ソニアの提案⑴
昨日は更新できず、申し訳ありませんでした。明日も更新はお休みする予定です。その代わり、日曜日にたくさん更新します。
「結局宝箱は見つからなかったな」
新迷宮の地上部分に戻ってきたソニアは、そうぼやいた。
あのあと迷宮の第4層まで潜ったが、宝箱は一つも見つけることはできなかったのだ。
「そう簡単には見つからないよね」
低層にある宝箱の数は少ない上に、第4層までのすべての通路を網羅したわけでもない。普通はこんなものだろう。前回がラッキーすぎたのだ。
「食料にはまだ少し余裕があるが、どんなトラブルが起こるかわからない。宝箱を見つけられなかったのは残念だが、もう帰るとするか」
「ああ。さっさと帰って宿屋のベッドでぐっすり眠りたいよ」
「そうだな」
帰路も特に何事もなく。
ほとんどの魔物は<魔力索敵>で遭遇する前に迂回して、避けきれなかったわずかな魔物もソニアがレイピアで一突きして瞬殺してしまう。
長い間ゼダール大森林を探索していることによる慣れと、Sランクのソニアがついている安心感から俺は、危険なところにいるにもかかわらず少し気が抜けていた。だから、ソニアから投げられた質問は不意打ちだった。
「迷宮を見つける直前にパーティーを追い出されたと聞いたのだが。どういう経緯でそうなったか聞いてもいいか?」
今までソニアは<魔力索敵>のこと以外でこちらのプライベートに関する質問はしてこなかった。予想外の質問に、俺の体が無意識にびくっと反応してしまう。
「別にいいけど……なんでそんなことを?」
ソニアは他人のことには無関心であるように見える。なぜ俺がパーティーから追放されたのかを彼女が知りたい理由がわからない。
「少し気になっていただけだ。今までなかなか切り出しにくくてな」
なんとなく怪しいが、話さない理由もない。噂はギルドに広まっているだろうし、彼女が調べようと思ったらいくらでも調べられるだろう。最悪、アラン達に直接聞けばいい。
「大したことじゃないよ。役立たずだからパーティーから追放されただけだ」
「役立たず? それはあり得ないだろう。その<魔力索敵>があれば迷宮探索にも大いに役立つはずだ」
彼女はきっぱりと言い切った。お前は役立たずじゃないと。
久しぶりに聞いた言葉だ。ずっと聞きたかった言葉だ。
彼女は何とも思っていないのだろうが、口に出して言われると救われたような気分になる。
「パーティーメンバーはそのことを知らなかった。言っても信じてもらえなかったんだ」
今思えば、もっと早くに打ち明けていれば結果は違ったものになっていたからもしれない。感情に任せてではなく、<魔力索敵>のことを冷静に伝えて証拠を見せていればよかったのだろう。
「……そうか。そういえばそうだな。いきなり言われても確かに信じがたいだろう」
「そういえば?」
言い方が気になる。そういえばとはどういうことだ?
「ああこれはこちらの話……いや、君に聞くばかりではフェアじゃないな。私も少し個人的な話をしよう」
そう言ってソニアは、さらりととんでもないことを続けて言った。
「知っているとは思うが、一年ほど前私はSランクパーティーに所属していた。このパーティーはある理由で解散してしまったが、パーティメンバーの中にはロジェ、君と同じような能力を持つ冒険者がいた」
「な!?」
初耳だ。俺以外にも遠くの魔力を感知できる能力を持った人がいたのか。
「君が知らない通り、このことはパーティーの重大な秘密だった。当時私たちも君のことは知らなかったから、彼しか持っていないと思っていた私たちは隠し通していた」
彼女が所属していたパーティーには男の冒険者が二人いる。槍使いのグエンと魔法剣士のレイフ。どちらかが俺と同じ能力を持っているのか。
「だから驚いたよ。君に<魔力索敵>の範囲を聞いたとき、君は1キロメートルぐらいと答えていたはずだ。私は自分の耳を疑った。彼でさえ100メートル弱が限界だ。それをはるかに上回る索敵範囲は到底受け入れられるものじゃなかった」
そう、なのか。
俺と同質の能力を持っているとのことだが、その実力には大きく差があるらしい。だが、人づてに話を聞いただけではあまり実感がわかない。初めて知った情報をいくつも与えられて、頭の中には複雑な感情が入り乱れてうまく処理できない。
「私の話はこんなところだ。もう一つだけ、質問してもいいかな?」
いまだソニアの言葉に混乱しているさなか、彼女はさらに質問する許可を求めてきた。
首肯すると、彼女はこちらが本命だとばかりに大きく息を吸って、その言葉を口にした。
「君は、今後どうするつもりなんだ? 冒険者をやめるのか? それとも……続けるのか?」
それは、いまだ自分の中でも明確な答えが出ていない問いだった




