魔法使いの少女リアン
二人目のヒロイン登場!
冒険者ギルドの建物の前に、一人の少女が立っていた。
右手に身長ほどもある大きな杖を抱え、小さな体には不釣り合いなほどゆったりとしたローブを羽織っている。典型的な魔法使いの恰好だが、装備の大きさが身長に見合っていない。
「ここが、冒険者ギルド……」
誰に言うでもなく小さな声でそうつぶやいた少女は、緊張した面持ちで建物の中に入っていった。
彼女が建物の中に入るや否や、中にいた冒険者たちがざわつきだす。初めて見る顔、そのうえ珍しい魔法使いの姿に皆驚いている。
冒険者たちが向ける好奇の視線にたじろぎながらも、魔法使いの少女は受付に向けてその歩を進めていった。
「冒険者に、なりたいんですが」
確かな意志を持って、はっきりと少女は受付嬢に向かって言葉を発した。
「えーと……あなたは何歳なのかな?」
受付嬢は困惑していた。冒険者は成人である15歳を超えてからなるのが推奨されている。少女は、成人には見えないくらい身長が低く、幼く見えた。
「……18歳です」
不機嫌さをにじませながら、少女は答えた。
「18歳!?」
受付嬢は心底驚いた顔をしている。
少女は一層不機嫌な顔になった。かっとなった少女は早口で受付嬢にまくしたてる。
「これが証拠です! まさか知らないとは言いませんよね!」
そう言って少女は、ポケットから懐中時計を取り出して机に置いた。
懐中時計の蓋の外側には、杖と魔導書をあしらった王都の魔法学院の紋章が刻まれている。
「こ、これは! 王都の魔法学院を卒業した証の……」
精巧な魔道具である懐中時計は、貴族や大商人くらいしか所有していないくらい貴重なものだ。栄えある王都の魔法学院を卒業した生徒は、証として魔法学院の紋章が刻まれた懐中時計が与えられる。
「し、失礼しました。魔法学院を卒業されているのなら、18歳で間違いないですね」
魔法学院は15歳から18歳までの3年間学ぶことになっている。
「王都の魔法学院を卒業した魔法使いは、Bランクからスタートすることができます。それでいいですか?」
懐中時計を再びポケットに戻した少女がこくんとうなずく。
魔法使いの冒険者は貴重であるがゆえに、優遇されている。魔法使いであれば無条件でDランク、魔法学院卒であればCランク、王都の魔法学院卒であればBランクになることができる。
一般の冒険者は最下級のEランクから始めることになるので、いきなりBランクになった彼女はだいぶ優遇されていると言える。それも当然だ。王都の魔法学院は優秀な貴族の子弟ばかりが集うところで、卒業生の多くが宮廷魔導士になる。わざわざ危険な冒険者になる人はほとんどいない。
「ではギルドカードを発行するので、名前を窺ってもよろしいですか」
「リアン、です」
「リアンさんですね。ギルドカードは明日の今頃には出来上がると思うので、明日になったらまた来てください」
「わかりました」
少女が踵を返した瞬間、一斉に彼女の元へ冒険者たちが殺到した。
「俺のパーティーに入ってくれ!」
「いや俺のパーティーだ!」
「頼む!」
冒険者たちが懸命に自分たちのパーティーに入ってくれと懇願する。王都の魔法学院卒の魔法使いともなれば、どんな冒険者でも欲しがるだろう。
四方八方から寄せられる声にリアンがたじろぐ。
「ひ、一人ずつお願いします。あと、最低でもBランクで。それ以下のランクの人たちとはパーティーを組みません」
リアンの言葉に、多くの冒険者の表情がかげる。
「そ、そんな~」
「し、Cランクでもいいだろ!?」
「ダメです。Bランクより下の方は、お引き取りください」
彼女の有無を言わせない口調に、Cランク冒険者はとぼとぼと元居た場所へ帰っていった。
残ったのは最初に集まった人数の3分の1ほどだ。Bランクの彼女とパーティーを組むことができないD、Eランクはそもそも集まっておらず、離れたのは最も数の多いCランク冒険者だ。中堅であるCランク冒険者は、冒険者の中で最も数が多い。
残った冒険者も、一人、一人と彼女に断られていく。
「はあ……。この場には、Aランクの冒険者はいないんですか」
冒険者の応対に疲れたリアンは、ため息をついてそう言った。残った冒険者もほとんどがBランクだった。一人を除いて。
「ここにいるよ」
そういって彼女の前に立ったのは、ロジェだった。




