ギルドマスターに呼び出される⑴
連続更新2話目。
無事に迷宮都市バーデルへと戻ってきた俺は、宿屋に直行して自分の部屋のベッドに飛び込んだ。ギルドマスターへの報告はソニアがつつがなく行ってくれるとのことなので、その好意に甘えた形だ。
まだ日も沈んでいなかったが、意識はすぐになくなって熟睡してしまった。目が覚めると、次の日の朝だった。やはり、野宿と宿屋のベッドで寝るのとでは睡眠の質が全く違う。完全回復とはいかないが、だいぶ疲れは取れた。
ゼダール大森林でのソニアとの会話を思い出す。
あのときは彼女の勢いに押されてうなずいてしまったが、冷静になって考えてみるとあの判断は正しかったのだろうか。
本当に俺が彼女のように強くなれるのか。俺は迷宮を攻略したいと思っているのか。
際限なく疑問がわき出てくる。
ピシン!と顔を押さえるように両手で頬を叩く。
もう決めたことだ。いちいち蒸し返すのはやめよう。俺が冒険者を続けたいと思っているのは嘘じゃない。本心からそう思っている。なら、それでいい。
部屋に備え付けられた大鏡を見る。大鏡には、俺……Bランク冒険者ロジェの姿が映っていた。
黒髪黒目に、18歳という年齢の割にはやや幼い顔立ち。起きたばかりだから髪はぼさぼさだし、顔はだらしないが、ちゃんとすれば結構整っている方だと思う。……俺がそう思っているだけかもしれないが。
そういえば、ソニアは何歳なのだろうか。見た限り、そう年は違わないような気がするが彼女の方が年上かな。大人びた雰囲気にSランク冒険者という肩書を持っていて年下ってことはないだろう。
朝食を食べて、身だしなみを整えて、装備の確認をして……もろもろの準備を終えると、俺は冒険者ギルドに向かった。
ギルドの建物の中に入ると、中にいる冒険者たちの多くがこちらに視線を向けた。小さな声で何かを言い合っている。
「あいつが、あの……!」
「新迷宮を発見した、ロジェっていう冒険者か」
「Bランクらしいぞ」
「このまえパーティーを追放されたとか」
近くにいる冒険者からはそのような言葉が聞こえてくる。ギルドに初めて報告したのがもう二週間以上前だ。バーデルの冒険者たちにはすっかり俺のことが広まってしまったらしい。
周囲の視線にさらされて居心地の悪い中を進んでいく。
「実はあいつ、あの元Sランク冒険者のギルドマスターの隠し子らしいぜ」
「なるほどだから…!」
「違う違う。あいつはSランク冒険者のレイフその人なんだよ。姿を変える魔道具で変装しているのさ。あのソニアと親しく話している姿を見た人がいたんだぜ」
「おお……!」
……とんでもないうわさが出回っていなかったか?
全く的外れで、事実無根だ。うわさは曲解されて伝わるものとは言うものの、もはや原型と全く関連がない。今聞こえてきたのは氷山の一角だろう。冒険者の間で俺がどういう風に言われているのか想像するだけで胃が痛くなる。
(冒険者の想像力はたくましいな……)
あきらめの境地でそんな感想を抱いていたら、いつの間にか受付のところに着いていた。
「Bランク冒険者のロジェだ。新迷宮発見の報はソニアからギルドマスターに伝わっているのか?」
1人でゼダール大森林に向かい、新迷宮を見つけてギルドに帰ってきたときに真っ先に話した受付嬢と同じ女性に話しかける。
「はい、ロジェさん。そのことはソニアさんがしっかり報告していましたよ。ギルドマスターがロジェさんに言いたいことがあるそうです。今お時間大丈夫ですか?」
「ああ。特に予定はない」
「よかったです。でしたら、ギルドマスターを呼んでくるので応接室で待っていてくれますか?」
「わかった」と返事をすると、受付嬢は急いで奥へと向かっていった。
二階の応接室に一人で向かう。
やわらかい素材のソファに深く沈みこむように座って待っていると、あまり時間がたたないうちにギルドマスターが部屋に入ってきた。




