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2-1

調子乗ってやっちまった。どうやって展開させてこう?

更新は遅くなると思います。土下座で堪忍してください。


 小さいころから、私の身体は最悪だった。


 自分一人では歩くことも出来ず、自分一人では食べ物一つ口に運ぶことも出来ない。そんな、未完成で、不完全な身体。


 早産が私のその障害の原因らしい。そのことで、何度母に恨み事を呟いたかは覚えていない。母はその度に私から眼を逸らして、拳を堅く膝の上で握り締めた。


 腹を痛めて生んだ子供がこんなので、しかも性格がねじ曲がってるともなれば、そうよね。そりゃ、悔しくもなる。


 なんて、当時の私は思っていた。


 ある日のことだ。


 久しぶりに母だけではなく仕事に忙しい――そりゃ私の入院費もばかにならないし、仕事を頑張って稼がなくちゃ生活すらままならないのだろう――父までもが病室に来ていた。


 聞かされるのは、外のこと。なんでもない日常のこと。微笑ましい出来ごとのこと。


 私がこれまでに数えるほどしか、それも機械と他人に支えられることでしか出れなかった外。空があって、土があって、元気に走り回る子供がいる。そんな、当り前の世界。


 でも、それは私にとって当り前なんかじゃない。


 どうして?


 どうして私はこんな身体に生まれちゃったの?


 どうしてあの人達は、外の話なんかが私にとって苦痛でしかないって分かってくれないの?


 どうして、どうして、どうして。そんな問いは、いくらでも沸いてきて、結局答えは一つ。


 私が壊れてるから。


 だから、私は苦しいんだ。私の事を、誰も理解してくれないんだ。


 皆は完成作で、わたしは失敗作だから。なにもかもが違う。なら、理解されないのだって当然で、私だけが苦しいのも当然で……。


 そんな独りよがりなことを考えていると、口は自然とその言葉を紡いでいた。


 ――私なんて、さっさと殺してくれればいいのに。


 簡単なことだ。私が受けている治療の一切合切、透析から投薬までを中断すれば、私の命はあっというまに燃え尽きる。


 自嘲気味の呟きに一番に反応したのは……母だった。


 母は座っていた丸椅子から凄い勢いで立ち上がると、私の頬を張った。


 その時の自分の顔は、さぞ変てこなものだったんじゃないかな、と後になって思う。


 愕然と困惑。


 今まで私の理不尽な叱責に拳を握って耐えてきた母が、どんな人にも頭の低い気弱な母が、顔を赤くして私の頬を引っ叩いた。


 痛い、という感覚は本当に久しぶりだった。注射針が皮膚を貫く痛みも、内臓が捻じれたような激しい痛みも、あるいは自分の身体が憎くて唇を噛み締める痛みも、もうずっと前に慣れた。


 けれど頬を叩かれた痛みは、初めて。


 私の頬に打ちつけた手を胸元に寄せて、母は沈黙のままに私を見つめた。父はその後ろで静かに佇んでいる。


 とうとう私に何かを言われることに耐えられなくなった?


 とうとう私を殺してやりたいと思った?


 とうとう私なんて生まなければよかったと後悔した?


 いくらでも罵倒の言葉は思いついて――けれど母の瞳の前に、それらの言葉が私の口から出ることはなかった。


 母の性格からはとても想像できない強い眼光。


 怯んだ私は、ベッドのシーツを掴んでいた。


 そんな背筋に嫌な汗が伝う静寂が、どれほど続いたろうか。


 母が、不意に口を開いた。


 ごめん、と。


 ごめんなさい、と。


 ちゃんと生んであげられないでごめんなさい、と。


 今度こそ私は、どうしていいのか分からなくなった。


 なに、これ。


 これは違う。こんな言葉は、違う。


 だって私は壊れていて、誰にも理解されなくて……母に毎日のように病院に足を運ばせて、父を入院費の為に働かせて、そんな二人に恨みをぶつけて……そんな私が、どうして謝られているのか、まったく理解できなかった。


 ただただ私に謝る母の代わりに、父が言う。


 お前が俺達の娘だから生きて欲しい。生きて、どうにか幸せになってくれないか?


 ……ああ。そうか。


 理解できていなかったのは、私だったんだ。ううん、理解しようとしなかった。


 両親は、私のことをこんなにも愛していてくれたのか。


 だから私の恨み言に一言も言い返しもせず、私の為に働き、私にいろんな話を聞かせてくれたんだ。


 考えてみれば、当り前の答え。


 そっか……。


 私は、こんなにも……。


 ごめん、なさい。


 情けないことに、私の口から出た謝罪は、あまりにも小さかった。けれどこれが、謝るということを知らなかった私の精一杯。


 両親は、何も言わない。


 ただそのまま面会終了まで誰も一言もしゃべらず、指一本動かさず、そこにいて……それで別れ際に一言ずつだけ。


 また明日。


 次に来れるのは来週になる。


 ……うん。


 病室のドアが閉じて、私はベッドに崩れ落ちた。


 なんてことだ。


 こんなことが、あるのか。


 自分がこうも愛されてるなんて現実が、あったのか。


 口元が歪んだ。


 笑うように……絶望する。


 だって、そうでしょ?


 嬉しい。嬉しいよ。私が愛されていたなんて、すごく、本当にすごく嬉しい。


 だけど、駄目だ。なにもかもが駄目だ。


 私は応えられない。


 幸せになって欲しい、と父は私に言った。母もきっとそう思っていてくれている。


 だけど、無理だよ。


 こんな身体で、幸せになんてなれないよ。


 二人の期待に、私は応えられないんだよ。


 そんな、どうしようもない絶望。


 生まれて初めて感じた愛情に……私はどうしても応えることが出来ない。それは、どうしようもなくもどかしくて、内臓を掻き毟るような痛みでさえも拭うことのできない苦悶。


 夜を通して、私は声を押し殺して肩を震わせた。


 明日、またいつも通りに、でも少しだけいつもより優しく、母を迎える為に。


 申し訳なさに嗚咽するのは、夜だけでいい。


 ――その数日後のことだった。


 異世界で発見された有機液体金属と呼ばれる物質。それによって人体に与えられる治療効果の実験の被検体にならないかという打診を受けたのは。


 両親は反対した。


 私はそれを望んだ。


 危険だ、と両親は言った。保障はない、と打診してきた研究者すらもが言った。


 けれど私は、これで両親の期待にこたえられるのではないかと思った。


 そして……。


 私はこれから一生忘れることがないだろう。


 初めて自分で立って見上げた青空を。







 二年後、高校の入学式の前日。私は両親に打ち明ける。

 異次元世界探査者――ストレイ・ワーカーになりたい、と。



というわけで……ごめん作者自身何がしたいのか分からないんだ(遠い眼


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