7-15
なに、このSWの人数……。
いくらなんでも、多すぎない?
それに、明らかに日本人じゃないのが沢山いるし……。
これって、もしかして……世界中から、集まってきてるの?
「天利……」
隣に立つ天利を見る。
「……さて」
天利は、周りを見回して、そして事もなげに蛇を睨みつけた。
「背中の心配はしなくてよさそうだし、さっさと蛇を倒しましょうか」
その時。
「……うん、そうだね」
竜達を、無数の爆発が襲った。
SW達から放たれた砲火だ。
一発一発は、決して竜にダメージを入れられるほどの威力を持ってはいない。
しかしそれが無数に合わさることで……竜の意識が、私達から外れる。
咆哮が、辺りのSWに向けて放たれた。
その空気の震えを感じながら……私と天利は地面を蹴っていた。
行く手には、首を片方斃された、蛇。
その狂気に染まった瞳が私達を見据える。
それに恐れることなく……私は槍を作り出すと、それを一直線に突き放った。
紅蓮の閃光。
それは……蛇を頭の根元を狙ったものの、その鱗に弾かれてしまう。
だったら……!
一歩後ろに下がる。
その私の僅か横を抜けて、レールガンの弾丸が蛇の鱗を数枚打ち砕いた。
この砕けたところを狙えばいい。
槍で、再び蛇を突く。
がきん、と。
また、弾かれる。
見れば、僅かだが蛇の皮膚から血が滲んでいた。
ほんとうに僅かに、だ。
鱗がなくても、この強度……!
とんでもない。
槍を分解して、短めの剣を二本、両手に握り締める。
一撃で駄目なら、連撃で仕留めてやればいい。
その考えのもとに、いくつもの斬撃を放つ。
それは徐々に蛇の皮膚を裂いて……でもそれでは、あまりにとろい。
蛇がその尾を私に叩きつけて来た。
それを二本の剣を交差させることで防御して、下がる。
入れ換わり、天利が前に出た。
私が少しだけ傷を抉ったばしょに、レールガンの銃身が叩き込まれる。
そしてその接触点に、激しい電火が散る。
蛇はそれに微かに体を震わせ……それ以上のダメージは見られない。
「っ……たかが爬虫類の癖に……!」
悔しげに天利が呟いて、レールガンのトリガーを引きながら後ろに跳びずさる。
雷光は蛇の皮膚を若干焦がすだけ。
「っ、ああ、もう!」
いい加減、私も限界になってきた。
この蛇、いい加減斃されろ!
想いながら、ゴーストを刀に作り替える。
そして……その刃に赤い霧を収束させた。
ブチ抜いてやる!
刺突の構えで、刀を握り締める。
そして……突っ込んだ。
蛇の四本の尾が振るわれる。
それをステップで避けて、肉薄。
鱗の剥げたところに、刀を突き立てた。
剣尖が蛇の皮膚に浅く刺さる。
「い、けぇええええええええええええええええええええええええええ!」
叫びと共に、刀身からゴーストが滲み出し、そして嵐のように暴れ狂う。
ゆっくりと、刃は蛇の皮膚の下に潜り込んでいく。
けれど……勢いは、徐々に衰えていく。
このままじゃ……結局攻撃が通らないままで終わってしまう。
そんなの……!
歯噛みした、刹那のこと。
「麻述、どきなさい!」
その台詞に。
私は右に跳んでいた。
刀は手放している。
まだ、赤い刀身は蛇の皮膚に突き立ったまま。
その刀の柄尻で……雷の爆発。
レールガンが、命中したのだ。
柄尻なんて小さい的なのに、それは正確に刀の芯をとらえていた。
故に、その弾丸の威力が全て、刀に乗る。
ぶしゅ、と。
刀が、半ばまで蛇の皮膚に刺さる。
蛇が悲鳴を上げた。
「まだ、まだぁっ!」
そこに、さらに天利は追撃をしかけた。
レールガンの銃身で、刀の柄を叩く。
衝撃で、さらに刀は深くまで突き刺さった。
そして――私も。
「これで、決まりっ!」
柄を叩いたレールガンを、さらに蹴る。
そうして、今度こそ刀身が……根元まで蛇の皮膚に沈んだ。
蛇がのたうちまわる。
尾が激しく地面を打った。
「ブッ飛べ!」
最後に。
蛇の口から、勢いよく吹き出すものがあった。
赤い霞と、それに混じる緑色の蛇の血だ。
蛇の体内で、刀身に圧縮してあったゴーストを開放したのだ。それによって、蛇の体は内部から破壊される。
蛇の残されたもう一つの頭が、地面に崩れる。
「……うし」
「やったね」
天利とハイタッチ。
うざかったなあ。
苦笑し、振り返る。
その瞬間。
目の前に巨大な竜の頭が落ちて来た。
「……ぉ?」
見れば、その竜はすでに息絶えているらしい。
その竜の死骸の向こうでは、残り三匹と多数のSWの戦い。
竜達は、多数いるSWを相手に、徐々にその体を削られて行っている。
「……数の暴力だなあ」
「そうね」
天利と一緒に笑って、軽く深呼吸。
「よし」
自分で自分の頬を叩く。
「行こうか。あれ、もともと私達の獲物だし。全部横取りされるのはしゃくだよ」
「了解。なら、さっさとぶっ潰して、異界研に戻りましょ。流石に……ちょっと倒れそうだし」
お互いの状況を確認する。
天利は、まあ普通に一回心臓止まったし。いろんなところの骨にひびとか入ってたり、折れてたりもするだろう。出血も地味に多いし。
そして私は……うん。
言うまでもないかなあ。
まず骨。
ぐしゃぐしゃ。
筋肉。
ぐしゃぐしゃ。
内臓。
ぐしゃぐしゃ――あ、なんかもう自分で考えておいてなんだけど、泣きたい。
もうこれ絶対しばらくは入院生活だよ。
うぅ……お母さんとお父さんに、心配かけるなあ。
ちゃんと謝らないと。
そんなことを考えていると。
不意に。
衝撃。
視界が暗転した。
超展開再び、な感じですかねえ。