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DNA研究で成り上がり  作者: 雨雲
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第1話 「そう思っていた時期が僕にもありました」

 ぼんやりと、薄れていた意識がはっきりしてきた。暖かく心地よい感覚が全身を取り巻く。

 例えるなら温かい温水プールにつかっているような感覚だろうか・・・。その温かさに身をゆだねていると、いきなり大きな手が俺を抱き上げすくい上げた。


なっなんだなんだ!


 訳も分からずにすくい上げられ目を開けると、そこには若い茶髪の女性が映っていた。目元を赤く腫らしながらも表情は微笑んでいる。もしかして、助かったのか?

 

「―*・**・**」


女性は俺を見つめて、何か言葉を喋ってはいるがうまく聞き取れない。外国の言葉なのかな、ヒヤリングしても全く分からない。


 というか、この人の体がすごくでかい。俺の身長の倍以上はある。そう言えばっさっき俺をすくい上げた腕も大きかったような・・・。


「あ、ああー」


 あ、あれ?


 声を発そうとするが、上手くろれつが回らずに赤ん坊みたいな声しか出せない。もしかして、脊髄でもやられて、全身が麻痺でもしているのだろうか。そう思ってゾッとしたが、手足はなんとか動かせた。


 さきほど俺をすくい上げた手の主を探そうと辺りを見渡す。しかし、首がうまく回らない。うまく喋れなかったことといい、何かの後遺症だろうか・・・。


 ようやく視界に入ったもう一人の人物は若い男だった。髪は金髪で、整った顔立ちをしている。口元をきゅっと結びながら、こらえた表情をしていた。しかし俺を見ると彼も、先ほどの女性と同様に涙や鼻水を垂らしながら微笑んだ。


 よく分からないことばかりでなんとも言えないが、この2人からは好意は感じられる。なんかすごくでかくて威圧感はあるけど。しかし、このまま意識のある植物人間ライフかぁー。

まぁ、生き延びただけ儲けものだな

そう考えてから数ヶ月


 ――そんなこと思っていた時期が俺にもありました。

 

 どうやら、俺はに赤ちゃんとして生まれ変わったらしい。しかも、魔法なども存在する”異世界”に。


 異世界だと分かったのは俺が熱を出したときだった。頭がぼうっとして、苦しかった。体の節々も痛く、コレはまずいと思っていた。

 すると、母はとある人物を連れてきた。透き通るような青い髪を揺らし、黒い布を身に纏っている。修道士みたいな格好をした女性。


「&%$$&@・・・」


 そして彼女が目を閉じ念仏のような単語をぶつぶつとつぶやき始め、俺の頭に手をかざした。まさかの、神頼みかよ・・・

と、内心恨んでいたら彼女の手元がぼんやりと光り出した。

 

―――ッ!

 頭に手を当てられたまましばらくすると、体の痛みが引き熱も徐々に下がっていくのを感じた。非科学的な現象に、精神年齢22歳の俺も驚きを隠せなかった。


昔友人に借りたライトノベルに今の状況のようなことが書かれていたのを覚えている。これは、魔法だ。

 事故に遭い死んでしまった主人公は、ファンタジーな異世界に転生して成り上がりあんなことやこんなことをする。おおざっぱに説明するとこんな感じだ。


 生前はこの非現実的な内容に、ばかばかしいと思っていた反面このような展開に憧れている自分もいた。しかし、本当に自分が当事者になるとは思わなかった。


 半年ほど経つと、この世界の言葉も少しずつだが、分かるようになってきた。ただただ、言語を聞き続けているだけなのに内容が分かるようになるのってすごいね。

 こうしてようやく、家族の名前が分かるようになった。この家のことも。


 ソフィア=アンダーソン

 コレが、俺の母の名前だ。茶髪で髪を後ろ側で結んでいる。

顔は、物見事に左右対称の整った顔立ちの美人だった。いや、美少女って言っても通じるかもしれない。

性格は基本明るく元気な人だが、ちょっとしたことで落ち込んでしまう。ソフィアは、森で盗賊に襲われたところを父に助けられたらしい。そのときの姿に一目惚れ。即刻アタックした結果、実は両想いだったことが発覚。驚きのスピード婚を実現したそうだ。

 ちなみに夕方にわざとらしく落ち込んだところを、父が慰めていちゃいちゃするのがテンプレであると最近分かった。


 オスカー=アンダーソン

 コレが、父の名前。派手に光り輝く金髪が印象的な彼は、歴戦の戦士のごとくからだが引き締まっている。着替えているところを偶然見たときは、ギリシャの彫刻みたいな筋肉をしていた。

ソフィアの話によると名の知れた戦士長をしていたが今は引退したらしい。まだ若いのに、なんで辞めたんだ?

いや、若いからこそ何か思ったんだろう。


 ちなみに俺は『レオナルド=アンダーソン』と名付けられた。ソフィア達は俺のことを”レオ”と愛称を付けて呼んでいた。

 この名前だと知ったとき、世紀の発明家『レオナルド・ダ・ヴィンチ』と同じ名前になったことですごく気に入った。


 そして、1年経つと体も成長して歩いて動き回れるようになった。いやぁ、歩く足があることは素晴らしいね!


 家の中を探索することでこの家は、少なからず裕福であることが分かった。

 異世界なんだから剣はないのかとあちらこちら探し回ったが、木刀しか見つからなかった。おそらく危ないから隠してあるのだろう。

 家はある程度大きく2階建ての一軒家でリビングの他に個室が3つある。ひとつは寝室。もう一つは食料庫、そして残りの一部屋は本が置いてある空き部屋だ。


 俺は、しばらくこの本のある部屋にしばらく通うことにした。まずはこの世界がどのような世界なのか知ることが必要だ。

 文字はまだ理解できないが、とりあえず1段目にある本を地面に広げて読んでみる。

・・・うん、なるほど。全く分からん。


 とりあえず呼んでいけば分かるかなぁーと文字に目を通していたら、通りかかったソフィアに見つかった。


「あら・・・レオ。コレは一体」


 ソフィアは、本を広げた俺の惨状を見てわなわなと震えていた。どうしよう、本を読んでる赤ん坊は変なのかな。


「レオ、スゴいわ!本に興味があるの?」


 ソフィアは鼻息を荒くしながら隣に座り込み、俺を膝の上にのせて色々な文字の読み方や意味を教えてくれた。所々、国の名前などの固有名詞などが含まれていたけれども、1人で理解するよりも断然早く言葉を理解することができた。


 そしてまた3年後――

 言葉を話し、自由自在に歩き回れるようになり本も読めるようになった俺は、とうとう気になっていた本へと手を伸ばした。

 『”魔法”入門書』

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