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天から授かる戦の火種  作者: 赤い秋
開始点ー
1/3

実に平和な時間

どうも赤い秋でございます。

名前に由来は青い春(青春)の真逆にいる人間でしたのでこうなりました。

学業にうつつを抜かしておりますので少々投稿が不定期になる可能性がございますのでお許し下され。


天武という言葉が人々の持つ異能力のことを意味づけるようになったのは約四十年前だと言われている。ライトノベルなどで描かれる異能力による日々は誰しもが人生に一度は願った夢だった。だが、それも過去の話となった。2240年である現在、四十歳以下すべての人間が天武と呼ばれる異能力を有する世界になった。科学技術も新たなる分野である天武技術分野たるものも樹立し、世界は三十年前とは全く違う様子にガラリと変わっていた。

「起きてください、ご主人様…ねぇ…」

カーテンの閉め切られた部屋に麗しい美少女の声が響く。

「ねぇ…ご主人様ってば…」

そして未だ机の上で眠り続ける少年の耳元に顔を近づけると、

「起きて下さい、ご主人様。朝ですよ」

と、わざと耳に吐息を吹きかけながら揺すり起こす。振動と吐息で目が覚めた少年に向かって、ニヤリと笑いながら告げる。

「美少女にご主人様と呼ばれて起こされるのは気分いいよな。翔クンよ。」

少し赤面にかけていた少年の顔が瞬時に真顔になる。彼の目前で先程まで美少女だったものは一瞬で姿を変え、今や黒髪の少年の姿になっていた。

「授業中に寝てた奴が悪いんだ。」

と得意げに黒髪が笑いながら言う。真顔になっていた少年は得意げな様子をみて叫んだ。

「てめぇぇふっざけんなあぁぁぁぁぁぁぁ」

これはそんな世界で紡がれる話である。


生徒がそれぞれの用事を抱えて忙しく動き回り青春を謳歌する高校時代の放課後に浦井厳達はちらほら人の見える教室で精神的ショックを受け落ち込むクラスメイトをなだめていた。もちろん冬なので暖房のきいた場所に居たいという私欲もある。ちなみに言うと友人はまたの名を天宮翔とも言う。

「ちっくしょう…ふざけんなよ…」

「寝てた奴が悪いってるだろ。天武は使ったが傷つける効果はないんだから。」

「騙された俺の心が痛いんだよ馬鹿。」

正直すまないとは思うが俺からは自業自得だろうという感想しか出てこない。

不貞腐れてながら責めてくる天宮を落ち着かせようとするが、

「寛大になれよ、寛大に。ほら、太平洋の如く穏やかに。」

「うるせえ。おれは琵琶湖の一割で十分だ。」

「狭いな。」

正直、あんまり効果は出なさそうだ。おそらくツッコミのせいだろう。そもそも俺は、気分の落ち込んだやつを元気づけるのは苦手だ。まあ今回は俺に責任あるから慰めるけれども。でもめんどくさがりながらも慰めてる俺ってやさしい!と、自画自賛していると天宮から声がかかる。

「でも気をつけろよ。お前の天武はただでさえ印象がよくないんだから。」

「騙されたのに心配してくれる天宮やさしいな。」

そう、俺の天武は印象が悪い。これは生まれてからしばらくしてすぐに分かったことだ。なんせ見方を変えれば現代社会に生きる人間の天敵と言える天武だからだ。天敵を嫌う習性は生物として当たり前のことだと言える。まあそれが原因で幼いころから結構いじめられはしたがいじめる理由は十二分に理解できるから今は納得している。本人の納得するいじめってなんだろうか、と不思議がると恐らく考え込んでしまうからこの疑問はポーンと頭の中からほうり出す。ばーいばーいきーんっと。さてと、今日は水曜日なので・・・あー、巡回か。

「授業も終わったし俺はもう帰る。仕事あるから。」

「お、そっか。じゃあ部長さんには行かないって伝えとくわ。」

おお、ありがたい。行きませんって面と向かって言うの気まずいんだよなあ。こういう羞恥心とかは日本人特有の感情らしいけど。ん?・・・いや・・・ちょっと待て。これだけは言っておかなければ。

