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精霊の夢 -IF STORY-  作者: ミチ
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第2部 太陽へと向かう一人の鳥人

 鳥が瑚珀の家に辿り着くと、違和感を覚えた。


 不思議と安心感が湧いてくる。


 窓から部屋の様子をうかがうと、一人の男がこちらを見ていた。


「俺のもう一つの能力は安心させること。リ・スレッジメント。お前はもう大丈夫だ」


 鳥は即座に燃え尽きることで、攻撃をかわした。


 あれは危ないと直感的に感じた。鳥は即座に風子の元へと戻っていった。


 * * * * * * * * * * * * * *


 風子が突然息を切らしながら膝をついた。何があったのだろう。


「どうした?」

「いや・・・なんでもない。今日はここでお別れ。また手紙の返事、聞かせてね」


「お、おう」


 何か大事に至らなければ良いが。取り敢えず今日はばっちりコミュニケーションがとれたな。


 家に着き、真っ直ぐ自分の部屋へ。そしてリルと適当に話して俺は寝た。


 * * * * * * * * * * * * * *


 あれでは瑚珀が危ない。風子はそう感じていた。


 瑚珀と別れてから、すぐ学校へ戻った。そして岩谷と松山を呼んだ。小学校が同じだったため、瑚珀と同じように顔馴染みで、且つ精霊を持つ者として関わることもあった。


「どうした?」

「呼ぶなんて珍しいね」


 風子は瑚珀が兄に乗っ取られていることを伝えた。能力等を伝えると2人もどうしようか考え始めた。


「俺のエイがまず動けないように空中に毒針を撒く。殺しはしないタイプのものだ。そこに松山が攻め込むのがいいだろう。風子は完全に接近して食べないと能力が発揮できないから、合図を出す。そしたら毒針を回収するから鳥を飛ばしてくれ」


 岩谷がそう提案すると2人も頷いた。


 そういえば瑚珀は精霊の存在を知っているのか、さっきの鳥が見えたことが気にかかったが、今は気にしないことにした。


 作戦は夜に決行された。


 * * * * * * * * * * * * * *


 夜、3人は瑚珀の家の前に来ていた。


 まずエイが空中に毒針を撒く。その瞬間、作戦の対象である瑚珀の兄が窓を開けた。


「安心しなってー。何もしないからー」


 そう言う瑚珀の兄に松山のリヴァイアサンが襲い掛かる。大きさは家ほどになるが物体を透過して人間に攻撃できるため、潰してしまいそうなほどの勢いだ。


 リヴァイアサンが瑚珀の兄にぶつかる瞬間、剣が攻撃を防いだ。


「俺には精霊がいくつも憑いてる。やめといた方が良いぜ。でも瑚珀も愛されてるんだなあ。俺には絶望、安心、感情を操れる能力がある。そんな俺に立ち向かえるのは兄貴くらいかなぁ」

「瑚珀にかけた呪いを解いて!あれじゃああなたが死んでしまう!」


「人は自由。それが故に何者にも邪魔されないべきだ」


 瑚珀の兄は構えることもしなかった。その場に居た者は安心感を覚えた。なんとかなる、と。


 ただ1人、風子を除いて。


「瑚珀は私が守る!」


 安心感によって解除されたエイの能力、それを見極めて風子は鳥を飛ばした。


「やれやれ、絶望の方が必要か」


 直後、ディスホープアーによって風子には“絶対に瑚珀の兄を救えない”という感覚が芽生えた。鳥が消えていく。


「私は・・・瑚珀を守る・・・何者にも・・・邪魔されない・・・」







「その意気や良し!!!」








 空気を打ち破った声が、風子や他の人間を驚かせた。


「私はイカロス。風子君の勇気、確かに受け取った。絶望が待っているとしても、私達は行かねばならぬ!」


 風子の横に新たな精霊が現れた。頭は鳥で、固そうな翼に屈強な人型の身体。その双眸は確かに瑚珀の兄をとらえて逃がさなかった。


「面倒なのが発現したか。絶望でも安心でもダメならこれだ。感情を操る!エキサイトアーサー!」


 リ・スレッジメントが穏やかなハープを弾く精霊だったのに対して、エキサイトアーサーは甲冑に身を包んだ、剣を構える精霊だ。


 エキサイトアーサーはイカロスに肉薄して剣を振るう。


「無駄無駄。刃等通すような身体では無いわ」


 イカロスは剣を弾く。そしてエキサイトアーサーの腹に拳を入れた。エキサイトアーサーが吹き飛ぶ。


「ッツ!だが、これで風子の感情は入り乱れる!エキサイトアーサーは斬った対象を感情を昂らせる能力!」


 風子は頭を不安感と安心感と絶望感が入り乱れて頭を抱えた。2人が駆け寄る。とても頭では処理できない感情に、鳥が飛び出した。


 鳥はイカロスの翼となって、瑚珀の兄へと突っ込む。勢いはエキサイトアーサーが弱めたものの、イカロスの突撃を食らって、瑚珀の兄は部屋の反対側まで飛んで行った。一時的に能力が解除される。


 岩谷は即座にエイを放った。そしてエイの毒で瑚珀の兄の感覚を消した。


「俺達にかけられていた能力が無くなったってことは、瑚珀の呪いも消えたってことだよな!?」

「グッ・・・。こんなことになるとは。スカイボン。忌まわしい・・・。」


「兄貴!?」


 瑚珀が飛び出してきた。流石に物音が激しすぎた。瑚珀は兄貴に駆け寄る。


 3人ともイカロスに乗って部屋の窓から入る。その異常さに瑚珀は驚いた。


「何だその生き物!?何で風子や皆がここにいるんだ!?」


* * * * * * * * * * * * * *


 事の次第を聞いた。どうやら色々あったらしい。兄貴のリ・スレッジメントによって知らぬ間に安心させられて、それで過ごしていたらしい。それを風子のイカロスが打ち破ってくれたというわけだ。


 皆には精霊の存在を知っていることに驚かれた。そういや言ってなかった。というか、松山にも憑いていたのか。


「ありがとう風子。兄貴はなんとかしないとって思ってたんだ」

「良いの。瑚珀に何かあったから。嫌だったの」


「ああ。これで兄貴の心を書き換えられる」


 俺はリルの能力を使う。兄貴の心を変形させ、精霊達を消滅させた。


 今の兄貴から絶望は消えている。これで兄貴が自殺することは無くなるだろう。


「これで完了だ。」


 思いがけない形で俺の目標が1個、達成された。

割と初期から考えていた設定のうちのお蔵入りオンパレードでした。

では。

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