一か月後
長らくお待たせしましたが、ついに第二章が始まります!
今後もよろしくお願いします。
えー今回の話の途中に唐突に魔剣という単語出てきますが、剣の形をした魔道具という意味ですので気にしないでください。作者が登場させる機会を失い、けれども便利な単語だったので今登場させました。
アラン達のパーティが魔物に襲われているところを救ったあのときから、一か月が経った。
あの失態でアラン達のパーティーはBランクに降格することになり、今は再び浅層で探索して力をつけている。Aランクとはいえ個人である俺も、浅層で探索している。
今は、迷宮の第16層にいる。Bランクの魔物とCランクの魔物が、同じくらいの頻度で出現する階層だ。
近くに、Cランクの魔物の魔力を感じる。魔物の種類は、オーガだ。
先に気づいている有利を生かし、こちらが先に仕掛ける。まだこちらに気づいていないオーガに素早く近づく。
振りかぶった剣を勢いよく振り下ろす。
先手をとった俺の斬撃は、オーガが掲げた左腕に防がれてしまった。筋肉の層に勢いを殺されて、両断には至らない。が、かなり深くまで食い込んでいる。
急いで剣を引き抜き、オーガの反撃を膝を曲げて回避する。
オーガは怒り心頭だ。食らった傷の深さが予想外だったのだろう。動きに精彩がない。
膝を伸ばす勢いを加えて、オーガの胸に剣を突き刺す。心臓に至らないところで止まるが、さらに力を込めて押し込むと、心臓を貫く手ごたえを感じられた。
「ガアアァァアア!」
最後のオーガの反撃を剣から手を放して躱すと、オーガの目から光が失われていき、死に絶えた。
カランカラン!と落下した剣と迷宮の床がぶつかって反響する音が聞こえてくる。オーガの体は魔力に戻って消え失せ、胸に突き刺さっていた剣と、魔力の結晶である魔石だけがその場に残されている。
剣とオーガの魔石を拾う。剣の刀身には、複雑怪奇な魔法陣が事細かに刻み込まれている。一般的な魔剣とは比べ物にならないくらい精緻で美しく、今の人類の技術では到底真似できない代物だ。
「……こんなもんか」
なるべく、新迷宮で拾ったこの剣の魔法陣に刻まれた魔法は使わないようにしている。BランクやCランクの魔物に使うには強力すぎる。乱発していると、自身の技術が落ちてしまいそうだ。
現状でさえAランクにふさわしくない技量なんだから、落ちるなんて論外だ。
もっと、もっと強くならなければならない。でないと、仲間になるはずのソニアと並び立つなんて夢のまた夢だ。
一か月前は、Cランクのオーガすら一人では何とか倒せる程度だった。
だが今では、オーガなら問題なく倒せるぐらい強くなっている。
アラン達のパーティーにいたころは、戦闘に関しては足手まといだったのでろくに正面から戦わせてもらえなかった。だから、剣の腕はあまり上達しなかった。
一人で迷宮探索している今だと、自分が強くなっているのを確かに感じられる。実感はある。
でも。
「まだ、足りない」
Sランク冒険者のソニアに比べたら、まだまだだ。
ついに、ソニアの後任の高ランク冒険者が見つかったのだ。一週間後には、フリーになったソニアとパーティーを組むことになっている。
彼女に失望されないようにしないと。
「パーティーか……」
ソニアとパーティを組んでもたった二人だ。パーティーを組むなら最低でももう一人、できれば二人ほしい。
ソニアも俺も前衛だから、後方で俺たちをサポートしてくれる冒険者、特に魔法使いを仲間にしたい。
でも、パーティーメンバーはそう簡単に見つかるものではない。俺たちとパーティーを組めるAランク冒険者は数が少ない。バーデルにいる冒険者のなかでAランクは十数人くらいだったはず。そのいずれもが、既にパーティーを組んでいる。
その中でもさらに、魔法使いはほとんどいない。それほど優秀な魔法使いは、みんな宮廷魔法使いや貴族お抱えの魔法使いになっている。
「どこかに個人で魔法使いの高ランク冒険者はいないかなあ……」
高望み過ぎる願望を吐き出しながら、代わり映えのない迷宮の通路を進んでいった。