「お前、理由とかでおかしなこと言うんじゃないぞ。前に水商売でいないとかレンタル彼女のバイトがあるとか嘘吹き込んだだろう。前に直接聞かれたんだからな。」

「ちっ、俺のささやかな仕返しがばれちまうとはな・・・やるじゃあねぇか。」

悪びれる様子を欠片も見せずかっこつけた発言をする天宮を睨みつけながら俺は一言告げる。

「明日お前の顔で愛の告白しまっくてやるから覚悟しろ。」

人類の考え出した最高かつ最後の交渉手段、それは脅迫である。よって相手と交渉する場合、この至高の手段を用いるほか有効な手立てはないと判断した俺は、まさに最終兵器を持って魔王に迫らんとする主人公キャラの如き気迫で脅す。今の俺は正義だ。

「すみませんでしたっ!!」

「次はないからな。」

ふははははは、勝利とは虚しいものだな・・・と一人で勝利の喜びに浸る。こんな時、俺の天武はすごく便利だ。あれ?ワードだけ聞いたら俺ってマジにごみじゃない。ああそうか、これだから勝利は虚しいっていうのか。

「実に虚しい。」

「なんか勝手に脅して虚しくなった!?って歩くのはやっ!」

なぜか天宮が騒いでいるが今は無視するとしよう、とくだらないことを考えながら廊下を歩いていたせいで背後から走り寄る人影に気づかなかった。

「わーーっ。継世お姉さまのお通りだぁーー!」

叫び声と共に背後から飛びつく不審者を即座に振り払い間合いを取ると相手を見据え臨戦態勢に入る。時間にして数秒足らずの早業である。

「なぁーーっ!また避けられた!」

振り払われて悔しがる黒髪の女子生徒は継世神無と言い、一つ上の先輩であり一応俺の仕事上は上司に当たる人間だ。だが、何度見てもこれが上司なのかと思うと溜息をつかざるを得ない。この人は毎回会う際に部下に向かって抱き着いてくる悪癖がある。照れるし恥ずかしいので正直勘弁してもらいたいが本人は抱き着かないと爆発するだのなんだの妄言を吐き散らかしていて止めようにも止められない。なんといってもこの人の最大の武器は美貌だ。そう、美少女なのである。先ほど俺が天宮にやった疑似美少女ではなくガチのやつなのである。以前本気でやめてもらおうとしたらそんな彼女がウソ泣きをしたため逆に悪者扱いされ継世ファン|(自称)の男どもに追い掛け回された。

「やめてくれっていってるだろう。何回言えば理解できるんだ。」

「ふっふーん。理解してるけど実行してないだけなのだよ。」

くそっ。反省もなにもないからそこら辺のガキどもよりたちが悪い。だがいい機会だ。全力でねじ伏せて反省させるのも手だな。そうだそれがいい。俺は男女平等の旗を掲げている人間だ、覚悟するがいい。

「姉さん…。手あたり次第に部下とか知人とかに抱き着かないでくださいよ。まったく。」

神無を挟んだ廊下の奥から呆れ声が飛んでくる。心の中で宣戦布告していたのを中断されたがそのセリフにはすごく賛成する。と、一人で賛同しながら声のした方向を見ると同級生の継世巖が歩いてきていた。

「姉さんは一応師団長なんですよ。責任を持った行動をしてください。」

「い、一応って言わないでよ!」

「抱き着くのをやめたら取りますよ一応。」

「ぬぐううぅぅぅぅ」

そうだそうだもっと言ってやれ。思春期の男の子は手をつなぐだけで意識する年頃なんだ。巖は名字からわかる通り神無の実の弟であるが、抱き着く悪癖は持っていないので個人的には血縁関係を疑っている。口には出さない、なぜなら。

「(姉さんは僕だけのものなんですから)」

このメンヘラシスコンの前でそんなことを言えば間違いなく処される。恐らく神無の悪癖を止めるのは上司かつ家族だからだけでなく嫉妬とか私情が混ざっているからだろう。一部の噂では継世ファンクラブ(非公式)の創始者が巖だとも言われている。真実か否かはともかくあり得ないことではない。前に誰かに神無が抱き着いている時に一瞬俺が見た殺気は凄まじかった。親の仇とでも言わんばかりの睨み様だった。記憶を回想を回想していると神無が手を挙げる。

「ねぇねぇ、3人揃ってるから一緒に行かない?行き先は同じなんだし。」

言われてみればそうだな。ここで別れてもどうせ同じ職場だから会うんだ。一緒に行く方が効率的だろう。

「じゃあ行く。」

「一緒に行きます。」

恐らく考えは全く違うだろうが声がそろう。少々時間は取ったがやっと仕事に行けそうだ。それじゃあ行くとしますか。レッツゴー。

読み方

継世神無ーつぐよかんな

浦井厳達ーうらいげんたつ

継世巖 ーつぐよみね

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