ロジェを追放したパーティーの窮地を救う⑷
連続更新7話目。
「……まずいぞ」
このままではさらに複数の魔物とアラン達が鉢合わせることになってしまう。
魔物が進む道の先には、既に魔物と戦っているアラン達がいる。しかも近づいているのは2体だ。いくら何でもアラン達がAランクの魔物を同時に4体相手にすれば勝ち目はない。
このままではアラン達が死んでしまう。
俺を理不尽にパーティーから追放したやつらがひどい目に遭ってせいせいする、と思う一方で助けなければと思う気持ちもある。
アラン達は嫌な奴だが、死んでいいとまでは思わない。
こうなるような状況を作ったアラン達の自業自得かもしれない。だが<魔力索敵>のことに関して、アラン達とうまく意思疎通ができなかった俺にも責任の一端はあるかもしれない。
単身深層に潜るのは命の危険がある。しかも今回は、Aランクの魔物が4体もいるところに向かうのだ。
そもそも俺が一人で言って救えるのか。彼らを救うために自分の命を危険にさらすのか。
答えは決まっている。
「お前らが死んだら、見返す相手がいなくなるだろうが……!」
転移魔法陣につながる道を、全力で駆け抜ける。
迷宮の最深層まで攻略して、Sランク冒険者になることで俺を追放したアラン達を見返す。それが、冒険者を続ける理由だ。アラン達が死んだら、俺が冒険者を続ける意味がなくなる。
それに、例え嫌な奴であっても人を見殺しにするのは気分が悪い。俺が原因の一端を担っているかもしれないとなればなおさらだ。ここで逃げたら、俺は一生後悔するだろう。
(間に合ってくれよ……!)
幸い、アラン達がいるところは21層の転移魔法陣からそれほど離れていない。全速力で走れば、数分ほどでたどり着く。それまでに彼らが死んでいないことを祈って、ただ走る。彼らなら、それくらい持ちこたえられるだろうと信じて。
転移魔法陣のところにたどり着く。大急ぎで魔法陣の上に乗って魔力を流し込む。光に包み込まれて、まぶしさに目を閉じる。目を開けると、俺は21層の転移魔法陣の上にいた。
深層に来た感慨にふける暇もなく。
アラン達のいるところに全速力で向かう。最短ルートをとっているので、必然的に魔物との遭遇は避けられない。
曲がった先に魔物が一体いる。なんの魔物かはわからないが、慎重に探る時間などない。すぐにけりをつける。
角を曲がって見えたのは、Aランクのガーゴイルだった。
人型の体に、爬虫類の顔。背中には大きな翼が生えている。体は石のような材質で非常に硬く、斬撃に耐性がある。
こちらに気づいたガーゴイルが翼を広げる。
速い!
地面すれすれを滑空するガーゴイルは一瞬で距離を詰めてくる。
「くっ」
体を大きく動かして突進を避ける。剣の魔法が間に合わない。速すぎて対応ができない。
振り返り、ガーゴイルに対して正面を向く。ようやく剣に刻まれた魔法陣に魔力が流されて魔法が発動する。
ガーゴイルは再び突進してきた。刃物より鋭利な爪が突き出される。
攻撃を避けながら剣を振るう。剣はガーゴイルの腕とぶつかり、ガギイィイン!と鈍い音を立てて弾かれた。
「斬れないのかよ!」
姿勢が悪く、力が十分に込められていなかった。当たったのがガーゴイルの体の中でも特に硬い腕の部分だった。それだけ条件が重なれば、Aランクの中でも硬いほうのガーゴイルの体は切り裂けないのか。
「ギィイ……」
だがよく見れば、剣と接触したガーゴイルの左腕には傷がつけられている。全くの無傷でもない。
こいつに時間はかけられない。
次で、決める。
両手で剣を持ち、剣先をガーゴイルに向けるように構える。
またもや一直線に突進してくるガーゴイルの腕を避けながら、剣を胸に突き立てる。
相手の突進の勢いを利用した突きは、剣先が背中を抜け出て深々とガーゴイルの胸に突き刺さった。心臓をやられたガーゴイルは、絶命し魔力になって空中に拡散する。
「はあ、はあ」
休んでいる暇はない。もちろん魔石なんて拾っていられない。
アラン達の魔力反応は消えていない。まだ間に合う!
迷宮の通路を駆け抜ける。もう少し、あと少しだ。次の角を曲がれば。
次の瞬間俺の目に映ったのは、ミスリルゴーレムに追い詰められているシルファの姿だった。




