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天から授かる戦の火種  作者: 赤い秋
病棟死鬼篇
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病棟死鬼篇ー1

どうも赤い秋でございます。誰も読んでくれない虚しさが募るクリスマス。

メリィ―クリィスマスッ!

Feet.天宮翔


さて今日も現在進行形で見舞いに足を運んでいる。診察の後、入院が決定した柊の見舞いに行くにはどうしたらいいかと聞いたら医者から関係者証を渡されたのでそれを使って入ればいいのだが、いつも正門をくぐるときはびくびくしてしまう。いや、だって怖いもん。撃ち抜かれるんだよ?銃弾で。痛いに決まってる。今日はPC部の活動で遅れたから八時くらいになっているので辺りが暗いから病棟の中でも怖く感じる。お化けは信じないが前が見えにくいと何がいるかわからないから恐ろしいと思う。いや、ほんとに怖くないんだよ?それに俺が怖がっている理由はそれだけではない。

「ウウゥゥ・・・ゥァアアァァ・・・」

さっきからうなり声的なものが廊下に響いているのだ。たまに病室から廊下を覗いているが何かが居そうな気配はするのだが姿が見えない。柊さんも不安なようで先ほどからそわそわしている。何も起こっていないだろうと思いつつも柊さんを安心させようとドアに背を向けた。その直後、背後からガチャッとドアノブを捻る音が無音の病室に響いた。


Feet.浦井厳達


クッソ。最悪な事態だ。九番師団の宿舎で緊急招集かかけられた時点で嫌な予感はしていた。だが、まさか霊力式技術医療街区でトラブルが起こるとは。城邑情報局に羽織を着ながら飛び込み声を張り上げる。

「事態はどうなっている!被害状況の報告はまだかっ!?」

今まで状況把握をしていたと思われる局員が伝令で来た情報を報告する。

「七時四十五分に指定外霊力を253個確認しました!場所は中央病棟!十五分経過した現在は範囲を拡大しつつも314個まで膨れ上がっています!これからも増える可能性が高いと思われます。」

ちっ。これからも増えるのか。厄介だ。これは九番師団だけでは対応できない。霜霧のいる六番師団にも要請が必須だろう。正面のスクリーンに霊力をマーキングした地図が映されているが、ぱっと見でもかなりの数が蠢いているのがわかる。

「――っ!!8番師団の毒島師団長からの通信です!切り替えます。」

先ほどまで感知された地図を映してた大スクリーンが毒々しい髑髏マークのアイコンに切り替わり、20代後半の低音ボイスが溢れ出した。

『あーー、よろしいかね?一方的に連絡させてもらうね。現在、ワタシは霊力式技術医療街区の東にいるのだがね。ワタシの独断で現場に向かわせてもらうね。ワタシの庭で好き勝手されるのは実に腹立たしいことだからね。』

ピッいう電子音とともに通信が切断され元の画面に戻る。テレビで放送できないくらいエグい実験を平然と行っているマッドサイエンティストだが戦力の足りない今はありがたい。さて俺も動くか。

「ぼさっとするなっ!相手が正確に掴めないこの状況なら霜霧副師団長に緊急招集を一番にかけろ!あいつの『森羅万象ミミル』ならこの状況が把握できる。各師団に連絡して銃火器免許のある団員を編成して対処に当たれ!その他の団長は二の次だ!」

指示を叫びながら街区長に連絡を取り、被害状況の確認を取るが把握しきれていない様子である。なんでも患者に被害が及んでいる可能性が高いとのことで看護師や医者を派遣しているが未だ連絡がついていない者は少なくないらしい。監視カメラは何故か故障してしまっているが、このタイミングでの故障ともなれば理由は明白だ。此度の攻撃を仕掛けてきた相手の仕業に違いはないだろう。すると浦井副師団長と呼ぶ声があるので返事すると、

