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間章 カオスポーション・エクスタシー!

「く、は、はははは、ははははははははは!」



 笑いが、



「はーっ、はっはっはっはっはっはっ!」



 笑いが止まらない。



「ははははははは、あは、あははははっ! くはは! はーっ、はっはっはっ! ははははは! あはははははははは! ふはっ、はっ! はははっ! はははははははははははははは!」



 狂ったような笑いが、溢れだして、止められない。






「はははハハはははははははははハはハははははははははははははははははハハハははははハはははははははははははははハハハははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははハハははははははははははははははははははハハハははははははははははははははははははははははははははハははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははハはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははハハはははははははははははハハハはははははははははははははははははははははははははははははハははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははハハハハハハははははははははははははははははははハハハハはははははははははははははははははははははははははははハハはははははははははははははははははははははははハははははははははははははははははははははははははははははははハハハハハはハっ!」





 どうして、こんなことになってしまったのだろう。



 唐突に、皆見ががこんなことを言いだした。



「ポーション作ろうぜっ!」

「……なんだと?」



 意味不明な発言に、首を捻る。


 何を言っているんだ、こいつは。



「だから、ポーション、作ろうぜ?」

「……なんだ、そのポーションってのは」

「そりゃあれだ。RPGゲームとかでよくある、アレ」



 それは、まあ分かる。


 俺だって最近はともかく、子供のころは普通にゲームとかしていたからな。


 だが、そのポーションを作ろうとは、どういうことなのだろう。



「あれは架空のものだぞ?」

「んなことたぁ、分かってんのさ。だがな、シーマン。そこで諦める様じゃ駄目なんだぜ」



 ちっちっちっ、と。


 皆見が人差し指を振るう。



「飲むだけでHP回復。なんとも魅力的なアイテムじゃねえか。なあ、シーマンよ」

「それはそうだが」



 確かに、飲むだけで体力なんかが回復するとすれば、それはかなり使える。


 今のアースの技術力でも似たようなことは出来なくもないが、それはどちらかと言えばドーピングに近い。


 何のリスクもなく回復できるわけではないのだ。


 それが出来ると言うのだから、もしポーションなんてものがあったら最高だろう。



「だから、作ろうぜ」

「……そうか、まあ、頑張ってくれ」

「おいおい。そんな他人事みたいに言うなよ」

「……いや。他人事だろう?」

「シーマンも一緒に作るに決まってるだろ?」

「……は?」



 そうして、抵抗する暇もなく連れてこられたのは、皆見の棲んでいるアパートの一室。


 SWだし金には余裕があるだろうに、どうしてだか、皆見はこんな特別広くもない部屋を借りて住んでいた。服装は派手なくせに、こういうところは妙に地味だ。



「というわけで、早速始めるぜ!」



 部屋にいるのは、俺、皆見……そして、能村。



「なんで俺、いきなり呼び出されたんだ?」



 どうやら皆見に理由も知らされずに呼ばれたらしい。



「とりあえず、これだけ用意したぜっ!」



 そんな能村を無視して、皆見が冷蔵庫を開ける。


 中に入っていたのは……様々な食材の数々。


 一般的なものから、SWでなければ手に入らないような特殊だったり希少な食材まで揃っている。


 こいつ……いつのまにこんなの集めたんだ。


 行動力だけは感心するな。



「んでもってこれの加工方法は、これオンリーだ!」



 どん、と。


 皆見がどこからか取り出したのは……大型のミキサー。



「破壊力抜群! どんな硬いものも一瞬粉砕! 全力全壊ミキサー!」



 なんだそれ……。


 聞いただけだと単なる危険物だな。



「これからやる作業は至ってシンプル! この冷蔵庫の中にある食材を適当にこのミキサーに放り込んでジュースにする! そうしてポーションを作るんだ!」

「え、なにその闇鍋的流れ」



 能村が呆然と呟く。


 呆れているのだろう……と、俺はそう思った。しかし、それは勘違いだったらしい。



「……やばい、ちょっとわくわくしてきた」



 ――そういえば、こいつ皆見の同類だっけ……。


 つまりバカってことだな。



「おお、分かるか能村!」

「ああ。なんか、こういうのってちょっとテンションあがるよな!」



 駄目だこいつら。



「んじゃとっとと始めるか!」

「だな! まず何から入れる?」

「とりあえず身体によさげなもの入れてくか」

「そうだな」



 そのまま、二人は俺を置き去りに冷蔵庫を物色し始めた。


 ……俺、帰っていいか?



「とりあえずベースに卵入れとくか」

「いいんじゃね? とりあえず三つくらい入れとけば?」

「了解だ」



 皆見がまず、卵を三つ、ミキサーの中に入れる。そしてミキサーを起動させる。


 今のところ、まだ普通の溶き卵だな。



「次はこれだな。魚卵。なんかこのプツプツがいけそう」

「おー。ナイスチョイス」



 そこに小さなオレンジ色をした魚の卵が投入される。



「なめ茸も入れとくか」

「お前天才だな」

「それほどでもねえよ」



 ……いや。ここでなめ茸?


