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冒険者パーティーを追放される

「なあロジェ、パーティーから出て行ってくれないか」


 唐突だった。パーティーリーダーであるアランから告げられた言葉は、にわかには信じられなかった。


 俺のいないときに話し合っていたのだろうか。ほかのパーティーメンバーであるタンクのベンディと、魔法使いのシルファも示し合わせたようにうなずいている。


 今日もいつものように迷宮探索をして、いつものように魔物を狩って冒険者ギルドに帰ってきたところだ。このパーティを結成して、もう2年にもなる。俺たちのパーティはAランク到達寸前で、一流冒険者の仲間入りをするところなのに。


 なのに、なぜ。


「なんでだ? 今まで上手くやってきただろう!? 俺たちはもうすぐAランク冒険者パーティーになるのに」


「そう、そうだよ。私たちのパ―ティーはもうすぐAランクになる。Aランクになったら、迷宮の『深層』に踏み入ることができるようになる。端的に言って……『役立たず』なのさ、君は」


「…………ッ!!」


 二の句が継げない。アランの言っていることは間違っていない。俺個人の戦力はCランク、あってもせいぜいBの最底辺程度だろう。Aランク以上のパーティーしか入ることを許されない深層では足手まといになるかもしれない。


 でも、本当は俺だって……口にしかけた言葉を飲み込む。どうせ言っても信じてもらえないだろう。頭がおかしい奴呼ばわりされるのが関の山だ。


 仲間たちは俺を軽蔑した目で見ている。


「自分がパーティーの役に立ってると勘違いしてたの? 思い上がりも甚だしいわ。雑用と偵察くらいしかできない雑魚にいつまでも居座られても迷惑なのよね。」


「弱い奴は、このパーティーには要らん」


 シルファとベンディにも追い打ちをかけられる。


 ああ、わかっていたさ。俺が役立たずだとみられていることなんて。だから、みんながやりたがらない雑用だって率先してやった!


 暴言を吐かれるのは今回が初めてではない。ぞんざいに扱われていてなお、不満を口にせずパーティーに貢献し続けたのはひとえにこのパーティーへの恩があるからだ。


 冒険者になりたてのDランクからBランクにまでなれたのはみんなのおかげだ。だから、自分から出ていくことはしなかった。いままでずっと我慢してきた。


 でも、もう我慢の限界だ。一回くらいは言い返してやらないと気が済まない。


「戦闘に関してはパーティーのお荷物になっていることは認める! だけど、俺は役立たずなんかじゃない!! 魔物の魔力を感じ取って、パーティーに負担がかかりすぎないように進路を調整していたんだ!」


 言ってやった。


 でも、みんなの反応は、


「はあ、何言ってんの?」


「ロジェ、少し冷静になった方がいいんじゃないかな?」


「つまらん嘘はつく奴じゃないと思っていたが、失望したぞ」


案の定、俺の言葉は信じてくれないようだった。俺を見る目の軽蔑の色が、さらに濃くなっている。


 もういい。もう何を言っても無駄だろう。


 そっちがその気なら、俺も無理してこのパーティに居続ける理由はない。


「わかった。出ていくよ。俺が持ってる分の共有財産は全部お前らにやるよ。それでいいだろ?」


「ああ。それで問題ない」


「当然でしょ。ま、せいぜい頑張ってねー」


「……ふん」


「…………」


 やりきれない思いを抱えながら、無言でギルドの建物から出る。


 そうして俺は冒険者パーティーを追放された。




 


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