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天から授かる戦の火種  作者: 赤い秋
開始点ー
2/3

陰キャは辛いよ

書いていて誘われたことがないことに気づいた馬鹿でございます。

いいもん、寂しくないから。

仕事とか言って浦井行っちゃったよん。廊下で何やら継世先輩と話していた様で、控えめに言ってめっちゃ羨ましかった。いやーねー、学校一の美人とも言われる程の美人先輩と知り合いとかずるいとかいうレベルに収まりきらないほど羨ましい。あまりの羨ましさに話が聞こえてきていた間に心の中でハンカチ37枚くらいをブチブチッビリィと嚙み千切っていた。しかも抱き着かれるだと?チックショー。全校男子生徒の夢じゃないか!!ふわーーっ。

「や、やぁ翔君。さっきからすごい負のオーラが出てたけど・・・」

「ん?ああ。何でもない。」

かなり引き攣った笑顔でキラキライケメンが声をかけてくる。無論、バリッバリの陽キャだ。基本的にイケメン&陽キャ滅すべしを唱えている俺だがこいつ、星宮新ほしみやあらたはいい奴なので基本的にに除外対象だ。どこがいいかと言ってもな・・・よくわからんけど気のいいやつだ。

「そうか、それならいい。ところで今日カラオケに行こうと思っているんだが・・・一緒に行かないか?」

いえーい誘いが来たぜー。なぜ棒読みかって?そりゃあ行きたくないからー。陽キャのテンションに陰キャは付いていけなーい。無理無理無理無理。陽キャグループとか危険ドラッグやってるくらいのテンションでしゃべるたびに高笑いしてるし・・・。そして真の恐ろしさは陽キャが陰キャに絡んだ場合だ。特に遊びに誘う場合はヤバい。どうなっても陰キャには利益がないのだ。説明しよう!例えば誘いに乗ると「は?こいつ本気にしやがったwww」となったりただのかませ犬に使われたりする。かと言って断ると「陰キャ風情が断りやがったんだけど。ありえねーwww」といっていじめ対象になるのだ。ソースは俺。ちなみに全種類コンプリートだ。詰まるところ、まじで詰むのだ、終わるのだ。次回!天宮、死す!ってなるのだ。くそう・・・。なんでこんなことに・・・。

「で、行く?行かない?」

新は俺が心の中で絶望したり説明したりして打開策を探しているのを欠片も気に留めず返事を急かしてくる。別に今日予定があるって訳じゃない、だがそんな日まで陽キャ共と一緒にカラオケ行きたくない。いっつもカラオケ行っても俺が歌うのアニソンとかボカロばっかだし。間違いなく「ププッーアニソンばっかでワロタwww」って言われて馬鹿にされるのが目に見えている!ちっくしょう、こうなったらやけくそだ!覚悟を決めるっ!よし、断ろう!憎き陽キャ共め、いつでも陰キャが陽キャの言いなりになると思うなよ!


数時間後

「じゃあばいばーい!」

「・・・ばいばい」

「ばいばい言われてめっちゃキョどってるよアイツww」

「プッーワロタwww」

「アハハハハッ」

陽キャ共のばいばい(八割が煽り&笑い)を背に受けて帰路に就く。断れなかったのだ。土壇場で日よってもしかしたら煽られないかもしれないという僅かな希望に賭けてしまった俺がバカだったのだ。今日は厄日だな、厳達に目覚めドッキリ仕掛けられるし陽キャ共に絡まれた挙句に馬鹿にされるし。もう帰ったらさっさとアニメ見て夕食喰ってソシャゲして寝よう。もう疲れた。いつもは近道は路地裏が多いから使わないんだが今はどうでもいい。早急に家に帰らなければ死にそうだ。眩しい夕日に半身を焼かれながらトボトボ歩いて路地裏に入る。暗くてジメジメしている路地裏はまるで今の俺の心を代弁しているかのようだとか現実逃避しながら歩みを進めていると曲がり角まであと一歩という所で怒鳴り散らす声が狭い路地を反響して響いた。

「てめぇなめてんじゃねーぞ!このごみが!これっぽっちで満足しろだと!?」

どうでもいいがめっちゃ濁声だ。さて、どうしようか。あと一歩踏み出せば巻き込まれる気がする。一番いいのは踵を返して帰路に就くことだ。平和にいざこざに巻き込まれずに安全に早急に家に帰れる。めんどくさいことは嫌いな性格だ。だからすごくこの一歩を踏み出すのは嫌いだ。だが思い出して気になって後悔するのはもっと嫌いだ。きっとこの記憶はもっと酷い光景でも目に焼き付けない限り簡単には消えないだろう。はぁ・・・詰みじゃないの。気づかなかったら自分から絡むか・・・。はぁ、やだやだ。そして一歩を踏み出した。