 それは、ちょっとまずいんじゃないか?



「あ、これも重要だな。黒ゴマ!」

「そりゃいいな!」



 パックに詰められた、既にすられた黒ゴマを能村が入れる。


 と……。



「おお、真っ黒だな!」

「黒ゴマすげー」



 ミキサーの中が黒く染まる。


 いや……すでにヤバい感じになってきたぞ?


 本気で逃げるか。


 そう思うが、何故だかもうすこし見ていたくなる。


 ……興味は、まあ……なくもなかった。



「納豆入れようぜ、納豆。絶対身体にいいし」



 納豆……!?



「いいぜ!」



 いいのか!?


 俺の驚きを置いて、皆見が納豆のをミキサーにつっこむ。



「んで、ちょっと黒色中和する為に牛乳とヨーグルト入れよう」



 それは中和じゃなく悪化だ。



「豆腐とかいるんじゃね?」

「あ、ならにがりも入れとくか」

「いいぞー」



 ミキサーの回転音が何だか不吉な音に思えて来た。



「そろそろ辛味も欲しいな……唐辛子入れるか」

「オッケー」



 唐辛子がざばざばとミキサーに放り込まれる。


 いや……入れ過ぎじゃ……?



「あと、これ。ウコンは身体にいいらしいぞ」

「粉のスポーツドリンクとかも入れて見るか」

「なら栄養ドリンクとかプロテインとかも注ぐか」

「っと、野菜まだ全然入れてないから、野菜ジュースで補っとくか」

「なんとなくマンゴーも入れよう」

「あと肉だな、肉」

「肉は加熱した方がいいんじゃないか?」

「大丈夫だろ、新鮮だし」

「そっか」



 ……あれ?


 何故だろう。


 俺の中でなにかが烈しく警鐘を鳴らしている気がする。


 というか、逃げなくちゃまずいんじゃ……。


 だが、何故だろう。


 どうしてだか、脚が動かない。


 なんでだ……!?


 なにか、異様なプレッシャーが俺の身体を押さえつけているようだった。



「そういや糖分も入れなきゃな」

「なら普通に砂糖入れるか。あとコーラとかもいいかもしれん」

「あとは……レモン、しらす、ねぎ、トマト……」

「キムチ、昆布、緑茶、黒酢、もずく……」

「これも入れとくか……」

「あと、これだな」

「こっちも――」

「っと、これを忘れるとこだった」

「それ入れるんならこっちも入れようぜ」

「ちょ、おま、それはマズくね?」

「いいって。やっちまえ」

「そういうノリは嫌いじゃない! ならオレもこれ行くぜ!」

「なっ……そう来るか」



 おい、お前ら調子のりすぎだろ!


 っていうか臭い! もうヤバいから! 既に臭いが……!


 それに外見も、あれ軽く見ても普通に吐瀉物だぞ!



 そして、完成した。


 完成……してしまった。



「これが……ポーション……?」

「絶対違うって」

「なんだ、これは……」



 目の前に用意された、三つのコップ。


 そのそれぞれに、完成品が注がれていた。


 ……形容することは、ひどく難しい。


 とりあえず一言で言うなら……いや、言わないでおこう。言ったら、なにか致命的なことになる気がする。


 それにしても……。



「ひどい臭いだな」

「……」

「……」



 なにか言えよ、作った本人二人。



「で、これ……まさか、飲むのか?」



 コップ三つ用意してあるし。


 ……出来れば、冗談であってほしい。



「そりゃ、飲むだろ……作っちまったんだし」



 皆見の表情は、青いを通り越して真っ白だ。


 ……そんな顔するくらいなら最初から作るなよ。今更言っても遅いけど。



「……だ、誰から、飲むんだ?」



 冷や汗を顔じゅうにかきながら、能村が尋ねる。



「公平に、じゃんけん、だろ……」



 皆見がぽつりと言う。



「「「……」」」



 じゃんけん……。



「作ったのは、お前ら二人だろ?」



 俺は、関係ないんじゃないか?



