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間章 臣護のいない日・上

 携帯電話のメールボックスに新着メールが四つ届いていることに気付いた。


 一通目。


 差出人はヴェスカーさん。


 内容は……、



『是非今度リリシアと見合いを――』



 削除。何度も言うが俺はリリーとどうこうなるつもりは欠片もない。


 二通目。


 差出人は陽一さん。


 内容は……、



『今度シアとウェディングドレスとか見に行くんだが、一緒に来ないか?』



 削除。なんで俺が叔父とその結婚相手の結婚式の衣装選びに付き合わなくちゃならないんだ。


 三通目。


 差出人は皆見。


 内容は……、



『一緒にナン――』



 削除。内容なんて見るまでもなかったな。


 四通目。


 差出人はアイ。


 内容は……、



『明日、悠希暇みたいだからデートにでも誘ってあげたら?』



 削除。どうして俺と天利がわざわざデートなどしなくてはならないんだ。


 ――ふぅ。


 なんだろうな。


 最近、俺の身の回りはこんなのばっかりだ。


 どいつもこいつも、桃色な頭しやがって……しかも性質の悪いことに、何らかの形でそれに俺を巻き込もうとする。


 わけがわからん。どうして俺を……。


 深い溜息を吐きだす。


 ……なんだか、疲れたな。


 はたと気付く。


 そういえば最近、休んでいないな。


 時間があれば、ほとんどその時間を使って異次元世界に出ている。


 ワーカーホリック、ってやつか?


 まさか自分がそんな状態になっているとは思わなかった。


 少し、休むか。


 そうだな。


 旅行でもいくか。


 もちろん一人で。


 一人は気楽でいい。


 そうと決まれば……。


 どこに行くか、ネットでいいところないか調べるかな。


 出来れば……のどかなところがいい。


 緑が多くて、静かで……。


 そんなところにいって、ぼんやりしよう。



「……んー」



 携帯電話を耳にあてながら、首を傾げる。



「どうかしたの、悠希?」

「ああ……アイ」



 風呂から出て来たアイが声をかけてくる。



「それが、明日暇だから嶋搗を誘ってどこかでかけようかと思ったんだけれど……電話出ないのよね」

「そうなの? ……なんだ。私がわざわざ言うまでもなかったんだ」

「え、なにか言った?」



 なんだかアイがぼそりとなにか呟いた気がした。



「ううん。なんでもないよ。電話に出ないなら。メールにしたら?」

「メールねえ……実はもう何通か送った後なのよ」



 もちろん、メールの方にも反応はなし。



「どうしたのかしら」

「うーん」



 アイが部屋から自分の携帯電話を持ってきて、嶋搗に電話をかける。



「……ほんとだ。出ないね」



 やっぱり、アイも駄目、か。


 ……なんかおかしいわね。


 あいつ、面倒くさがってメールに返信しないことはあるけれど、基本的に電話には出るのに……。


 なにか、あったのかしら?



「とりあえず、明日直接嶋搗のところに行ってみるわ」

「私は明日はM・T社の技術部に呼び出されてるから付き合えないんだ。ごめんね」

「気にしないで」



 あそこに行くってことは……アイ、また新しい武器の試験運用でもするのかしらね。



「まあ、それはそれで、もういいわ。私も風呂に入ろうかしらね」

「そっか。じゃ、私は先に寝ちゃうね。おやすみ」

「ええ。おやすみなさい」



 エレベーターで嶋搗が住んでいる部屋がある階に到着する。


 と……丁度嶋搗の部屋のドアが開くところだった。



「嶋搗」



 声をかけると、ドアの向こうから顔が覗く。


 あれ?



「……誰だ?」



 その顔に、見覚えはなかった。


 むしろそっちこそ誰だ、という感じ。



「えっと……」

「臣護の知り合いか?」

「あ、はい。天利悠希といいます。えっと……貴方は?」

「ああ。俺はあいつの叔父の小暮陽一。よろしく」



 なんとなく、さっぱりした感じの人だった。



「……へえ」



 小暮さんが、私をまじまじと見る。



「なんですか?」

「いや、臣護もすみに置いておけないな、と思っただけさ」



 どういう意味だろう?



「んで、天利さんは臣護となにか約束でもしてたのか?」

「いえ。昨日から連絡が取れないので、少し様子を見に」

「あ、そっちもその口か」

「え?」



 そっちも、ってことは……。



「俺もな、ちょっと臣護と連絡がつかなくて心配になって来てみたんだよ。ほら、あいつよく無茶とかするだろ? だから、目を離したらどこに行くか不安でな」

「ああ……なるほど」



 頷く。


 流石、叔父というだけあって、嶋搗のことをよくわかっている。



「それで、来たはいいがインターホン鳴らしても反応ないから、合鍵使って中に入ったんだがなあ……もぬけの空ってやつだ」

「いないんですか?」

「ああ。あいつめ、どこにいるんだか……ここで帰って来るまで待ってやりたいところだが、生憎とこれからちょっと行かないといけないところがあるんだよなあ」



 小暮さんは頬を掻き……そして、私を見て、なにか閃いたという顔をした。



「よし。天利さんにこれを預けよう」



 いきなり手渡されたのは、一本の鍵。



「これは……?」

「臣護の部屋の鍵だ」

「……へ?」



 嶋搗の?



「あの、それで、これをどうしろと?」

「暇なら中入って臣護のこと待っててやってくれないか? それで帰ってきたら、心配させんなって、俺の代わりに文句言っといてくれ。ま、暇じゃないなら構わないんだが」

「暇は暇ですけど……いいんですか?」



 嶋搗の許可もなしにこんなこと。



「叔父である俺が許す。臣護には文句は言わせん。ついでにいろいろ探したりしてくれても構わないぞ」



 にやり、と小暮さんの悪戯っぽい笑み。


 ……なんとなく、この人の性格が分かった気がする。



「じゃ、鍵は帰る時に臣護んとこのポストにでも入れておいてくれればいいから」

「あ――ちょっ」



 止める前に。


 小暮さんは、颯爽とエレベーターに乗り込んで姿を消してしまった。



「……」



 ……まあ、いつまでこうして突っ立っていてもはじまらない。


 仕方ない。入ろう。


 嶋搗。私は悪くないわよー。


 言い訳しながら、ドアを開けて部屋の中に入った。



 電車に揺られること数時間。


 到着したのは……古都、京都。


 まあ、定番だな。


 さて……。


 予約しておいた宿に向かうか。


 ……ところで、なんだか妙に嫌な感じがするんだが……気のせいか?


思った以上にソフトな内容になった。

まあ、これはこれでアリかな。

アマリンの今後の行動が気になる。

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