ」

「あー。なんつうか、お前も大変、なんだな?」



 どこか気まずそうにしている二人。


 え……見られた?


 もしかして今の全部見られた?


 告白されたとこも!?


 は、恥ずかしい。死ぬほど恥ずい!


 そして隼斗の若干憐みのこもった視線がウザい!



「ねえ、貴方達」



 リリーが二人に声をかける。



「私を仲間に入れてはくれない?」

「どうして、私達の仲間になりたいの?」



 応えたのは雀芽。



「佳耶を愛しているからよ」



 そんな堂々と言い切らないで。私が恥ずかしい!



「……と言ってもね。私達が貴方を仲間に入れるメリットがあるの? それがない限り、私達は貴方を仲間にしようとは思えないわ」



 ナイス雀芽!


 その調子でリリーを言い負かすのよ!



「メリット……そうね、」



 いきなりリリーが私達に背を向けた。そして、腰を低く構える。手は刀の柄に。


 ……え?


 一体、何を……?


 そう考えたのも束の間。


 あの威圧感が私達を襲った。


 一度経験のある私はともかく、初めてこの威圧感を感じた能村姉弟は、今にも膝をつきそうな様子だった。


 リリーの身体に力が籠もる。


 刀が鞘から抜かれた。



「――――天地悉く――――」



 キィン、という音。


 そして、



「――――切り裂け――――」



 空間が切れた。


 ――は?


 いや、自分でもなにを言っているのか分からない。


 けれど、本当にそうなのだ。


 私達の視線の先の景色が、ズレる。まるで切断されたかのように。


 でも、それは間違いだった。


 景色が歪む。


 歪んだ中に突如として現れたのは――巨大な、本当にさっき私が倒した生物達が子供にみえるほどに巨大な化け物。


 六本の足と蟷螂のような巨大な鎌の腕が四本、金属の光沢を持った甲殻に覆われた身体と、五つの瞳。背には不気味な羽が生えている。


 そしてそいつの胴体は真ん中あたりで、ズレでいた。


 理解する。


 切れたのは、空間ではない。


 切れたのは、景色に同化して姿を消していたこの怪物だ!


 リリーはそれを斬ったのだ!


 怪物の身体がついに耐えきれなくなったように崩れ、そして切断面から厖大な量の血液が噴き出す。


 リリーが刀を鞘に収めた。


 ……ぞっとする。


 もしもリリーはあれを倒していなかったら、今頃私達はどうなっていただろう?


 無事で済んだ、と楽観視するにはあまりにも状況が悪すぎた。



「申し訳ないのだけれど、私を仲間に入れてくれて貴方達が得るメリットは、たったの一つしか思いつかないわ」



 リリーが私達を振り返る。



「この程度の力を持つ私……で、どうかしら?」



 ……ああ、これは駄目だ。


 そう観念した。



 私達は佳耶とリリシアが倒した生物の身体から価値のありそうな部位――例えば最後にリリシアの倒した怪物の甲殻など――をはぎ取ってサックに詰め込んでいた。


 というか、死体の質量が大きすぎて、どれをはぎ取ればいいのかよく分からない。そして、剥ぎ取れなかったところが非常にもったいない。


 ……そろそろ、あの案を実行に移すべきなのかもしれない。



「いーのかよ、あいつ仲間に入れちまって」

「仕方ないでしょ。あんな力を見せつけられちゃ」



 隼斗の質問にため息交じりに答える。


 あの一撃……今思ってもとんでもなかった。


 あれだけの力を持つリリシアが仲間になってくれるというのなら、それを断る理由が私にはなかった。


 何故なら、リリシアを仲間にすれば私達の生存確率は劇的に上昇するからだ。


 佳耶には悪いけれど、私はそのメリットを捨てることはできない。



「確かに凄かったけどよ……」

「隼斗は不満なの?」

「不満、つうか……佳耶が心配なんだよな。主に貞操的な意味で」



 ……それは、私も多少は不安に感じている。


 なんというか、彼女は佳耶のことを愛しているらしいし。


 もちろんそれは恋愛的な意味で、だろう。そこは疑いようもない。


 でも、多分大丈夫。



「彼女は佳耶のことを無理矢理に襲ったりはしないわよ」



 あれは本当に佳耶のことを好き、って眼だった。


 同じ女だからよく分かる。


 佳耶の望まないことを、彼女はきっとしない。



「そうかねえ……」

「まあ、佳耶も強いもの。いざって時は自分の身を守ることくらいは出来るでしょ」

「それもそうか……」

「それにね、隼斗」



 私は確信を込めて言う。



「佳耶はきっと、彼女との触れあいの中で成長すると思うの」

「……俺にゃ、お前の考えが分からんね」



 浅い男ねえ。


 モテないわよ?



「あともう一つ」

「うん?」

「彼女を仲間に入れたら、きっと、もっと面白くなるわ」



 すると、隼斗がげんなりとした顔をした。



「――……俺にゃ、お前の考えが分からんね」



 浅い男ねえ。



あらすじを書き換えて見た。

そこで慌ててGL要素アリって警告つけました。そういや佳耶編はGLアリなんだった……まあ生々しい表現を入れる予定はないですけど。

途中まで読んじゃって「自分GLとかありえないんですけど」って人がいたら申し訳ないです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