「霜霧副師団長が嫌だと駄々をこねているようで説得が難しいと・・・」

ああもう。あのくそゲーム中毒が。局員が言い終えるよりも早く言葉を返す。

「今すぐWi-Fiを切って、モバイル通信の妨害電波を出せっ!あのゲーム中毒者のやる気を出させるにはゲームを人質にとるしかない!」

頭をフル回転させながら指示を飛ばしていると神無が飛び込んできた。城邑情報局は九番師団管轄の部署なのだ。招集が掛からない訳がない。髪の毛がぼさぼさなところを見ると大慌てで飛んできたことが分かる。よし一応師団長クラスの人員がいれば問題はない。一旦俺たちだけで突入することにしよう。一刻も早く原因究明をして謎の霊力反応を消し去らねばならない事態だ。本隊の編成を待って突撃するのは後手に回り過ぎだ。神無も尋常な事態ではないと分かっている様子でこちらに状況を確認してくる。後で話すと伝えてから、情報局員全員に聞こえるように大声を上げる。

「一旦、俺と師団長で突入する!その後に本隊を編成して突撃させろ!」

言い終わると同時に神無の手を掴んで引っ張りながら情報局を出て霊力式技術医療街区と繋がる西門へと走る。俺も一応は銃火器免許を持っているから戦力にはなる。何故か顔が赤くなっているが、突然起こされたから怒ってでもいるのだろうか?そんなことは放っておいて状況の説明をしながら走っているとにたどり着いた。夜中だが検問員は交代制で勤務しているため常時働いている。身分証明書を見せて西門を開門してもらい、門をくぐった。凄惨な現場が目の前に広がっている・・・なんてことも覚悟していたが、何ともない見慣れた闇が広がっているだけだった。ただ、聞こえてくる音が異常だ。微かにうなり声のような人間の声や悲鳴がいくつも聞こえる。逆に目の前に広がる異常のない景色が異常に見える。神無と俺は駈け出したがその足も100メートルほど行ったくらいで途切れた。聞こえる音の中に異音が混じったのだ。殴りつけるような音だった。ガァンッと何かを追う払おうとする音が闇夜の中に響き渡る。

「生存者がいる!助けないと!」

助けに向かおうとする神無を片手で制する。止められた神無はなんで止めるのよ、と叫ぼうとするが言葉にする前に言葉を重ねる。

「周りをよく見ろ。前に何かいる。人じゃない何かだ。」

銃声と異様な状況で少し冷静さを欠いていたのを自覚したらしい。すぐに気づいておとなしく従った。正確な数は分からないが5体ほどの何かがこちらに向かって歩いてくるが足元がおぼつかないような危なっかしい歩き方だ。接近に伴ってうめき声が近づいてくるのでこいつが発生源だともすぐに理解できる。

「ううぅぅぁぁああぁぁああぁ・・・」

30メートルくらいまで近づいてきた辺りで相手の正体が分かった。死体。その一言に尽きる。そう、死体が動いて歩いているのだ。5体のうち3体の目は裏返り、白目をむいている。残る2体の目は裏返ってはいないものの白濁し、焦点が合っていない。こちら側が風下のようで腐乱臭が漂ってくる。思いっきり顔をしかめながら神無を見ると同じく顔をしかめている。というか今すぐ帰って炬燵でぬくぬくしたいと顔に書いてあるほどだ。間違いなくこいつらが霊力の原因だろうが、もしも意識があったなら殺人の罪で逮捕される可能性もある。警告と確認を兼ねて声を掛ける。

「おい、そこで止まれ。これ以上近づくと体に風穴を開けることになる。」

返事は・・・ない。聞こえていない様子で更に距離を詰めてくる。もう一度聞こう。

「もう一度問う。聞こえているか?聞こえているなら止まれ。」

「ううぅぁぁああああぁぁぅぅぁあぅう・・・」

返事はない。返ってくるのは意味を成さないうめき声ばかり。仕方ない。撃つか。五発の弾丸を撃ち放つ。俺の放った銃弾が肘、膝、眉間を撃ち抜くと1体がグラリと倒れた。やはり人間の死体だけあって、関節を撃つのは有効なようだ。この調子で攻撃していけば殲滅も軽くいけそうだ。よし、じゃんじゃん撃っていこう。

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