「なんだよシーマン。逃げんのか?」

「……別に、」

「チキンだなあ、嶋搗よぉ」



 ……この二人にどうして俺はこんな目で見られているんだろう。


 くそ。


 ここで逃げたら、負け犬みたいじゃないか。



「いいさ……このくらい、飲んでやるよ」

「それでこそシーマンだ」



 にやり、と。


 力強さを感じられない笑みを皆見が浮かべる。



「じゃあ、じゃんけん、だな」

「ああ……」



 重苦しい雰囲気。


 まるで、命懸けの戦いを始める前のようだった。



「「「……最初は、グー!」」」



 三人が同時に動く。



「「「じゃんけんポン!」」」



 そして、俺がグー。皆見がグー。能村が、チョキ。



「うぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」



 この世の終わりでも目の前にしたかのような叫び声を能村があげた。


 俺と皆見が思わずガッツポーズ。



「ま、待てよ……冗談だろ!?」

「さあ、能村」

「飲むんだ!」



 怯える能村に、俺と皆見がコップを押しつける。



「ぅ、ぁ……っ」



 それを震える指先で受け取り、能村は生唾を飲み込んだ。



「……せ、せめて、隣の部屋に行っていいか? なんか、こんなの飲むとこ、人に見られたくねえんだ」



 その懇願に、俺と皆見は首を横に振ることなんてできやしなかった。



「うぉぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」



 叫びながら、能村が隣の部屋から飛び出して、そのまま口をおさえた状態でトイレにかけこんだ。



「おぇ、っ……おぇええええ! ぐ、ぶぁ……う、ぁっ……げほっ、がっ! ぁぁ! 咽喉、咽喉がぁ! 俺の、俺の咽喉がぁっ! うぉぇえええええええええええええええ!」

「「……」」



 ゆっくりと、皆見と顔を合わせる。


 ……能村は、しばらくたってもトイレから出てはこなかった。


 とりあえず、隣の部屋を覗いてみる。


 その部屋のテーブルの上に、コップが一つ。


 その中にあった液体は……元の状態から、恐らくほんの一ミリくらいの量しか減っていない。


 ……それだけの量で、あれ、なのか……!


 ぞっとした。


 もう一度、皆見と顔を見合わせる。


 皆見の顔はひどいものだった。多分、俺も信じられないような顔をしているのだろう。



「……飲まないわけには、いかないよな?」



 もう能村が犠牲になってしまった。


 あいつ一人だけ見捨てて、というのは……あまりに後味が悪すぎる。



「ああ……シーマン。じゃんけんだ」

「…………分かった」

「「最初はグー。じゃんけん――」」



 隣の部屋から、皆見が出て来た。



「皆見……大丈夫、か?」

「……」



 ばたり、と。


 皆見が倒れる。


 そして……、




 ビクンッ、ビクンッ!




「――っ!」



 痙攣!?


 ちょっと待て! それは毒物かなにか飲んだ時の反応じゃないのか!?


 やばい。


 やばいぞ、これは……。


 本当に、俺も飲むのか?


 能村も、皆見も、既に意識はない。


 なら、俺が飲まなくても誰にもバレないんじゃ……。


 ――いや。


 もう、そんな姑息な考えは止めよう。


 コップを手に取る。


 そして……ゆっくりと口を近づけて。



「――っ!」



 嗅覚がほんの一瞬で死滅した。



「ぐ、ぁ……」



 眩暈。


 こ、これは……本当に食えるものだけで作られたのだろうか?


 こんなものが……。


 それでも、俺は逃げなかった。


 逃げるわけにはいかなかったんだ。


 行くぞ……!


 気合いを入れて、決意して、コップを口に付ける。


 途端。


 甘い……!?


 いや、苦い!?


 違う、すっぱい!


 あ、しょっぱい!


 待て、辛い!?


 違う!


 これは……!


 な、ん……だ……!?


 あ、ぁああああ……。


 それは一瞬の出来事。


 咽喉の奥が腐るような感覚、というものを生まれて初めて感じた。


 胃が一瞬で煮えたぎる。


 身体中の細胞の一つ一つが苦悶しているかのようだ。


 これは……これは……。


 ――……。


 マズい。


 マズい。マズい。マズいマズいマズいマズい!


 いや、マズいなんてものじゃない!


 これは……ぁ、ぁああああああああああ!



「は……」



 そして俺は――、





「はははハハはははははははははハはハははははははははははははははははハハハははははハはははははははははははははハハハははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははハハははははははははははははははははははハハハははははははははははははははははははははははははははハははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははハはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははハハはははははははははははハハハはははははははははははははははははははははははははははははハははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははハハハハハハははははははははははははははははははハハハハはははははははははははははははははははははははははははハハはははははははははははははははははははははははハははははははははははははははははははははははははははははははハハハハハはハっ!」





 ――壊れた。



「あ、嶋搗」

「……天利か」

「今までどうしてたのよ。ここ三日間まるで連絡がつかないし、あんたの家のインターホン鳴らしても出てこないし……ほんと、なにしてたの?」

「……寝込んでた」

「え?」

「……いや。なんでもない。もう思い出したくもないんだ。触れないでくれ。頼むから」

「え、ええ……?」


正直、ノリと勢いだけで書き上げました。なのでかなり雑に。


そしてシーマン崩壊。


……ちなみに作者は書いてる途中、実際に作った例のアレのことを思い出して吐き気がこみあげてきました。

アレがなんなのか分からない人は5月9日の活動報告を見てきてみよう!

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