踏み出した先には可愛い女子生徒と人相の悪い男が立っていた。女子生徒は12歳程で、殴られたらしく頬が赤く腫れて座り込んでいる。それと対照的に男は拳を握って仁王立ちしている。恫喝されていたらしく目が潤んでいる。男は・・・大方30代くらいだろう。身なりはお世辞にもいいとは言い難い。というかはっきり言って良くない。向こうも突然の闖入者に気づいたらしく人を殺しそうな目でこちらを睨みつける。

「おいこらそこのガキ!何見てんだよごら!さっさと行け!」

「お願いです。け、警察を読んでください!」

おいおい主張強いぜお二人さんとも。めっちゃ余裕ぶっているが内心はひやひやしている。だが俺の答えは決まっている。

「やだね。お前をぶっ飛ばしてやる。バカヤロー」

「「は???」」

一回は言って見たかった台詞だ。無論、はったりだ。俺にできるわけがない。

「いやいやいやいや、女の子いじめるのは良くないでしょ。」

「ちっ、見られちまったらしょうがねえな」

やべぇ。何がやばいって?殺気だよ殺気。後ずさり始めたがもう後の祭りだった。あっという間に10メートルほどあった距離を詰められる。そして掴みかかってきた手が俺の体に触れそうな距離まで近づいてきたその時だった。

「なめてんじゃ、あっちぃいいいいぃぃっっ!!」

絶叫と共にその手を引っ込めたのだ。なぜならおれが天武を使ったからだ。戦闘系の天武じゃないが今の季節をに使えばこうやって撃退したりすることも可能だ。

「あちゅ、熱かったよな。どう?俺の天武『冷暖稼働グッドフィール』は。」

俺かっこい―!内心では冷汗がダラダラどころかドバドバなんで嚙んじゃったけどね!『冷暖稼働グッドフィール』はただ単純に自分の体から10センチメートルくらいの距離の空間を自分の想像する快適な温度に変化させる天武だ。なぜ識別天武(ハブネーム)なのかと言えば熱を使って変化させるわけでもないフシギパワーで強制的に暖める天武なのでそのように扱われている。他の識別天武のように危険階級で上位に位置するわけでもない、殺傷能力皆無の能力なんだがな。俺の場合はかなりの冷え性なので基本的に20~30℃台を行ったり来たりしている。まあこれはこれで日常生活はすごく救われている。風邪をひくとか寝冷えとかはここ十年関わり合ったことがない。冬場の場合は冷たい手をふろの湯に入れたら熱湯のように感じることを利用し、さっきのような芸当も可能だ。ただし相手が暖かさに慣れるまでという制限付きだが。

「このくそがきがっ、調子に乗りやがって!殴り殺してやる!」

男が叫んだその直後、ドガッという衝撃がお腹と顔に走り、殴られてもいないのに吹き飛ばされる。

「っっっガァ!!!」

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっっっ!!壁にぶつかった耳を触ると液体を触る感覚がある。くそっ血が出てる、こいつの天武は念動系列かよ。相性最悪だ。まずい、このままじゃまじに殴り殺されそうだ。触れなくても天武で攻撃できるから温度感覚に訴えて退ける『冷暖稼働(グッドフィール)』が効かない。もとより俺の天武に武力などないのだ。最悪だ。女子生徒が何やら叫んでいるらしいがさっき殴られたときに耳を打ってあまりよく聞こえない。逃げないとやばい。ひしひしと襲ってくる死への生々しい恐怖に怯えながら後ずさるが殺そうとする男も歩いてくる。男は嘲るような薄ら笑いを浮かべながら拳を振りかぶり、更にもう一撃加える。殴られた部分が必死に痛覚を訴えてくる。無様に転がる俺はヒーローでも何でもない。ただの負け犬だ。俺の人生こんなのばっかかよ。

「はい。喧嘩はそこまで、喧嘩両成敗とルールに従って制裁を加える。と、行きたいところだがそこの少年は少女を守ろうとしたという点で情状酌量がある、そこの男は恫喝、暴行等々の罪状がある。よって今回制裁が下るのは男だけだ。」

つい数時間前に聞いたあの声が暗い路地裏に響く。よく通る声だった。呆れるような、事務報告を伝えているような淡々とした声だ。振り向くと厳達が立っている。新聞とかネットニュースでよく見る模様のある羽織をはためかせながら男を見据えている。模様はすぐに理解できた。防衛師団だ。なぜ厳達が着ているのかは分からないが今はどうでもいい。

