リアンを仲間に誘う
今日はここまで
ギルドの建物に、一人の少女が入ってくる。
典型的な魔法使いの恰好をしているが、背丈が低い。見ない顔だ。成人したてで、冒険者になりにきた新米か?
「冒険者に、なりたいんですが」
やっぱり、そうだったらしい。
「……18歳です」
18歳? とてもそうは見えない。
魔法使いの少女は、受付の机に懐中時計を置いた。
「こ、これは! 王都の魔法学院を卒業した証の……」
王都の魔法学院。この国で一番の魔法学院であり、国中の優秀な魔法使いの卵が集まる場所。そこを卒業した魔法使いがなぜ冒険者になるのだろう?
「――王都の魔法学院を卒業した魔法使いはBランクからスタートすることができます。それでいいですね?」
Bランク! 魔法使いが優遇されていることは知っているが、王都の魔法学院卒がそこまでだとは知らなかった。
Bランクなら俺とパーティーを組むことができる。確か魔法使いならランクが二つ離れていてもパーティーを組めたはずなので、ソニアが加わっても問題ない。
まさに今の俺のパーティーが求める人材だ。
だがそれはほかの冒険者も思っているに違いない。魔法使いは貴重だ。優秀な魔法使いなら、なおさらだ。
受付嬢との話が終わり、リアンが踵を返すと、大勢の冒険者が彼女のもとへとなだれ込んだ。俺も席を立って彼女のもとへと向かう。
彼女の言で、Cランク冒険者が元居た場所へと帰っていく。Bランク冒険者も、彼女にバッサリと断られていった。
「はあ……。この場には、Aランクの冒険者はいないんですか」
見た限り、今この場にいるAランク冒険者は俺だけだ。
「ここにいる」
そう言って、俺はリアンの前に立った。
リアンと目が合う。彼女は俺に比べて頭一つ分小さいので、必然的に見下ろす形になる。肩のあたりで切りそろえられた赤色の髪に、亜麻色の勝気な瞳。顔立ちは幼いが、これでも俺と同い年らしい。
「……あなたは?」
彼女は疑わしいものを見る目で俺を見ていた。
「俺はロジェ、Aランク冒険者だ。今は俺を含めて二人しかパーティーメンバーがいないから、リアンが仲間になってくれると助かる」
「二人……もう一人は、どんな冒険者ですか?」
「Sランク冒険者のソニアだ。名前を聞いたことくらいあるよな?」
リアンの眉間にしわが寄る。何言ってんだこいつ、とでも言いたげな顔だ。
彼女の気持ちはわかる。俺だって未だに信じがたい。
「Sランク冒険者の、ソニア? あの? 嘘は言ってませんよね?」
「本当だよ、信じられないと思うけど……」
明らかにリアンは俺の言葉を信じていない。目を細めて俺をにらんでいる。
「受付嬢さん。彼の言っていることは本当ですか?」
急に話を振られた受付嬢は言葉を詰まらせながらも答えた。
「え、ええ、本当ですよ。ロジェさんはAランク冒険者でソニアさんとパーティーを組むことになっています。ギルド直属の冒険者のソニアさんが急に辞めるっていうんですからギルドはかなり大変だったんですよ~」
「そう、ですか」
リアンは受付嬢からの話を聞いても半信半疑の表情だ。
「なぜソニアさんはあなたとパーティーを組むことになったのですか? 彼女は個人で活動していたはずですが」
「あーそれは……」
言いよどむ。どこから説明したものか。
「それはですね! ロジェさんがゼダール大森林で新迷宮を発見したからですよ」
受付嬢からの横やりが入る。
リアンは目を真ん丸に大きく見開いた。
「……え?」
「リアンさんは聞いてませんか? 一か月前に新迷宮を発見されたこと。主要な都市にはもう話は広まっていると思いますけど」
「聞いています。聞いていますが……あなたがそうなのですか?」
こちらを見るリアンの目には、ソニアが仲間だと言ったとき以上の驚きが見られた。
「……そうだ。俺が見つけた」
俺が新迷宮を見つけたと言って他人が驚くのも久しぶりだな。今ではもうバーデル中に俺のことは知れ渡ってしまっている。
何度見ても慣れない。そういう目で見られることがむずがゆく感じる。
「魔法使いのリアンがパーティーに入ってくれたら、パーティーのバランスが良くなる。王都の魔法学院卒なら、実力も申し分ないだろう。頼む、仲間になってくれ」
恥ずかしさを押し隠すように、リアンに仲間になってくれないかと頼み込む。
彼女は数秒悩んだのち、口を開いた。
「あなたが嘘を言っていないことはわかりました。でも、簡単には決められません。一度、一緒に迷宮に潜ってみて、それで決めてもいいですか?」
「ああ、それでいい」
即答する。俺も、彼女の能力がどの程度なのか知りたい。王都の魔法学院卒というだけで優秀な魔法使いであることは保証されているが、彼女は冒険者に成りたてだ。戦闘で役に立つかどうかはわからない。
「では明日の朝、私はここにギルドカードをとりに来るのでその後に」
「わかった」
魔法使いのリアンと、迷宮探索をすることになった。




