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6-14

「どうだ、この舟――オケアヌスの力は」



 笑みながら、ルミニアは王宮にあったあの玉座にも負けず劣らず豪勢な椅子に腰を下ろした。


 俺達がいるのは、鉄の島――オケアヌスと言うらしい――の中心にある城、その中心部にある王の間。


 玉座に座って、脇息のところに肘をたてて、頬杖をつく。


 俺はといえば……唖然としていた。


 王馬の壁一面に埋め込まれたモニター。


 それらは、大きく一つの映像を映し出している。


 燃えあがる王宮だ。


 瓦礫の一つすら残さん、と言わんばかりに、炎が蹂躙する。



「これは……やりすぎだろう」



 冷や汗が背筋を伝った。


 やりすぎ、というのはなにもミサイルのことだけではない。


 この島自体、驚きの塊だ。


 いくらなんでも……なあ?


 こんな巨大な人口島……しかも潜水機能までついたものを、いつのまに開発していたんだ……。


 しかしルミニアは俺の言葉に、軽く鼻を鳴らす。



「ふん。やりすぎ? 馬鹿を言うな。これでも足りん」



 そう言うルミニアの視線の先、モニターの中の王宮に、変化が現れた。


 島を覆い尽す、巨大な灯が大きく揺れる。


 と――次の瞬間、炎が渦を巻くように回転を始め、島の中心へと収束していく。


 次第に、巨大な炎の塊が、そこに生まれる。


 そして、それが一度脈動下かと思うと……炎の塊は、オケアヌス目がけて、高速で打ち出された。


 瞬間で、大火炎がオケアヌスに到達――する直前。


 黒い砲撃が、炎を撃ち消した。


 モニターの一つに、オケアヌス外縁部に立つじじいの姿が映り込んだ。


 じじいの、(エウリュディケ)か……。



「ほうら、足りなかったろう?」

「……」



 王宮から、小さな何かが大量に舞い上がった。


 人。


 魔術師だ。


 王軍が、飛行魔術によってこちらに向かってきていた。



「ふん。全員が飛行魔術を使えるとは、流石と言うべきか」



 飛行魔術は、行使するのに繊細な魔力のコントロールが必要になる。


 飛行できるということは、イコール優秀な魔術師という認識で間違いない。


 ルミニアが、玉座の脇からタッチパネルを引き出した。


 それを素早く操作する。


 すると……島の四方で動きがあった。


 東西南北、それぞれの方位の表層に巨大な穴が開いて、そこから、何かが突き出す。


 それは……砲門。巨大な砲門だ。


 四つの巨大な砲口が、空の王軍へと照準を定める。


 その砲身に、紫電が散った。


 ……は?


 紫電?


 いや、ちょっとまて……まさか、あれって……。


 ルミニアが、タッチパネルを最後に一度、叩いた。


 刹那。




 四つの極大の雷光が、放たれた。




 れ、レールガン……!?


 あんな巨大な!?


 ……なんなんだ、この島は。


 普通に対国兵器じゃないのか!?


 雷光が王軍を貫く……そうして、大量の魔術師が蒸発する。


 ――なんて未来は、なかった。


 レールガンの弾道が、王軍を貫く直前に歪み、あさっての方向や、海に落ちる。


 王軍全体で、一つの巨大な魔術障壁を張ったのだ。一人一人の障壁は、空を飛びながらであるから大したことはないが、それでも千人分の力を集めた障壁ともなれば、あれだけ巨大なレールガンと言えども軌道を逸らされてしまう。


 空を飛びながら、魔術まで仕えるのかよ……!


 いくらなんでもまともな戦闘までは出来ないだろうが、それにしても飛びながら一応でも魔術を使えるというだけで、王軍に所属する魔術師達がかなりの実力であることが窺える。


 普通に、円卓賢人一歩手前、という連中の集まりと考えればいいだろう。


 すると……王軍から、数千発もの魔力弾が放たれた。


 それがオケアヌスに近づいて――霧散した。



「ふん。魔力を運用したバリアだ。オケアヌスは、機械と魔術の融合の最初の一歩なのだ。このくらいは出来て当然だ」

「……」



 バリアか……SFの世界だな。


 ははは……。


 なんだかもう……驚かなくなったな。


 なんでもありだろ、この島。


 そう思うと、自然と驚愕は薄らいでいった。



「核とか使ったらどうだ?」

「使ったら辺りが放射能で汚染されるだろうが。それは今回は使わん」



 今回は、か……。


 つまり搭載してるんだな、核。


 冗談のつもりだったのになあ。



「グングニルを撃つか」



 グングニル……かつてここまで不吉な単語を俺は聞いたことがない。


 恐らく話の流れからして、かなり強力な兵器であることは推察できた。


 地面が振動した。


 モニターを見る。


 そして……こう思った。


 やっぱりな……と。


 モニターに映し出されたのは、島の全貌。


 島の半分が、大きく割れていた。


 そしてそこから、何かが浮かび上がって来る。


 円錐状の、槍――のようなもの。


 ただ、その円錐は純粋な円錐ではない。


 円錐の表面に、大量の棘がびっしりと生えている。


 そしてその棘の一つ一つが、赤く発光して……数千もの光の弾丸が放たれた。


 レーザー……いや、もうなにも言うまい。


 紅のレーザーが、王軍に襲いかかった。それを、王軍は再び巨大な障壁を張って抵抗する。


 けれど、今度の攻撃は、完全には防ぎきれなかった。


 障壁のところどころをレーザーが貫通して、その向こうの魔術師達を堕とす。


 通ったのは、全弾中三パーセントといったところだが……それでも、王軍の魔術師の一割ほどを削った。



「もっと火力が欲しいところだな……」



 この火力に不満を抱くルミニアはおかしいと思う。


 そうこうしているうちに、王軍がオケアヌスのバリアに、三度目の巨大な障壁を張りながら突っ込んだ。


 その二つが衝撃とともに、相殺される。



「ふむ。上陸されるか……」



 さして危機感を感じさせない声で、ルミニアがそんなことを口にする。



「いいのか?」

「いいも何も、ここまで来られてしまったのだから仕方がないだろう」



 言いながら、ルミニアはタッチパネルを操作してから、玉座から立ち上がる。



「島の迎撃システムを起動させた。それに、頼りになる仲間もいる。ならば、不安などないだろう?」

「……それもそうか」



 見れば、モニターの向こうでは既に、王軍と反乱軍が戦闘を開始していた。


 中には、あいつらの姿もある。



「ゆくぞ。妾達も、妾達の役目がある」

「ああ」



 そして俺達は、王の間を出た。



 王軍がオケアヌスに上陸した。


 ふむ……ワシの相手は……、



「第一席、何故貴方がここにいる!?」



 こやつじゃのう。


 目の前で叫んでいるのは、円卓賢人第二席、デュラヒム=トゥ=ルーデルバッヒ。


 まあ、妥当なところじゃろ。



「何故、などと……決まっておろう」



 杖を捨て、自分の身体に強化魔術を施す。



「ワシは貴様らの敵ということじゃよ」

「どうして……っ!」

「理由を問う暇などあるのか? 随分と余裕なのじゃな、第二席よ」

「――っ!?」



 第二席の身体が、魔力の衝撃波によって吹き飛ばされた。




やりすぎた感がぬぐえない!

しかし自重はしない。

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