「ちっ、またガキが増えやがって。お前も殴られてぇのか!」

今度は路地の壁を念動で殴りながら威嚇する。でも、そこはかとなく自信なさげだ。表情には緊張が走っている。はぁと溜息が聞こえたと思った直後、厳達は俺を庇うように男と俺の間に立ちふさがっていた。足音すら聞こえなかった。瞬間移動という言葉が頭を駆け巡る。でも相手は念動を使う。多分さっきの攻撃は手加減していたのだろう、威嚇したときは少しだが壁が欠けていた。強すぎる。厳達に警告しようと声を出そうとした瞬間、まるで心を見透かしたようなタイミングでこちらを振り返り自信満々に一言告げられる。

「負けるわけないだろう。俺はこう見えて副師団長だ。」

その言葉には不思議な安心感があった。それは男も感じ取ったらしくうっと呻いて一歩下がる。ついさっきとは全く構図が逆だ。

「では、暴行および恫喝の疑いで少々痛い目にあってもらう。」

「は、はったりだろう!はったりだ!!」

男は指をさして大声で喚いている。やっぱうるさい濁声だ。はったりを疑っている男もどこかで異常だと気づいているのだろう。顔面は蒼白で、汗の量も異常だ。次の瞬間、厳達が走り出したと思えば、既に男の懐に潜り込んでいた。刹那、ドッという打撃音と共に拳が男の腹にめり込んだ。

「どげぇあっっ!」

男の体が軽く30センチ宙に浮く。間髪いれず前のめりになった男の顎に膝蹴りを入れ、更に体が浮き上がる。とどめとばかりに両頬に一発ずつビンタをぶち込むと綺麗な放物線を描いて体が宙を舞った。いや・・・最後の二発は間違いなくオーバーキルでしょ・・・。思わず同情してしまうほどの殴られ様だった。なんの受け身も取れずに叩きつけられた男はまるでぼろ雑巾のようになって倒れている。かわいそうに。

「天武を使用した犯罪は通常の刑罰の2倍から3倍の重さとも言われている。ただの暴行でも軽く4,5年は刑務所の中だ。これくらいで済んで良かったと思っておくのがいい。次に同じような犯罪を犯せば此度の厳重注意の分も合わせてで10年から15年は出てこられんだろう。次はない。」

こっっっわ!初めて知ったわ。天武を使った犯罪は罪が重いとは聞いていたけどここまで重かったのか・・・。泣いていた女学生は予想外の出来事に驚き過ぎて涙が止まっている。そりゃあビビるよな。突然防衛師団の副師団長が出てきてフルボッコにしたら。声かけとくか。

「おーい大丈夫?そこの・・・えー・・・お名前は?」

「・・・あ。はい、柊美夜子と言います。」

やっぱ困惑しているな。さて名前は分かったがこれからどうしようと頭を抱えていると厳達が声をかけてきた

「お前がなんでこんなところにいるのかは知らんが二人とも殴られたのだから脳震盪を起こしているかもしれない。一旦『護国守戦城邑』に隣接している『霊力式技術医療街区』まで送って医療手続きを出しておこう。」

・・・お前心読めるんじゃない?なんでここまでベストアンサー用意してくるのさ。まあこれで一件落着だからいいんだけどね。

「厳達、ありがとな。色んな意味で。」

「・・・はぁ、また仕事が増えた。」

・・・すまんね。仕事増やして。厳達曰く、霊力式技術医療街区は徒歩で20分ほどの距離だと言う。いや、それくらい近くで犯罪するって勇者かなにかですか?と念動男に聞きたい。ついでに言うと念動男は放置するらしい。なんでも、現行犯であれば厳重注意で事後報告を済ませられるから仕事の処理が遥かに楽ちんらしい。無茶苦茶さぼりたがりだな。おい。しばらく歩くと霊力式技術医療街区に着いた。いっつも検問が設置されている護国守戦城邑とは違って誰もいない分警備がルーズなのだろうと予想していると、関係者以外のものが単独で入ろうとすると全身を自動警備システムに撃ち抜かれるらしい。こっっわ。俺は撃ち抜かれないのかと尋ねると関係者が先導している場合は大丈夫らしい。ただ半径10メートルからは絶対に離れるなと念押しに言われた。あと、関係のない扉には近づくなと言われた。最悪の場合は処刑される可能性もあるらしい。もう何なの此処・・・生きてる心地しねぇよぉ。だが技術は確かだから安心しろとのことだ。まあ要は関係ないとこに行かなければよいのだ。それに気を付ければいいだろう。今日は疲れた。さっさと家に帰れないかな。

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